経済音痴ではありますが、どさくさに紛れて政府が急ぐTPPについて、「TPP 黒い条約」からの内容を紹介し、ついでに感想を述べてみたいと思いました。
この本は7人の方が書かれているのですが、その中で、TPPに至るまでの歴史というのに興味を持ちましたので、そこからの引用が中心となります。
(知っている人には当然のことでしょうが、オンチですからご容赦を)
すべての発端「日米構造協議」
戦後の日本は、冷戦、固定相場制、GATT(自由化の例外規定やセーフガードが数多く設けられていた)などの特殊な環境の恩恵を受けて経済発展しました。
日本やドイツの経済台頭、ヴェトナム戦争の失敗などでアメリカの国際収支赤字が大きくなるにつれて、固定相場制から変動相場制へ移行しました。
1970年代には繊維交渉をスタートとして「日米通商交渉」が始まりました。対象品目は拡大する一方で、1980年代に入ると、電気通信や医薬品などを含めたMOSS協議も行われました。
1989年に冷戦が終結するとアメリカが唯一の超大国になり、日米同盟の目的が共産主義に対する防波堤から、対日封じ込めへと変化しました。
世界秩序をアメリカ有利に作り変える一極主義の中で、同年(平成元年)「日米構造協議」が始まったのです。
日米通商交渉が個別の具体的品目の貿易に対する交渉であったことに対し、
日米構造協議は貿易とは無関係で目に見えないもの、「貯蓄・投資パターン」「土地利用」「流通機構」「価格メカニズム」「系列」「排他的取引慣行」をアメリカが議題として提起してきました。
積年の通商交渉にも関わらず対日赤字が改善されないので、業を煮やし、日本の経済・社会構造そのものをアメリカに都合の良いものに改造するという政策に舵を切ったのが、この日米構造協議です。
1995年にはWTOが設立され、これまで自由化対象外とされていた農業関税やサービス分野における非関税障壁をも対象となって、GATTよりグローバル化することとなりました。
日米構造協議年次改革要望書TPP
日米構造協議でアメリカが突き付けてきたものは、ひとことでいうと「日本であることをやめよ」に等しいもので、「貯蓄率を下げよ」「系列取引を廃止せよ」などの内政干渉でした。
当初日本国内で反発の声が沸き起こりましたが、奇妙なことに、アメリカへの反発を諫める声が日本国内から出てきたのです。
( この頃から、自国ではなく別のところに忠誠、連帯感を持つ者たちが出てきたのだろうと推察します。)
そもそも「日米構造協議」という訳語が対米配慮の産物です。
原語は、Structural Impediments Initiative=日本に存在する(とアメリカが主張する)構造的な非関税障壁意を、アメリカのイニシアティブによって撤廃させる という意味があります。
これでは対米追随外交の誹りを免れず、日本国民の反米感情が沸騰するため意図的に訳したものなのです。
日米構造協議は、アメリカが日本の内政に踏み込み、日本の法律や制度をアメリカにとって都合のいいように「改革」させることに成功した最初のフレームワークでした。
日米構造協議は2年間という時限付きでしたが、これで味を占めたアメリカは、そのメカニズムを恒久化することを次の外交課題として、それが実現したのが、1993年に合意された、「日米経済包括協議」です。
この新たなフレームワークの下で、1994年から開始されたのが、「年次改革要望書」です。
これは1994年村山政権から2008年の麻生政権までの15年間、毎年下半期の日米首脳会談の際に提出された外交文書のことです。
原語は、Annual Reform Recommendations=年次勧告書です。
日米構造協議を提起したのは共和党ブッシュ政権でしたが、こちらは民主党クリントン政権、つまり、アメリカの日本改造は党派を超えて、国策として推進されてきたのです。
年次改革要望書にかかれていること
内容は、「個別分野」と「分野別横断的テーマ」に大きく分けられます。
個別分野は、「医薬品・医療機器」を除くすべてのサービス分野、
分野別横断的テーマは、「競争政策」「商法・司法制度」「行政慣行」「通商」「民営化」などです。
つまり、年次改革要望書は、日本の経済・社会全般ばかりか、立法・行政・司法の国家主権三権にまで及んでいたのです。
このアメリカから突き付けられた要求に一番忠実に応え貢献したのが小泉政権でした。
「競争政策に」に関する要望には、2005年小泉政権が独禁法の大改正で応えました。
「商法」に関する要望には、同政権が「商法改正」や「会社法」制定で応えました。
「司法制度」に関する要望には、やはり同政権による司法制度改革で実現、
「民営化」は小泉政権の目玉である郵政民営化で応えたのです。
日本側からも要望書は出しますが、それによってアメリカの制度や法律が変わったことは無いようです。
そして総仕上げTPPへ TPPの主戦場は非関税障壁
マスコミと官僚が結託して焦点をぼかす
2008年にリーマンショックが起こり、アメリカモデルの破たんが歴然としました。
2009年誕生した民主党鳩山政権は、15年続いた「年次改革要望書」を密かに廃止しました。
しかし、2010年菅政権がTPP参加検討を表明、
2012年の衆議院総選挙では、民主党がTPP参加を掲げ、自民党が条件付きながら参加反対を公約に掲げ圧勝、今自民党はTPP批准に向けて邁進しているところです。
マスコミは「聖域なき関税撤廃を掲げるTPP」という言い方をして、あたかも農産物の関税の問題のみに日本がこだわっているような印象操作をしています。
自民党が2012年選挙公約として掲げたTPP6項目があります。
- 政府が、「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り交渉参加に反対する。
- 自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない。
- 国民皆保険制度を守る。
- 食の安全安心の基準を守る。
- 国の主権を損なうようなISD条項は合意しない。
- 政府調達・金融サービス等は我が国の特性を踏まえる。
自民党のTPP慎重派が開いた会合で、政府の官僚は1のみ確認し、いくら追及しても2~6の非関税分野について答えなかったのです。それをその場にいて取材していたマスコミはどこも報道せず、「聖域なき関税撤廃~」とゆがめて報道したということです。
この図式は郵政民営化と同じだそうです。
多くの自民党議員は年次改革要望書を知らず、政府は説明責任を果たさず、マスコミは報道責任を果たさず、正確な情報を得られない国民が選挙で決めてしまったことと同じことが、TPPでも起きているのです。
グローバリゼーションとグローバリズム
グローバリゼーションは、通信手段などの技術革新に伴って起きる不可逆的な客観的現象で、阻止できません。
一方、グローバリズムは、イデオロギーなので、客観的でも中立でもありません。
アメリカが自国の国益を拡大するために駆使しているイデオロギーで、戦略的な道具です。
( 私はアメリカ政府を操るグローバル企業の利益を求める道具だと思います。)
TPPとは、日本政府が言うような新たな自由貿易のルールではなく、オバマ大統領が次のように述べた、そのものなのです。
「アメリカの輸出を増やし、アメリカの雇用を支援し、アジアの成長市場における競争条件を公平にするために、TPPの交渉を完了させるつもりである。」
ここからは感想です。
TPPと似ていると言われる米韓FTAは、2006年から交渉が開始され、韓国で2011年国会において批准が可決され、2013年に発行しています。
米国の連邦法>米国の州法>当該FTA>韓国の法律 となっているようです。
米韓FTAは、企業利益と国益をすり替えた協定となっていて、日本のTPPモデルになります。
韓国は今幸せそうですか?そうは見えませんよね。
アメリカ各地で従軍慰安婦像や碑が建てられているのは、このFTAとも関係しているのかなと思いました。( 韓国民の機嫌取りとして。今度アメリカ主導で慰安婦合意がなされたのは、TPPで日本国民の機嫌を取るため?)
アメリカは日本と韓国を骨までしゃぶるつもりでしょう。
反日原理主義の韓国が、そこを利用されアメリカに踊らされ、国を売ったような気がしました。
日韓経済共同体などといっている政治家にも、売国奴ではなく脱アメリカの気持ちがある人もいるのかなと、初めて思いました。
震災の時に支援してくれる米軍はありがたいと思いますし、個人的には日本を助ける気持ちを持ってくれていると思います。
しかし、それとTPPとは違います。
また、昨今のアメリカの様子を見ても、この長年にわたる戦略をぶち壊しそうなトランプ氏が支配階級から総スカンを食らっています。
彼の発言から、多くのアメリカ人が日本や韓国を守る気持ちを持たないこともわかりました。当たり前ですけどね。逆だったら同じですから。
そして、一般の国民が持つそういう感情は無視できないものです。
もし守るとしたら、まだ両国を骨までしゃぶり尽くしていないうちだけで、貧困国となれば搾取できないので「さよなら」となるでしょう。
日本の少子化が嫌で移民を入れたいのは、アメリカ企業が搾取する市場(=人口) を維持したいだけかもしれませんね。
日本に未市場国の人間を入れて面倒を見させれば、楽に消費者にアクセスできます。
そのためにも、日本を言いなりになる市場にしておかなければなりません。
相手の立場に立ってみると、いかに日本の行く末が危なっかしいのかよくわかりました。
三橋貴明氏のブログ記事 「主人公」 には、”これで我が国は「亡国への道」で大きく足を踏み出した”と書かれていました。