そんな歳三の命を奪ったのは、たった一発の銃弾だった。
「孤立した弁天台場を救出に向かう! 動けるものは俺に続け!」
そう叫び、飛び出していった歳三は、かつての「鬼副長」そのものだった。
「やはり、あの男の中にはまだ情熱が残っていたか」
蝦夷共和国の閣僚たちの中には歳三を快く思わないものも、当然いた。
だが、このときの歳三の姿は、そんな彼らの胸を打つ何かが有った。
誰かがぽつりと
「土方殿に、この先も生きよ、というのは酷な話なのか……」
と、こぼした。
皆、思うことは一緒だ。あれだけの人物、むざむざと死なせるわけにはいかない。
彼は、良さそうだと理解するとさっさと洋装を取り入れ、フランス式の戦術を、瞬く間に消化吸収してみせた。その理解力と行動力に、どれだけ助けられたか知れない。
そんな歳三が死に場所を求めていることも、皆は良く知っている。何やら小さな荷物を故郷の日野へ届けるように言われた小姓が、こっそりと出発したのも、知っている。
「陸軍奉行並はもう帰ってこない、そんな気がするな……」
と、老人が呟けば、
「縁起でもないことを言わないでください! 土方さんは絶対に帰ってきます。だってここには、新選組がまだいます!」
と、若手が食ってかかる。
そんな五稜郭に、土方歳三戦士の報が入った時、人々は不思議な心地になっていた。
「ああ、ついに逝ってしまわれたか……」
と思う反面、
「やっと逝けたんですね……」
とも思うからだ。
あっという間に落馬し、函館新選組の面々が駆けつけた時、既に歳三の息は絶えていた。
しかし、その顔はひどく穏やかだった。
「きっと、何時までも何処までも一緒に、と、約束した、沖田さんや近藤さんが、そこまで迎えに来てるんだろうな……」
隊士の誰かがぽつん、と呟いた。
【第参話・完】