人間の呼吸は1分間に約18回。
海の波も実は1分間に18回程浜に打ち寄せる。

日本で Yogaを学んでいた時、
年配のベテラン先生がクラスで教えてくれた。

浜に打ち寄せる波のリズムを
イメージしながら呼吸を繰り返す。

赤ちゃん、苦しくない?

十分な酸素がこの子行き届きますように。

そんな事を願いながら。

子宮はお構いなしに収縮し、
呼吸のリズムを崩す。

「ヴゥ。」と痛みで思わず声が出てしまう。
その度に夫が側でギュッと手を握ってくれる。

呼吸法をしていても、
全然リラックスできない。
リラックスどころか、
全神経を集中させてる状態。
一睡もしなかった。むしろできなかった。


羊膜は修復する

夫の言葉が希望になった。

とにかくできるだけ水を飲んだ。

夜通し30分弱おきぐらいに尿意を催す。

①ナースコール

②スタッフポータブルトイレ持ってくる

③(使用済み)と交換
     夫、尿のチェックの報告(出血状況報告)

夫とスタッフとの連携プレーが
成り立っていた。

バトンリレーのごとく
ポータブルを渡していく。

そしてこれが翌朝まで続いた。

ナースコールを押すと
夜中か、忙しい時以外はナースがやってくるが、私の場合は、ナースコール=トイレ泣き笑いなので、きまって用務員の人が毎回来てくれた。


子宮収縮の感覚が、

5分⇨10分⇨30分と
徐々に時間間隔があいていく。

痛みも和らいできた。

良くなってきてる!!

その確信があった。
油断も安心もできないが、
峠はなんとか越せた気がした。ネガティブ

ふと、隣を見ると夫がコクリ、コクリと
椅子にかけたまま眠ってる

ありがとうね、、そしてごめんね。。

閉め切ったカーテンの外の世界にも
意識を向ける余裕が出てきた。

ナースステーションからは
早朝にもかかわらず
ゲラゲラと笑い声が聞こる。


外の世界は私がどうなろうと
いつも通りに回る。


朝6時か7時頃にナースが赤ちゃんの心拍数と血圧検査にやってくる。

心拍数は元気に波打ってる。

心拍数を聞けるのは、1日1回。
苦痛な時間ばかりでない。
この時間は唯一の癒しの時間だ。

それから抗生物質の投与。
一通り終えると、
次の患者のところへ移動する。
移動の際にカーテンを思いっきり開けたままにされた。


カーテンが開けられた先に
同室の患者2人がいた。

訛りのある英語に、外見からして
2人ともフィリピン人だ。

ということは、恐らくヘルパーとして
働いている人達だろう。

香港人はいない。

どうもこの部屋は、
外国籍の人を優先に入れているようだ。

理由は、妊婦トラブル以外にも女性特有の病気や症状など様々だ。

あとからこの棟が産婦人科であることも分かった。


ふと久々に携帯の画面を目にする。

"今日の日本語のレッスンはできますか?"と
生徒からの連絡が入っていた。

あっと、生徒さんたち全員に連絡しないと。
一気に現実の世界に引き戻された。

仕事はどうする。

退院いつできるかな。

日本への帰国は。

家族にいつ連絡するべき。

止め処なく浮かびあがってくる疑問と
先の不安。と同時に自分の現状を客観的に知りたくなった。

出血の原因はそもそも何か。

私の今の状態は。

羊膜はほんとうに治るの。

深刻度のレベルは。

今後の治療方針は。


携帯で検索しようにも、
右手にぶっ刺さったままの針の痛みで、
携帯を手で支え続けることを困難にする。
スクロールの動きもいちいち痛い。無理だ。
左手だけじゃやりづらい。
あきらめた。

日本の病院であれば普通
ドクターと面談があるのでは?

治療方針や現状が何も分からない。

そもそも毎回違うナース、用務員が来て、
誰がドクターなのか、担当医なのかも
さっぱり分からない。


この疑問が苛立ちに変わり、
最終的に不信感に繋がっていった。