心おだやかに暮らす。

 これが超能力を持っている彼らには、ひときわ難しいことである。

 アチャラのようにテレパシーを備えていると、意識して能力を封じていないと聞きたくもない人の思考が聞けてしまうし、ラーガのように感情が昂ぶれば能力も高じるタイプは、常に平常心でいることを心がけねばならない。

 それに彼らはみな、程度の差はあるが、自然の声を聞くことが出来る。

 風の声、木の声、大地の声、水の声、火の声。

 そんなもの、聞けてよいことなど、まずない。

 アチャラもラーガも、悲しそうに言う。

「地球が悲鳴をあげているのは本当だよ。地球自身が持ってる治癒力じゃ、もう、治せないんだ」

「だから、地球の治癒の手助けがしたいって思ったの」

「地球を守るんだ、なんていってるけど、ホントは、さ……」

「ホントは、地球の悲鳴をもう聞きたくないから。だから……」

 わかっているよ、と、ブラフマンは二人の超能力者の頭を撫でた。

 まだ十代の二人の心には、『自然の声』は重過ぎる。


 だからブラフマンは、自分が近くに居るときは彼らを結界で包んでやる。

 自然の声や他人の思考、そういったものを、できるだけ排除するためだ。

 それだけで、アチャラたちは、普通に暮らすことが出来る。

 それに、万が一超能力が暴発しても、全て結界の内側だけの出来事、近隣住民に迷惑はかからない。

「あ、ブラフマン、今何時?」

「ん、6時少し前、だよ」

「大変! 6時半にマネージャーさんが来るんだった!」

「ああ、アチャラのお仕事、再開かい?」

「うん、事務所の社長さんの説得に負けたみたい」

「そりゃそうだよね。アチャラ、華のある美少年だから勿体無い」

「それに。超能力者だとわかった上で使ってくれるんだもん、有り難い話よね」


 それは。

 アチャラの所属している事務所の社長――ブラフマンの旧友だ――彼自身が能力者だから。

 そして。

 能力者でありながら、能力を使って金儲けを企む男、でもある。

「心配だ。わたしも、ついていこう」