副腎がん手術に関しては、肝がんを摘出した時と比べたらそれほど印象的な記憶がありません。
意識が飛びそうな苦しかった印象や、術後病状が悪化することもなく、スムーズにがんを摘出していただけたと思います。
手術当日は緊張していたし、手術が無事に成功してくれることを祈っていました。
肝がん手術がかなりのトラウマになっていたので、あの苦しみをもう一度味わうのかとは思っていたのですが、手術が上手くいかないのではないかという不安はあまり感じていなかったのです。
当初七〜八時間くらいの手術になるのではないかと先生から聞いていたのですが、四時間程度で終了したみたいです。
予想以上に手術が早く終了したので、まりさんと家族等はびっくりしたようです。
M先生が開口一番、
「手術は成功したので、安心してください。」
「思ったよりも身体の状態が良くて、スムーズに事が進みました。」
この言葉で皆が安堵したみたいです。
手術で一度お腹を開くと、体内が空気に触れてしまい、肋骨等に体内の肉が癒着するようです。
酷い場合、癒着した肉を剥がす作業にも手間を取られるみたいですが、僕の場合そのようなこともありませんでした。
実際体内はとても綺麗だったみたいで、M先生からも褒めていただきました。
この二年間、身体の土台作りをしていたことが、結果として内臓にも影響を及ぼしていたのかもしれません。
手術後ICUで経過観察され、辛いのは間違いなかったのですが、僕が自分自身を冷静になって経過観察することができていました。
意識ははっきりしているし、看護師さんからの応対も受け取れる。
肝がん手術の時とは明らかに違い、術後を自己分析できていたし、ICUでの、他の患者さんの様子を見て取れる余裕さえもありました。
今回も大丈夫だろうと早々に感じることができたのです。
肝臓と副腎の臓器としての大きな違いがあるのは当然ですが、それだけではなく、体調の良し悪しで、術後の経過にこれほどまでに差があるのかと痛烈に思い知りました。
二年前とは比べものにならないぐらい、身体の状態は良かったのだと思います。
副腎という臓器を失ってしまいました。
だけど、心は晴れやかな気持ちになれていたのです。