最初に。
今まで勉強した本では、自給率を上げる根拠として「穀物高騰がとまらない」論をすべて採用していました。
2009年初頭にはすでに価格は2006年台まで戻っていたのですが。これも2005年までと比べると高いほうですから、未だに農水省などは同じ意見なのだろうと思います。
その穀物価格推移を向上派は「下がることはもうない」「どんどん高くなる」としています。
もちろん長期で見たら上がるというのは「間違っている」とは言えないのですが(未来のことですから)、2007年、2008年の穀物価格推移は明らかに異常でした。
もちろん今までになかったことですから慌てることは理解できます。
しかし穀物の世界にも「金融現象」があるということが予想できなかったのでしょうか。
穀物等の国際価格の推移
チャートを見ればわかりますが、2008年上期に穀物価格は最高値をつけ、その後は半値近くまで値を下げてそれまでの動きから見れば安定的となっています。
批判本である『食料危機をあおってはいけない 』は値動きが落ち着いた後だからか、「私は2007年から2008年にかけての穀物価格の高騰は、金融現象であると理解しています」としています。現在はこの指摘は概ね正しかったと言えるのではないでしょうか。
なぜこれほどまで価格が上がったのかを賛成派も皆分析していますが、「バブル」というのを認識していたでしょうか。そしてその中心的役割を演じていたのはサブプライムローンからお金の行き先を探していた投機マネーです。
いくら穀物需給が逼迫したとしても、価格が5・6倍になるようなことはありえません。
もちろんそれを見越して投機が仕掛けた面は大きいですが。
また、その先駆けだった原油価格の高騰も現在の実態とは必ずしも関係のない「ピークオイル論」の噂によるものであった面は大きいと思います。
参考 ECONO斬り!!:ピーク・オイル
穀物の需要量、生産量、期末在庫率の推移 (PDF)
穀物需給の推移を見ると、生産量は07、08、09年と需要量を越しています。
需要が供給を下回ったのは2005、2006年でした。このグラフから見ると期末在庫率は生産量と同様2007、2008、2009年で増加しているように見えます。
現在は文言が消えていますが、去年はこんなことが書かれていました。
「期末在庫率の推移を見ると、2007/08年度は17.3%と2006/07年度に引き続き低水準で推移し、需給の逼迫から「食料危機」が現実のものとなった。」
私はこのグラフを見ると実際にそんなものあったのか、と思ってしまいます。
世界の農産物価格の動向
こちらもトーンダウンしています。
去年は背景を、「① 中国等の途上国の経済発展による食料需要の増大、② バイオ燃料による需要増大、③ 地球規模の気候変動の影響といった構造的な要因のほか、輸出国の輸出規制があった」としていますが、それらは直接の需給の逼迫とは無関係であったことがわかります。生産量は実際には需要を上回っていたのですから。むしろ2006年のほうがよっぽど需給は逼迫していたといえます。
しかし2006年は現在と同じ価格帯です。現在の相場は期末在庫率から見ると06年より高いのでまだ投機的取引によって実際より高くなっているのではないかと推測できます(もちろん世界全体の総体量ですから地域的に需給が逼迫することは考えられます)。
投機というのは噂を先取りして飛びつく性質のお金です。
市場は実際になくとも、噂によって(為替でいえば日銀のレートチェックだとか、ひどい時には根も葉もない銀行破綻の話がでることもあります)上下することはよくあります。
商品先物取引 フジフューチャーズ
ここの商品先物取引では取引量をみることができますが(この会社だけのものでしょうが)半値になっても取引量はそれほど減っていません。穀物相場はいまだ投機マネーが入る余地はあると見ていいでしょう。
この値動きと需給表は連動していません。していたのなら80年代以降は83年、86年~88年、93年~95年、00年~03年、05年~06年に価格が高くなるはずです。
2000年までは実際に高くなっています。しかしそれ以降は03年もそれほど変化なく、需給が回復した07年から2倍以上高くなっています。
価格高騰と需給に関係がなくとも、世界中で事件が起き、デモや暴動が頻発しました。
それは否定することのできない事実です。
しかしこれは「需給が逼迫したから騒乱が起きた」のではなく、「需給逼迫を予測した投機による価格高騰で食えない人が多くなった」ことが原因です。
ここまで「穀物価格と需給に関係がない」といっておきながら、触れていないことがあります。それは数字だけを見ると穀物全体では需給は逼迫してませんが、各穀物を細分化してみると需給が逼迫している可能性があるということです。米などは現在まで高値が続いています。これは現実に需給が逼迫しているということになるかもしれません。しかし自給率の高い日本では全く関係ありません。
そして先ほども挙げた地域的な逼迫、オーストラリアでは二年連続で不作だったと言われ、また、高騰の一番の原因は各輸出国の輸出規制で、実際の取引量が少なくなったことだと言われてもいます。真偽は不明ですが実際には余っていたのでそのせいで輸出国内ではだぶついてしまったとも。
世界の小麦(生産量、輸出量、輸入量の推移)
小麦の話ですが、06/07年では確かに需給逼迫は見受けられます。オーストラリアも二年は平年の半分程度しかとれていないようですね。しかし07/08年を見ればわかるように、他の国の減少分はアメリカがものすごい増加率で吸収し、総体として増えています。
農産物の輸出規制の現状
こちら(Cafe BLEU (カフェ・ブリュ)最近の穀物輸出国における輸出規制政策について )で例としても出されていますが、輸出規制するって話題になったアルゼンチンは上のデータでは1000万トン以上輸出してるんですね・・・。
どういうことなんでしょうか。あと、ロシアも話題になりましたが、輸出税をかけるってだけだったのかな?輸出量が減っている年がありませんでした。
世界のとうもろこし(生産量、輸出量、輸入量の推移)
どうもわからないのは、「バイオエタノール需要で食用が少なくなる」と言われていたトウモロコシです。
輸出量を見ると、最大の懸念材料だったアメリカの輸出量が07/08年に減っていた事実がないことです。(08/09年は予測値っぽいのでなんともいえませんが、金融危機と同じ3月ごろから価格はだだ下がりだったことを考慮してほしいです)
量だけを見て、用途に関しては見ていないので間違う可能性もあります。
もちろん中国などもエタノールは使用しています。しかし輸出急減は気になる所ですが、未だ輸入はほとんどされておりません。
「食糧輸出国は売り惜しみをし、輸入国は買い占めに走る」これは2008年4月の朝日新聞の社説らしいもの(極東ブログ より)の一文なのですが、総輸出量が増えているのに売り惜しみ・・・。
うーん・・。輸入国の買い占めに関しては、07/08年にEUが随分輸入量を増加させているのであるかもしれません。減っているのはイランなどの中東の国と「その他」に分類されるシェアの小さな国々ですが、ほとんどの国、チリやジンバブエなど、所得の低い国でも増えていることを考えると、買い占めによって購買力の低い国が影響を受けたと言えるのでしょうか。(もちろん、価格によって暴動が起きている国がありますが、量のことを話しています)
どうやら輸出量と価格にはなんの関係性も見られないのじゃないかと思います。
在庫を切り崩せば輸出量など増やせるので、実際に需給が逼迫する可能性はあるのですが、実際には在庫が増えてますし・・・。
それとともに、「穀物価格の高騰は一過性のもの」というのは価格が安定していた05年水準まで戻らなければ証明できません。『飢餓国家ニッポン 』の著者は「間違いないのは、どんなに下がっても、過去の3ドルという水準には戻らないだろう」と書いてますから、ここまで下がればこの著者のいう「パラダイムシフト」は起こらなかったといえますね。
なので、これらの人たちの価格高騰論はいまだ否定できない段階なのです。
あと、私は価格高騰→需給逼迫ではないということをいいたかっただけで、需給が本当に逼迫すれば価格は上がるということは自然なことです。
あくまで08年の高騰についての話でした。
長々と続けても特に意味のある結論は得られませんが、一言。
「投機が入るとみんな台無し」
追記
これを書いた後読みました。
私なんかが書かなくてもちゃんと詳細を書いてくれていますね。
しっかりした文でグラフなどと共に詳細が知りたい方は読んだほうが良いです。
・・・・ぱ、ぱくってなんかないよ!ほんとだよ!
今まで勉強した本では、自給率を上げる根拠として「穀物高騰がとまらない」論をすべて採用していました。
2009年初頭にはすでに価格は2006年台まで戻っていたのですが。これも2005年までと比べると高いほうですから、未だに農水省などは同じ意見なのだろうと思います。
その穀物価格推移を向上派は「下がることはもうない」「どんどん高くなる」としています。
もちろん長期で見たら上がるというのは「間違っている」とは言えないのですが(未来のことですから)、2007年、2008年の穀物価格推移は明らかに異常でした。
もちろん今までになかったことですから慌てることは理解できます。
しかし穀物の世界にも「金融現象」があるということが予想できなかったのでしょうか。
穀物等の国際価格の推移
チャートを見ればわかりますが、2008年上期に穀物価格は最高値をつけ、その後は半値近くまで値を下げてそれまでの動きから見れば安定的となっています。
批判本である『食料危機をあおってはいけない 』は値動きが落ち着いた後だからか、「私は2007年から2008年にかけての穀物価格の高騰は、金融現象であると理解しています」としています。現在はこの指摘は概ね正しかったと言えるのではないでしょうか。
なぜこれほどまで価格が上がったのかを賛成派も皆分析していますが、「バブル」というのを認識していたでしょうか。そしてその中心的役割を演じていたのはサブプライムローンからお金の行き先を探していた投機マネーです。
いくら穀物需給が逼迫したとしても、価格が5・6倍になるようなことはありえません。
もちろんそれを見越して投機が仕掛けた面は大きいですが。
また、その先駆けだった原油価格の高騰も現在の実態とは必ずしも関係のない「ピークオイル論」の噂によるものであった面は大きいと思います。
参考 ECONO斬り!!:ピーク・オイル
穀物の需要量、生産量、期末在庫率の推移 (PDF)
穀物需給の推移を見ると、生産量は07、08、09年と需要量を越しています。
需要が供給を下回ったのは2005、2006年でした。このグラフから見ると期末在庫率は生産量と同様2007、2008、2009年で増加しているように見えます。
現在は文言が消えていますが、去年はこんなことが書かれていました。
「期末在庫率の推移を見ると、2007/08年度は17.3%と2006/07年度に引き続き低水準で推移し、需給の逼迫から「食料危機」が現実のものとなった。」
私はこのグラフを見ると実際にそんなものあったのか、と思ってしまいます。
世界の農産物価格の動向
こちらもトーンダウンしています。
去年は背景を、「① 中国等の途上国の経済発展による食料需要の増大、② バイオ燃料による需要増大、③ 地球規模の気候変動の影響といった構造的な要因のほか、輸出国の輸出規制があった」としていますが、それらは直接の需給の逼迫とは無関係であったことがわかります。生産量は実際には需要を上回っていたのですから。むしろ2006年のほうがよっぽど需給は逼迫していたといえます。
しかし2006年は現在と同じ価格帯です。現在の相場は期末在庫率から見ると06年より高いのでまだ投機的取引によって実際より高くなっているのではないかと推測できます(もちろん世界全体の総体量ですから地域的に需給が逼迫することは考えられます)。
投機というのは噂を先取りして飛びつく性質のお金です。
市場は実際になくとも、噂によって(為替でいえば日銀のレートチェックだとか、ひどい時には根も葉もない銀行破綻の話がでることもあります)上下することはよくあります。
商品先物取引 フジフューチャーズ
ここの商品先物取引では取引量をみることができますが(この会社だけのものでしょうが)半値になっても取引量はそれほど減っていません。穀物相場はいまだ投機マネーが入る余地はあると見ていいでしょう。
この値動きと需給表は連動していません。していたのなら80年代以降は83年、86年~88年、93年~95年、00年~03年、05年~06年に価格が高くなるはずです。
2000年までは実際に高くなっています。しかしそれ以降は03年もそれほど変化なく、需給が回復した07年から2倍以上高くなっています。
価格高騰と需給に関係がなくとも、世界中で事件が起き、デモや暴動が頻発しました。
それは否定することのできない事実です。
しかしこれは「需給が逼迫したから騒乱が起きた」のではなく、「需給逼迫を予測した投機による価格高騰で食えない人が多くなった」ことが原因です。
ここまで「穀物価格と需給に関係がない」といっておきながら、触れていないことがあります。それは数字だけを見ると穀物全体では需給は逼迫してませんが、各穀物を細分化してみると需給が逼迫している可能性があるということです。米などは現在まで高値が続いています。これは現実に需給が逼迫しているということになるかもしれません。しかし自給率の高い日本では全く関係ありません。
そして先ほども挙げた地域的な逼迫、オーストラリアでは二年連続で不作だったと言われ、また、高騰の一番の原因は各輸出国の輸出規制で、実際の取引量が少なくなったことだと言われてもいます。真偽は不明ですが実際には余っていたのでそのせいで輸出国内ではだぶついてしまったとも。
世界の小麦(生産量、輸出量、輸入量の推移)
小麦の話ですが、06/07年では確かに需給逼迫は見受けられます。オーストラリアも二年は平年の半分程度しかとれていないようですね。しかし07/08年を見ればわかるように、他の国の減少分はアメリカがものすごい増加率で吸収し、総体として増えています。
農産物の輸出規制の現状
こちら(Cafe BLEU (カフェ・ブリュ)最近の穀物輸出国における輸出規制政策について )で例としても出されていますが、輸出規制するって話題になったアルゼンチンは上のデータでは1000万トン以上輸出してるんですね・・・。
どういうことなんでしょうか。あと、ロシアも話題になりましたが、輸出税をかけるってだけだったのかな?輸出量が減っている年がありませんでした。
世界のとうもろこし(生産量、輸出量、輸入量の推移)
どうもわからないのは、「バイオエタノール需要で食用が少なくなる」と言われていたトウモロコシです。
輸出量を見ると、最大の懸念材料だったアメリカの輸出量が07/08年に減っていた事実がないことです。(08/09年は予測値っぽいのでなんともいえませんが、金融危機と同じ3月ごろから価格はだだ下がりだったことを考慮してほしいです)
量だけを見て、用途に関しては見ていないので間違う可能性もあります。
もちろん中国などもエタノールは使用しています。しかし輸出急減は気になる所ですが、未だ輸入はほとんどされておりません。
「食糧輸出国は売り惜しみをし、輸入国は買い占めに走る」これは2008年4月の朝日新聞の社説らしいもの(極東ブログ より)の一文なのですが、総輸出量が増えているのに売り惜しみ・・・。
うーん・・。輸入国の買い占めに関しては、07/08年にEUが随分輸入量を増加させているのであるかもしれません。減っているのはイランなどの中東の国と「その他」に分類されるシェアの小さな国々ですが、ほとんどの国、チリやジンバブエなど、所得の低い国でも増えていることを考えると、買い占めによって購買力の低い国が影響を受けたと言えるのでしょうか。(もちろん、価格によって暴動が起きている国がありますが、量のことを話しています)
どうやら輸出量と価格にはなんの関係性も見られないのじゃないかと思います。
在庫を切り崩せば輸出量など増やせるので、実際に需給が逼迫する可能性はあるのですが、実際には在庫が増えてますし・・・。
それとともに、「穀物価格の高騰は一過性のもの」というのは価格が安定していた05年水準まで戻らなければ証明できません。『飢餓国家ニッポン 』の著者は「間違いないのは、どんなに下がっても、過去の3ドルという水準には戻らないだろう」と書いてますから、ここまで下がればこの著者のいう「パラダイムシフト」は起こらなかったといえますね。
なので、これらの人たちの価格高騰論はいまだ否定できない段階なのです。
あと、私は価格高騰→需給逼迫ではないということをいいたかっただけで、需給が本当に逼迫すれば価格は上がるということは自然なことです。
あくまで08年の高騰についての話でした。
長々と続けても特に意味のある結論は得られませんが、一言。
「投機が入るとみんな台無し」
追記
これを書いた後読みました。
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私なんかが書かなくてもちゃんと詳細を書いてくれていますね。
しっかりした文でグラフなどと共に詳細が知りたい方は読んだほうが良いです。
・・・・ぱ、ぱくってなんかないよ!ほんとだよ!