これからの雇用環境がどうなるのか4回シリーズの最終回です。

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1回目:残業代ゼロに関する報道記事を紹介します
2回目:「正社員をなくそう」というコンサルタント業の意見記事を紹介します
3回目:「解雇規制緩和論の正しい論じ方」 濱口敬一郎氏の論文を紹介します
4回目:残業ゼロではなくて残業"代"ゼロ・同一労働同一賃金・雇用の流動化⇒雇用環境を想像してみた!


正直言って、日本人がどういう反応を示しながら動いていくのかが予想できないので、想像するのは大変でした。

日本は、国益の確保と増進という名のもとに、他国と経済の連携を進めています。交渉中のTTPだけでなく、いくつかすでにあるEPA(※日本が締結するEPAは、関税やサービス貿易の自由化に加え、投資、政府調達、知的財産権、人の移動ビジネス環境整備など、幅広い分野をカバーするものです。相手国と「連携」して貿易や投資の拡大を目指す協定です。)もあります。

そして、グローバル化が進むため賃金もグローバル化していきます。高かったところは低く、低かったところは高く、世界中どこで働いても内容が同じなら同じ給料ということです。
同一労働同一賃金は最終的にはそこへ行くと思います。
(気候、インフラ、治安などによりその分は高低が付くはずです。)

そうした中、雇用契約、雇用形態も世界標準を求められて、それに合わせていくと思われます。
では世界標準とは何か?

EUと交渉を継続しています。経済的なものだけでなく、日本の主権にもイチャモンつけるような交渉も行われています。
昨年の報道ではこういうものもありました。反日左翼が嬉しそうに取り上げたものが目につきました。
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NEWSEU、日本に「人権条項」要求=侵害なら経済連携協定停止
 【ブリュッセル時事】欧州連合(EU)と日本が、貿易自由化に向けた経済連携協定(EPA)と同時並行で締結交渉を行っている戦略的パートナーシップ協定(SPA)に、日本で人権侵害や民主主義に反する事態が起きた場合、EPAを停止できるとの「人権条項」を設けるようEUが主張していることが5日、分かった。日本は猛反発しており、EPAをめぐる一連の交渉で今後の大きな懸案になりそうだ。
 EU当局者によると、EUはSPAに民主主義の原則や人権、法の支配の尊重を明記し、日本が違反した場合、EUがEPAを停止できる仕組みを盛り込む方針を内部決定した。日本に対しては、EUで人権侵害が起きれば日本もEPAを停止できると説明、理解を求めている。
 経済的利益と引き換えに民主化を迫るのは、開発途上国や新興国に対するEUの基本戦略。人権条項は第三国との協定で「不可欠の要素」とされ、対日SPAも、こうしたEU外交の延長線上にある。ただ、EUは米国との自由貿易協定(FTA)交渉では、SPAのような政治協定の締結を求めていない。
 EU当局者は、日本に対して人権条項が発動される事態は考えにくいと強調するが、EUは日本で死刑が執行されるたびに「死刑は残酷で非人道的だ」と批判する声明を発表している。死刑廃止を目指すEUが日本に働き掛けを強める上で、人権条項が無言の圧力になる可能性はある。
 日本に人権条項をのませておけば、EUが将来中国とFTA交渉を行う場合、人権条項の要求を通しやすくなるとの思惑もあるようだ。 
 日本は、もともと途上国向けの政策を先進7カ国(G7)メンバーの日本に適用しようとするEUの姿勢に憤慨しており、SPAがEPAを拘束する仕組みについても、法的に疑問が残ると主張。日本は外国との貿易自由化でSPAのような協定を結んだ例が過去になく、交渉段階でEUの主張を受け入れても、内閣法制局の審査で問題になる可能性があるとの懸念もEU側に伝えている。(2014/05/05-20:18)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2014050500353(今は表示されません)
波線転載END
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経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA) 外務省 より

経済界はEUとも組みたいのでしょうが、「死刑制度廃止論」まで含むような条件が示されたら、大衆の意見を無視して進むことになり、難しいなと思うかもしれません。
そして当然経済界は、アジアやアメリカなど別のところとも組みたいと思っています。

そして重要なことは、たとえどこと協定や条約を結ぼうとも、雇用契約はどこもジョブ型雇用であるということです。
これは、会社に入ってどのような仕事をするかは後からわかるというのではなく、こういう仕事をする(=ジョブ・ディスクリプション)という範囲を限定して会社と雇用契約を結ぶというスタイルです。

どういう職場風景になるかというと、「その仕事はジョブ・ディスクリプションに無いからしません。」という職場になります。従業員の部下を書生か使用人のように扱っていた人は、意識を変えない限り職場にはいられなくなります。日本人が苦手とする契約書をもとに働くことになります。

新卒を一斉に採用するという慣行もだんだんなくなると思います。仕事の空きが出たら募集を掛けるというものに変わらないと、ジョブ型雇用にならないからです。

そして、今は育児休暇、時短、男性にも育児休暇をとるように政府が大号令をかけていますが、その不在の間、誰かが代替要員として働くことになります。
この制度が維持されればされるほど、正規と非正規が固定されて、既得権益にいる人が最後まで居座るということになってしまい、「正社員を無くそう」とか「ジョブ型雇用推進」とは矛盾が生じると思うのです。

解雇しやすいけれど、再就職しやすい社会というものを目指しているようなので、この辺が今後徐々に変わってくるのではないかと思っています。

欧州は企業が福祉をやらない代わりに、税金が重く、そのお金で産休や育休が手厚くなっています。(と言っても、日本も数字的にはそれほど見劣りしません)
※北欧の男性育児休業制度はこちらに記事があります。興味のある方はご覧ください。)

アメリカ、そして日本と結びつきが強いアジアは、福祉はあまり考えられていません。

産休育休

過度な育休や時短は、キャリアアップの妨げに 2013年03月14日 東洋経済より

日本は欧州、アジアどちらの育休に合わせていくのか、消費税10%でも大騒ぎですから、アジア型に合わせていくしかないのではないかと思います。
それから、欧州の共働きも、男女平等ではなくて、「食えない」から共働きになったことを理解しておく必要があります。
税負担を軽くして、福祉を充実という双方のいいとこどりは出来ません。破綻するからです。

輝く女性、女性の活躍というとにかく女性を職場に送り込む政策ががむしゃらに進められていますが、今は男女共働き社会の洗脳をしているのだと思います。

将来的に労働者の賃金は大幅に下がると思うのです。なぜかと言うと、先ほども述べましたが、政府寄りの人はみんなボーダレス化を目指しています。ということは世界中の賃金が平準化されるということで、日本は今まで高い方でしたので、低い方へ流れるということになります。

「旦那さんの給料が低くて、仕方なく奥さんも働きに出る」
というのと、
「女性が家にいるのは古臭い遅れた考えなので、生活に余裕があるけれど夫婦共働きをしたい」
というのでは、どちらが明るい社会に見えますか?どちらが女性も働き始めますか?
人間だれでも惨めなのは嫌いですし、特に日本人は他人と同じでないと不安な民族です。みんなが働くから私も働くという風潮に簡単に流されます。

だから政府はそういうキャンペーンを張って、女性を働かせることにしたのです。
失業者がいるとか、生活保護の人をもっと働かせようとか、そういうことは最初から考えていないのです。とにかく、共働きの精神を日本国民に叩き込まないといけないということです。
そして必ずくる給料激減時代になっても、働き手が2倍になれば暮らせるでしょう。
何とか暮らせれば、暴動が起きることはありません。日々の生活に追われた大衆は、政府批判をする余裕もなく、おとなしく働くということです。
そのための今は準備期間です。

一部のエリート層は今より高給になると思いますが、その代り長時間労働で転勤もあって大変さは変わらないかもしれません。
でも庶民は給料がおもっきり下がりますが、残業が無くなり転勤もほとんどなくなるかもしれませんね。
貧乏な日本人では内需拡大できないから外国人を呼び込んで観光立国なんて言っているのかもしれません。もう発想が途上国で悲しいですね。

政府の政策は変わります。予算が無くなってできなくなる政策もあるのです。
これから10年、20年の間に何があるかわかりません。
なんでも政府に要求して、たいして負担もしていないくせにもらうことだけを考えていると、とんでもない目に遭います。
ギリシャや南ヨーロッパを見てください。

そして、たぶんこう考えている人がいると思うのです。国民のみんながそうなったら誰も食べていけなくなるから暴動がおこるかもしれないし、自分だけが貧しくなるのではない、と。

給料が低くても困らない階級の人達がいます。
実家が裕福で、給料以上の暮らしをしている人が今でもいますよね。
東京など地価が高いところはそれが顕著で、拠点(親の家など)があるか、大企業で社宅が完備しているか、借金がないか、自活できない親がいるかどうか、など社会生活のスタート時点から差があります。給料が下がった場合、そういう基礎体力が物を言うのです。

アジアの女性が育休や時短をもらえなくても働けて、高い地位にいるのは、階級社会で格差があるからです。
使用人を雇い、政府に頼らなくても自力でカバーできるからです。そしてそういう階層の人が高い地位についているのです。雇用もコネが幅を利かしています。
一方、庶民の共働きは家族が子供の面倒を見たり、子供連れで露天商をしたりしている人なんかよく見ます。

想像をするにあたって移民の影響がよくわからなかったのですが、今の状況では、悪い条件でも喜んで仕事をする、そして語学の面だけでなく世慣れていることなど、日本人にとって恐るべき競争相手になると思います。
日本人と同等以上の能力がありながら、日本人よりも低い給料の人が世界にはたくさんいます。
グローバル化とはそういう人達と一緒に競争することであり、日本人が占めていた良いポジションは今後どんどん奪われていくでしょう。実際お店や公共施設の従業員として中国人をたくさん見るようになりました。

政府が日本人にはお花畑での暮らし方しか教えないのに、外から狡猾でたくましい外国人を呼び込んでいることが、日本人に対する背任行為に見えて仕方がありません。
自国よりも貧しい国からの移民を増やせば、欧州のように惨憺たる有様になることは明らかで、そういうことも考えると暗い未来が見えてきます。

欧州のようにみんなが多くの税金を払い平等に近い暮らしをするのか、税金を低くしてアジアのような格差社会で暮らすのか、日本人は中庸が好きなのでそれを目指しているのかもしれませんが、制度や財源が中途半端で、むしろ欧州やアジアより酷い状態になるかもしれません。
確かなことは、どの道を進もうとも、終身雇用制度が崩れ、ほとんどの人は給料が大きく下がるということです。

長々と空想にお付き合いいただきまして、どうもありがとうございました。ペコリ