12月後半は、想い出の記事を振り返ったりしておりますが、

この記事が多くの人々に御理解いただけたことは、予想外でした。

解いて改めて分かった母の苦労でした。


なんとかなっちゃう現代の暮らしでは滅多に見られません。

親が亡くなったら、やっと処分(着物を)出来る・・・なんて冷たい声も聞きました。


どうでしょうか。

世の中が暗くなるのを恐れ、

誰かのせいにして、

過去の人々の苦労を見ようともしないのはどうでしょう。


道に迷った時こそ、過去の人の生きた証を見ようとする勇気を持って。



■7月15日に たまたま書いた記事がこちらです。↓





下の写真の着物リメイクは、

古い大島紬の着物と羽織のアンサンブルだったものです。


袷の着物とは、裏地が付いているため中の様子が分かりません。

また、強度も分かりにくいです。


このお客様は、

「これは母が着ていました。古いです。」


私が「大島紬は立派な御着物ですね。

お母様は大変良いお着物をお持ちでしたね。」と申し上げると




「・・・そんなことないのです、母はとても苦労したんですよ。」




現代で「苦労」と「大島紬」は矛盾するほど。

お金の余裕がないと大島紬は買えないのです。

たいへんたいへん高い着物です。




詳しくはないのですが、(誰か語ってー!(;^_^A)

昔、田舎の方では庶民が紬などの着物を普段着として長く着たそうです。

何度も洗い張りをして、また縫って・・・





20080715

これが、大島紬でリメイクしたコートです。

ご立派ですね。







年数が経っているから強度は安心ではなかったけれど、

とにかく解きました。



あれ?



同じ色で、似た柄の布が当ててあります。

弱くなったところを補強したんだな。。






あれ?






まただ。








あっれーーー!?

どこもかしこも当て布だらけ!



表地に響かないように、綺麗に縫ってあるから分かりませんでした。







どうしよう・・・(何がどうしようで、何を困っているのかさえ混乱しました。)






途中までにして、

羽織を解き始めました。

同じでした。




なんてこった。






このような御着物は初めてでしたので驚きましたけど

あの言葉「母は、苦労・・・・」がフィードバックして

大変なことを知ってしまったと想いました。


ほぼ全部を継ぎ接ぎするまで大切に愛されたお着物を両手でしっかり包み・・

抱擁しそうになってたと思います。私。





ここですぐ思ったのは、

きっと、絶対にお客様はそのことをご存知ないだろう。

そうだ、すぐお呼びしよう。



そして同時にアトリエの先生に相談して

なにがなんでもお洋服を作れるように最強の芯補強をしてもらおう!

(でも、ダメかも知れないという不安もありました。)




お客様は、御着物と羽織の裏側をご覧になって

静かに泣かれていました。




「母は苦労したんです。

子供がたくさんいるので一生懸命育ててくれたんでしょう。

驚きました。

こんなになるまで着ていたなんて。

私が譲り受けることが出来て幸せです。」



随分前なので正確ではないけれど、このようにおっしゃいました。








もちろん全力で製作させて頂きます!

アトリエの先生も初めて見たそうです。

継ぎ接ぎだらけの大島紬、お客様のお母様の継ぎ接ぎでしょう。

子供たちが、明日も元気に育つように一生懸命働いた結晶です。



なぜこのことを想い出したかというと

二日間、母と祖父母の墓参りや叔母様のお見舞いをする中で

自分の母を見ていたからでしょう。

どこへ行くのもわからんちんだし、

5回も「飛行機何時?」と聞くし、

「羽田くうこう」のことを「羽田こうくう」と言うし、

「松花堂弁当」のことを「松花どん弁当」とも言うし、

そうですね、墓参りなのにお線香を忘れるし。

自分の年齢は73歳でとまってるし。

(あ、痴呆じゃないのf^_^;昔からなの。。。)



今も、私よりも早く歩くし、孫と大喧嘩しているからまだ元気。

つい、肉の目だけで見ちゃうけど

すっごい継ぎ接ぎだらけなんだろうなー。


ほんとにほんとにほんとにほんとーーーーに今までご苦労さん!

ありがとう。


活字にしても、照れくさくて打てない文字は、「お母さん。」

娘が産まれてから「ばーば」と呼ぶようになったけど

そう、15年間「お母さん」と呼んでない。





これは、継ぎ接ぎだらけの羽織からリメイクしたベストです。





そして、出来上がった二つの作品について。

「しっかり補強させて頂きましたが、これ以上布に負担をかけないように

あまり洗わずにご愛用して下さい。」


「お仕立て代は高額商品に含まれるお洋服になりましたが、普段着として!

どうぞ毎日でも着てあげてください。お母様と一緒にお過ごし下さい。」




お分かりいただけましたか?

着物は、命そのものなのです。