出展:http://eco.nikkei.co.jp/special/ecopro/article.aspx?id=MMECf2000017072008&page=1


日産自動車とNEC、NECトーキンが共同出資で設立した自動車用リチウムイオン電池の製造会社、オートモーティブエナジーサプライ社(AESC、神奈川県相模原市)は同県座間市の日産座間工場内に電池の量産ラインを建設する。


 現在、ハイブリッド車などに採用されているニッケル水素電池に比べ2倍の電力を蓄えられるリチウムイオン電池を来年度には年産1万3000台分製造できる態勢で稼動を目指す。日産にとっては環境対応車で巻き返しを狙う原動力であり、NECグループにとってはこれから市場が伸びる電池ビジネスの核となる。AESC社の吉岡伸晃副社長兼技術部長に聞いた。


 ――リチウムイオン電池はニッケル水素電池に比べて、たくさんの電気を蓄えることができる優位性を備えていますが、安全性の観点から自動車への搭載が進まなかった。ここへ来て技術進歩があったのですか。


 「自動車に搭載する部品は安全性への要求が非常に厳しい。携帯電話で起きたような発火事故は、仮にユーザー側の使い方に問題があったとしても、決して起こしてはならない。自動車の場合、電池の改良だけで安全を確保するのではなく、自動車側の様々な工夫とあわせて、システム全体として安全性を高めるのが基本だ。日産とNECが手を組んだのは両社の技術を合わせることで、高性能で安全・安価な自動車用電池が実現できると考えたからだ」


 「電池側の進歩を説明すると、まずAESCの電池は形状が円筒形ではなく平たいシート型だ。薄型の電池をラミネートフィルムで包んでおり、自動車の床下に積み込みやすい構造であるうえ、円筒形に比べ放熱しやすいため、充放電を連続して行っても温度が上がりにくい」


 「もうひとつは正極(プラスの電極)の材料に特徴がある。携帯電話などに採用されているリチウムイオン電池の正極は『層状構造』と言って、コバルトやニッケル原子の層とリチウム原子の層が積み重なってできている。このため過充電でリチウムが必要以上に出てしまうと、層状構造が壊れて過大な電流が流れる危険がある。AESCの正極はマンガンの『スピネル構造』と言って、マンガン原子が層間を支える柱の役割を果たし、過充電状態になっても結晶構造が壊れない」


 ――マンガン系に弱点はないのですか。


 「マンガン系のリチウムイオン電池はNECが1996年に初めて携帯電話用に実用化したが、高温(セ氏60度以上)に弱かったため、携帯電話市場ではコバルト系やニッケル系の優位を許した。正極に含まれるマンガンが電解液に溶けてしまい、取り出せる電気の量が使わないうちにも減ってしまう。そこでマンガンの溶出に関係する水素イオンをとらえてなくす技術を開発、高温寿命の問題を解決できた。新車を購入して次に買い換えるまで電池を交換しなくても済むはずだ」


正極材料比較(AESC社の資料をもとに作成)

  マンガン系 コバルト系 ニッケル系
供給元 AESC A、B社 C、D社 E、F社
過充電に対する安全性
エネルギー密度
寿命


――急速な電池技術の進歩が自動車を変えていくのでしょうか。


  「変えると思う。日産は1992年から電気自動車やハイブリッド車にはリチウムイオン電池が最適だと判断して、リチウムイオン電池搭載の電気自動車の研究開発を続けてきた。高度なリチウムイオン電池へのこだわりゆえに、ニッケル水素電池を採用したハイブリッド車の販売で他社に先行されることにもなったが、いよいよ本命の登場だ」


 「電気自動車の課題は充電に時間がかかることや1回充電あたりの走行距離が短いことだといわれてきたが、それも変わった。富士重工業が東京電力と協力して進めている電気自動車プロジェクトでは富士重の軽自動車にAESCのリチウムイオン電池を搭載した自動車を東電が業務用所領として採用していく計画だが、この自動車は1回充電で走れる距離は80キロにとどまるが、急速充電をすれば15分で容量の80%分を充電できる。少し休憩すれば、再び走り始められるわけで、使い方によっては充電時間や走行距離は普及への大きな障害ではなくなってきた」


 「神奈川県の松沢知事は『神奈川県を電気自動車発祥の地にしよう』と、購入の優遇策を講じたり県内に充電スタンドを1000カ所設ける考えを表明している。化石燃料資源の不足が視野に入ってくると、太陽光で発電し電気自動車を走らせるという時代が意外に早くやってくるかもしれない」



▽取材を終えて・・・

 すべての道は電池に通ずる。電池の活躍場所は携帯端末や自動車だけではない。太陽光や風力など自然エネルギーによる発電の拡大も電池の能力アップ次第だ。自然エネルギーは天候などによって出力が安定しない宿命を背負う。家庭やオフィスの安定した分散型電源として普及するには電気をためたり取り出したりが無駄なくできる高性能電池が不可欠だ。


 自動車の世界だけを見ても、日産とNECの提携のほか、トヨタ自動車と松下電器産業、フォルクスワーゲンと三洋電機、三菱自動車とGSユアサなど、電池会社とユーザー企業との連携が活発だ。「日本の電池技術の高さは材料技術の高さ」と吉岡副社長は言う。電極など性能のカギなる材料の開発力で日本企業が高い競争力を持っており、これから世界が低炭素社会に向けて舵を切るなか、活躍が期待される。




<コメント>すべての道は電池に通ずる、、、、自動車業界以外での次世代電池の活躍を期待したい。