先日書き上げた小説の、もうひとつ考えていたラストです。

いつかどこかで使えそうな気がするのでメモ!

あー……ちょっと残酷というか、グロいですので、苦手な方は……。



 新選組の屯所に連行されて半日。

 八木家の倉から、隊士に抱えられて出てきた有馬さんは、ボロボロの酷い有り様だった。

 血まみれの顔も腫れ上がり、有馬さんだと認識できたのは、

「言っただろう、どんな責め苦にも耐えて見せる、とな!」

と、俺に笑って見せたから。

「土方さん、どんな酷い拷問をしたらこんなになるんですか!」 

 冷徹な鬼は無表情のまま俺を縛った紐の端を握った。

「教えてやる、こい」

 あっさり担がれて倉に押し込まれ、宙に吊られた俺は、みっともなくもガタガタと震えていた。

「さあ、お前ら、次は何をする。どこに火を放つ? 誰を殺す予定だ? 洗いざらい、吐け!」

「い、言うものか!」 

 土方さんの指示を待つまでもなく唸りをあげる木刀や竹刀が次々と俺の体を打つ。

 気を失えば水をかけられ、目をさませば打たれる。その繰り返しだ。

 口の中も鼻の中も血の味がして、気持ちが悪い。コンコンと咳き込めば、ごぼりと喉の奥で嫌な音がした。

「贓物が傷ついたらしいな。しかし餓鬼のわりによく耐える。ではこれでも平気でいられるかな?」

 いつの間にか、鬼の手には二つの首が無造作に掴まれていた。

 苦悶に満ちた表情をしてはいるけれど、見慣れたその顔。

「あ、あ、有馬さ……桐嶋さ……うわああっ!」

 暴れた拍子に綱が切れ、どさりと床に落下した。その目の前に投げ出された二人の首。

 あまりにも、酷い。


 頭が真っ白になって、一番近い隊士の木刀を奪い取り、力任せに凪ぎ払った。

 額が割れたのか、濁った悲鳴がして返り血が俺の視界の半分を赤く染める。

「土方あぁあ!」

 倉を飛び出し、近くにいた隊士を殴って刀を奪って、躊躇うことなく刺し殺す。

 群がってくる隊士を追い払い、逃げる土方さんを追いかける。

 二、三人斬ったら切れ味が鈍る。それが嫌で、殺したヤツの刀を奪い取る。脇差しか差してないヤツもいたけど、体の小さい俺には脇差がちょうど良かった。

 長脇差を使っている人が多かったから。


 何人斬ったのか、何人殺したのかわからない。

 刀を握り直し土方さんに襲いかかる俺は、きっと鬼のような形相だっただろう。

 斬るたびに嫌だと思っていた感覚もどうでもよくなり、どうすれば一発で絶命させられるのかもわかってきた。

 切っ先が美貌の鬼の肩を抉ったところで、俺は横に弾き飛ばされた。

「若杉健次郎! 何をしている!」

 沖田さんの声に怯んだ俺を投げ飛ばした巨漢は、たしか、島田さん。桐嶋さんより、まだ大きい体をしている。

「お……沖田さん、島田さん、邪魔しないでください」

「今の君はわたしも土方さんも、近藤さんも殺す。だから退かない。まあよくも、一人でこんなに殺してくれたもんだ。新記録じゃない? ねぇ、土方さん?」

「沖田、喋りすぎだ」

「土方さん、あなたが悪いんですよ。この子を、修羅にしてしまったのはあなただ。おかげでわたしは、この子を命がけで殺さないといけない」


 沖田さんに二ヶ所刀傷をつけたところで、俺は大勢の幹部に取り押さえられた。

 仰向けに押さえ込まれた俺が最期に見たのは、沖田さんが構える刃の向こう、やけに青い空。

 そして突風が吹き付け、沖田さんの纏う青い衣……浅葱色の羽織が舞った。それを目で追っていたら、喉に、じいん、と熱いものが押し付けられた。

「若杉健次郎。やっぱり君は早々に始末しておくべきだった。君が、人を斬ることに抵抗があるうちに」

「なんのこと……」

 沖田さんが喋る声が、どんどん聞こえなくなっていった。