赤い髪に赤い髪の少年フェルディナンドがこの国にたどり着いたのは、三日前のこと。
一番値段の安い宿に部屋をとり、三日かけて国をくまなく歩き回り、気に入ったので一ヶ月ほど滞在することを決めた。
「うーん、平和な国だなー。異常に科学技術が発達してるのがアンバランスと言えばアンバランスか」
軍本部の屋根から中央政治執行部の屋根まで軽々と飛び移ったフェルは、適当な窓から建物に侵入し、「旅人課」へと進んだ。
何かあればここへ来るように、と国境の門番が言っていたのだ。
カウンターらしきところに、実に良くできた女性のアンドロイドが一体いて、愛想笑いを浮かべている。
「三日前に入国されたフェルディナンド・ランカスター様ですね。ご用件をどうぞ」
「この国に一月ほど滞在したいッス」
「では、お仕事をしていただくことになりますが、よろしいでしょうか」
「おう。任せろ」
ではこちらへどうぞ、と、アンドロイドはふわりと宙に浮き、微笑を浮かべてフェルを案内した。
「私が、職業のご案内を致します」
今度出てきたのは、男のアンドロイドだ。やはり、愛想笑いを浮かべて15センチほど宙に浮いている。
「我が国では、診断により、皆様の適職を決めております」
「は?」
男のアンドロイドは、柔らかい笑みを消すことなく懐から紙を出した。
「フェルディナンド様の血液は、我が国の分類法で行くと、第8種類パターンζに当たりますので、緑化整備課配属になります」
「な、なんだって!?」
その血液型も聞いたこともなければ、血液型で仕事が分類されるなど、もっと聞いたことがない。
「第8種パターンの方は、闘いや力仕事を好みます。その中でもζパターンの方は有能な軍人、しかも最前線に出て効果をあげるタイプです。しかし、防御が甘く、突進する傾向にあるので、防御に優れたパートナーを傍に置く必要がありますね」
当たっている。
フェルは、本国で軍属だ。しかも、エリート中のエリートである。そしてやはり、防御が最大の苦手で、防御専門と言っても良いパートナーがいる。
「お、おっさん! だったらそーゆーところに配属しろよ! なんだよリョクカなんとかって!」
「このパターンの方は、困ったことに荒くれ者が多い。そのような方にわざわざ武器を与えるわけには参りません。なので、我が国では精神面の成長を願って、彼らが最も苦手とする、植物を愛で育み、公園の整備に努める緑化整備課に入っていただくのです」
「もしもし、もしもーし!」
フェルは、役所を飛び出すなりモバイルを取り出した。
『おお、フェル!』
「ギル、俺もう国に帰りたい!」
『え?』
「こんな国、いやだーっ! 公園の整備なんてできるかーっ!」
『しょうがないなぁ。じゃあ、次の国の地図を送るから……』
「まだ放浪すんのかよ!」
『フェルの成長が見られないからもう少し、と、ゼルキン閣下が言って……』
「糞ゼルキンめ! 帰ったら模擬戦闘に引っ張り出してボコボコにしてやる!」
『フェル、今の一言でマイナス5点……当分帰ってこれそうにないな』
「ひでぇ!」
『そのモバイルに、次の国のデータを送るよ。国へ着いたら連絡よろしく』
ギルの背後で、帝国軍出動要請のブザーが鳴っているのが聞こえ、慌しく通信が途絶えた。
いつもなら、あのブザーで戦闘に出るのは自分なのに、自分は国から遠く離れた変な国に居る。
なるほど戦闘大好きな自分にもってこいの、「罰則」だ。
「くそーっ、とっとと放浪してとっとと国へ戻ってやらぁ!」
よく晴れた空に、フェルの雄叫びが轟いた。
【終わり】