「ああ、超能力で人殺しはよくないよ」
 コーンロウにサングラス、フライジャケットにカーゴパンツ、かなり筋肉質な長身の男が姿をあらわした。
「殺したって死なないのよ、こいつは。ブラフマン、叱ってよ!」
「うむ、アチャラ、近所迷惑はいけないよ。反省したかな?」
 大きな水の球のなかでバタバタもがくアチャラに、ブラフマンが聞く。
「反省したようだ。解放してやってくれないか?」
 頼む、と頭を下げられては仕方がない。
「わかったわよ!」
 水を引き上げさせると、たちまち濡れ鼠のアチャラが床に転がった。

 「姫」
「ん?」
「姫は水の遠隔操作は出来るのかな?」
「できるよー」
 一つ頷いたブラフマンは、せっせとブレイクダンスの練習をしているアチャラに視線を向けた。ちなみにアチャラの周りには結界が張り巡らされ、その中で流れている大音量の音楽は外には聞こえてこないし、テレパシー遮断効果もあるので隣の塾にも迷惑にはならない。優れものだ。
「アチャラが言っていた枯渇した地区に水を供給、というやつだけどね。できるよ、多分」
「どうするの?」
「アチャラが水源の場所を君に伝える。君はその水を地上に引っ張り出せばいいんだよ」
 でも重労働には違いないから、慎重にね、とブラフマンがラーガの頭を優しくなでる。
 ごつごつした手は、喧嘩でも武術でもなく、ラーガやアチャラたち、このダンススクールに住み着いてしまった子たちを養うためにあらゆる仕事をしているから。
「姫、ここを追い出されることのないよう、わたしとオーナーが努力する。君は心おだやかに暮らしてくれたらいいよ」