5年ほど前に、訪問診療や在宅緩和ケアを長年されている医師の方と、お知り会いになりました。
先生は、僕ががん患者だということは知りません。
現在も月に一、二度お会いする機会があるのですが、先日初めてがんについて、いろいろお話しをうかがってみました。
最近気になった記事を読んでいたので、お話しを聞いてみたかったのです。
再発、再燃したがん患者にとっての積極的治療とは、できるだけ長く生命を維持できることを目標にすると思います。
もちろん僕も含め、完治を目標に頑張っていらっしゃる方は大勢います。
そして治療法としては、医師から化学療法を勧められるケースが多いのではないでしょうか。
抗がん剤は少なからず副作用を伴うので,予測される治療効果を自分自身が把握し、そして医師とよく相談しながら治療を行うべきかと思います。
がんが再発・再燃した場合の治療が、副作用に見合う有用な効果が期待できない場合、(当時の医療で僕の場合、期待できる治療効果は無しに等しいと思った。)また、QOLを維持できないと思われる場合には、
【治療をしない方が良い】
と腹を括る決断が必要なのかもしれません。
この決断は非常に難しいと思うし、少しでも可能性があるのであれば、その可能性を信じることがごく自然な決断でもあるとは思います。
それほどまでにがん患者とは、死の恐怖に苛まされて心が揺らいでいるからです。
先生のお話しによると、通院が困難になるくらいに病状が悪化すると、主治医から抗がん剤治療を中止する旨を告げられます。
そして在宅療養にきりかわることも多いようですが、残念ながら全体の三割くらいの方は、1カ月もたずに最期を迎えてしまうようです。
ですが一部の患者さんは、治療をやめたことで、かえって元気になられる方もいらっしゃるみたいです。
副作用から解放されて、体調が安定するということなのだと思います。
以前僕は、ある医師のこのような記事を目にしたことがあります。
『医師が、積極的治療(化学療法)をもうこれ以上はやめたほうがいいと患者に伝えているのに、患者のほうが治療をやめようとしない。理由は、これまでの治療に伴う辛さを無駄にはしたくないからである。だから、治療をやめようとしないのである。』
このような内容のお話しでした。
おっしゃっている内容は理解できるのですが、違和感を感じたのは僕だけだったのでしょうか。
予想できるだろうこの状況で、医師である貴殿自身が勧めたこの治療を、ある意味患者が理解できていないかのような物言いにとても違和感を覚えたのです。
たとえ、きちんと延命が目的の治療であることは伝えられていたとしても、僅かな希望を抱いていた奇跡への挑戦を、この瞬間に断ち切られてしまうのです。
患者にとっては、辛い死の宣告とも受け取れます。
自分が当事者であれば、理解はしていても受け入れ難い瞬間であり、諦めきれずパニック状態に陥ってしまうかもしれません。
身体はぼろぼろになっていても、純粋に生きたい、諦めたくないという意欲が強いだけであって、今までの努力、しんどさが無駄になるからという思いは、また別物だと思います。
がん患者の心理を把握できていないと思われる医師と、信頼関係を築くのは容易ではありません。
医師も辛い、残念だとは思っているものと信じますが、現実には、生と死の狭間で闘っている患者と医師の思いの温度差は、大きいものがあるということを前もって理解しておかなければならないのだと思います。
何故ならほとんどの医師は、本当の死の恐怖を体験したことがないのですから、仕方ありません。
そして医師にとっては、自分が大勢いる患者のひとりにすぎないということなのです。
僕の運が良くなかっただけかもしれませんが、結局主治医と信頼関係を築くことはできませんでした。
ですが、対等にお話しのできる先生でしたので、ありがたい先生だとは感じていました。
ある在宅緩和ケア先生の、記事の一部を以下抜粋いたします。
在宅療養開始後、だんだん元気になる人も稀ではなくいる。
吐き気やだるさが改善し、食欲も出て、体力が回復してくる患者さんたちだ。
治療医から、治療はもはや限界です、と言われ、抗がん剤治療を中止したことで、結果的に、副作用が軽減したのである。
このような患者さんたちの多くは抗がん剤の副作用による症状で、衰弱していたことが分かる。
そして、日常を取り戻す。
治療の中止を恐れ、そのまま抗がん剤治療を続けていれば、その後短期間で副作用死していた可能性もあるのである。
がん患者にとっての積極的治療とは、いったい何なのかよく分からないです。
自ら考え、治療の選択が可能なのであれば、それが本人にとっての理想の治療であり、積極的治療なのかもしれません。



