:新選組で5つのお題:

その4:血


 最近、沖田総司が血を見ない日はない。

「隊内の粛清でしょ、不逞浪士と斬り合いでしょ、あ、あと、稽古の時にうっかり……洗っても洗っても、血の臭いがとれない気がして」

「最初の二つはかまわねぇが、最後のは頂けねぇよ」

 文机に向かって多摩へ送る書状を書いていた土方が、筆を置いてくるりと沖田へ向き直った。

 沖田はといえば、浴衣一枚で首に手拭をかけた姿、ちょこんと正座して勝手に茶を飲んでいる。

「あ、トシさんも飲みますか?」

「……淹れてくれ」

「はーい」

 幼いころから試衛館で下働きをしてきた沖田は、実はお茶を淹れたり掃除をしたり、そういったことに長けている。

 必要とあらば、台所で料理もしてみせる。これがまた、美味なのだ。

 はい、と無邪気に渡された茶は、土方の好みどおりだ。

「で、血の臭いがとれねぇって?」

「そう。手とか、首とか頭から、ぷんぷん漂ってるんじゃないかって気がして」

「ちゃんと清めてんだろ?」

「もちろん。いや、それ以前に、そうそう返り血浴びたりしないけど……でも、血の臭いが纏わりついてるんです」

 どうしてだろう、と、首を傾げる沖田に、土方は不思議な苛立ちを感じた。

 どうしても、こうしても、ない。

「お前が、血を吐くからだろう!」

 ああ、言ってしまった。土方は自分の口から飛び出した言葉に、自分で驚いた。

 総司が自分から言うまで、黙っていようと思っていたからだ。

 もちろん、そんなことを悟られるようなことはしないが。

 

 沖田は沖田で、笑顔が音を立てて凍りついていた。

「俺が知らねぇとでも思ったか!」

「お、思った……」

「馬鹿にすんじゃねぇ!」

 沖田からいつも漂う、血の気配。

 巡察があろうがなかろうが、人を斬ろうが斬らなかろうが、漂っている。

 おかしい、と思って監察方を私的に動かして、調べさせた。

「餓鬼のころから知ってんだ。見てりゃ、わかるさ……」

「トシさん……」

「総司。今更お前に江戸に帰れとは言わねぇ。けどな、ちゃんと医者へ行って療養しろ」

 お前を、先に死なせるわけにはいかねぇ……。

 

 このとき、沖田の目にはなぜか土方が血塗れに見えた。

 血反吐を吐き、血の涙を流す、土方。

 そこへ、新たにばしゃばしゃと、血が浴びせられる。

「ああ、トシさんは、わたしの分まで、血を浴びてくれる覚悟なんですね」

「あ?」

「……わかりました。療養に励みますね。あ、おかわりいりますか?」

「お、おお。頼む……」


 あと何回、こうして総司と茶が飲めるのか。

 土方はそればかり、考えていた。