『壬生浪士組』……後に新選組と名前を変えるこの集団、今は『会津藩御預』という身分であって、会津藩の藩士になったわけではない。歳三はそこに拘りを覚えるのだが、元々が武士の家である総司や新八、左之助たちにはその拘りがわからないらしい。
若い沖田など、平然と
「別にそんなのどうでもいいでしょう。武士の生まれって言ったって、わたしは貧乏な沖田家を継ぐ気はないし、永倉さんも原田さんも脱藩浪人。藤堂さんはどこぞの殿様の御落胤って話ですけど、それこそ家には戻れない。みんな、家なんてあってないようなものです。それにここでは、身分より大事なものが有りますよ」
と言ってのける。
「身分より大事、とはなんだ?」
「いやだな、トシさん。ボケちゃって……。剣術の腕前でしょう!」
ああ、そうか、と歳三が苦笑する。
「確かに、農家の出だからといって土方さんを平隊士に降格させ、武家の出だからといって左之さんを副長に上げる、これはおかしいな」
「おいおい、斎藤、何大真面目な顔で失礼なことを言ってくれるんだ。俺はこれでも、藩校へ通って、奉公もしてたんだぜ?」
「うっわ怪しい……」
「ひでぇ!」
「よし、原田さん。論語の素読をきかせてください。わたしも幼いころ、習いましたから」
「な、なんだと、平助! お前最近、生意気だぞ!」
そんな仲間の軽口を聞いているうちに、歳三の気分はいくらか軽くなるのだが、『身分』への拘りは、歳三の心の奥底でずっとくすぶり続けていた。