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●「環境はもうかる」がビジネスの共通認識に

 「私は『環境保護主義者』ではありません。でも、環境をキーワードにビジネスを進めます。なぜなら、そこに利益が見込めるからです」。ゼネラル・エレクトリック(GE)のイメルト会長は、こう発言をしています。


 GEは原子力発電から家電まで、さまざまな領域に手を広げる巨大なアメリカ企業。そのトップが「環境にビジネスチャンスあり」と考え始めたのです。彼がその中心に据えるのは、地球温暖化対策に役立つ省エネ製品、環境配慮型商品といった製品群です。アメリカは国として京都議定書から離脱をしましたが、先を見る企業はもう変り始めているのです。


 地球社会が温暖化防止に動く中で、新しいビジネスチャンスがさまざまな産業で生まれています。何よりも大切にしなければならない「お客さま」が急速に変わり、取引企業に温暖化防止に取り組むことを望むところが増えています。一方、消費者も急速に変り始めました。こうなると、「先んじて温暖化防止に役立つ商品を市場に投入すれば、売り上げが伸び会社に利益をもたらし、株主に還元できる」。いまではこう考えるのが世界の経営者の共通の認識だといっていいでしょう。


 欧米企業の経営層や管理職の人々と話すと「カーボン・マネジメント」(炭素管理)という言葉を頻繁に聞きます。温室効果ガスを代表する二酸化炭素(CO2)の管理を経営の中心に据えなければ、これからはビジネス界の中で生き残れないと感じているからです。カーボン・マネジメントができない人は企業のCEO(最高経営責任者)失格だとさえ言われています。


●経営リスクとしてのCO2

 それはチャンスであると同時に、リスクももたらします。
 自社の持つ温室効果ガスの排出枠に余裕がなかったら、新しいチャンスがめぐってきても何も始められない――。ヨーロッパの産業界では、そんな状況が始まりました。現在、EU(ヨーロッパ連合)では域内の約1万1000の事業所に、CO2をはじめとした温室効果ガスの排出の上限が課せられています。この上限枠はただで配られています。しかし、ポスト京都と呼ばれる2013年以降は、制限を受ける企業は自社が必要とする排出枠はお金を出して買わなければなりません。しかも競合する他社と一緒に入札制の下で国から排出枠を買う必要がでてくるのです。いまEUでは2009年初めの法律化が検討されています。


EUでは排出枠が余った企業と、不足した企業の間で、その権利を売買する「排出権取引」が急拡大しています。CO2には「カーボンプライス」と呼ばれる価格がつき、EUの企業はその動向をにらみながら「空気」の取引や企業活動を管理するようになりました。カーボンプライスは今後、重要な経営指標となるはずです。自社の株価を毎日チェックするように、CO2の価格を見ながら、企業経営を行うことになるでしょう。


 世界では温暖化防止に社会も消費者も動きだしました。社会も消費者も企業に求めるものが変ります。その要求に応じるためには企業は変わらなければなりません。換言すれば、企業は従来型のビジネスモデルを見直し、新しいモデルを再構築する課題に直面しているのです。自社が排出できる枠内で如何に利益を最大化することができるかの競争が始まったのです。


 日本ではまだ法律に基づくキャップはありません。日本経団連が取りまとめる「自主行動計画」に基づき、自主的にCO2を削減することになっています。法的規制に向き合うEUの企業と、自主規制で動く日本の企業と比べて、果たしてどちらが生き残るのか。答えは明らかでしょう。


自分の働く会社が生き残り、自分も地球環境を守りたいのであれば「自分の会社の温暖化がもたらすチャンスとリスクへの対応がどうなっているのか、至急点検してほしい」。このことを私はビジネスパーソンに訴えたいのです。

●企業を取り巻く環境が変わる

 私はこれまで銀行と証券の世界でビジネスを経験してきました。振り返ってみると、企業を取り巻く経営環境、それに基づく企業戦略は、ビジネスの現場で一瞬に変わってしまうものです。特に経営者は必要と思えば豹変します。企業の生き残りが経営者の双肩にかかる以上、当然の事です。とすれば、その下で働く多くのビジネスパーソンも絶えず経営環境の変化に注意を払うのは当然ことです。


 日本でも温暖化対策で潮目が変り始めました。やがて法的規制によるCO2排出の枠も出て来るでしょう。それよりも先に「お客さま」から、突然、温暖化への一段の対応を要求されるかもしれません。消費者の要求がドンと出てこないとも限りません。また、先進的なCO2の排出規制をするEU諸国から「輸出したいなら、同程度の規制をかけるべきだ」と求められる場合もあるでしょう。世界の流れはハッキリしてきました。日本の企業もビジネスパーソンもこうした動きに早く対応すべきです。できればライバル企業に先んじて。


 今のうちから、それを見越した行動を取っているビジネスパーソンにとっては、大きなチャンスです。挑戦しがいのある、おもしろい時代が始まりました。ビジネスが引き起こした温暖化に対して、ビジネスが歯止めをかけ、地球の未来を救う。まさにビジネスパーソンにとってこんな生きがいのある仕事はないのではないでしょうか。


<コメント>

電気自動車を後押しする動きにCO2本位制、カーボンオフセットの概念があります。

未来はCO2が基軸通貨になるかもしれません。経済性や環境問題という観念だけでは済まされない現実があるのです。電気自動車はその中の道具の一つにしかすぎません。