二、三年前に年金のことについて話題になったことがあった。
「年金破綻」というキーワードがメディアで取り上げられることが多くなった中で、みんなが不安になった頃だ。
そのきっかけが、「年金未納問題」、「消えた年金問題」、あとはまぁ「年金機構の運用でマイナス問題」(これは運用してたら株価の暴落になったんだから当たり前)とか、テレビで追求されなかったことが私には不思議だった「国会議員が年金を未納になってたことがわかり、たぶん仕事がめんどくさいので謹慎と称して休んだり、辞任したりした問題」とかあったりした。

そのときに出版されてベストセラーになった本がこれだ。
「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った? ~世界一わかりやすい経済の本~ (扶桑社新書) (関係ないけど、悪レビューのところにだけコメントしている「雨音はショパンの調べ」というレビュアーはどうも著者なんじゃないかと思わずにいられない・・・へたくそなステマ)

確かに・・・未納者が増えても年金は破綻しない。
そりゃあそうだ。未納者はあとで受け取れなくなるだけなんだから。

でも、この本ってそれ「だけ」しか疑問解決してくれないんだよね。

二、三年前に「年金 破綻」とか、「年金 崩壊」でググると、だいたいこの本を根拠として、「年金は崩壊しない」という自称「メディアリテラシーのある」人たちが検索の上位に出てきていた。しかも、結構な数で、なぜかその文章の後に、「今の若者はケシカラン。戦争に行った世代は何もないところからこれだけの経済を築き上げたんだ。文句言うんならもっと頑張れ」という主張がくるケースがあった。話にならない。

ほかだと例えばググってみると、公明党らしき市議会議員のHPにあったPDFがあった。

年金は大丈夫です!

「現在の幼稚園児が実際に納める保険料より、将来受け取る年金額の方が、厚生年金で2.3倍、国民年金で1.5倍お得です」
「現在未納・未加入者は350万人ですから、公的年金全体の5%弱 なのです。
つまり、未納による年金破綻など起こりようがないのです。」
これは上の本をそのまま引用したものだろう。

後半を見ると、政権をとる前の民主党案の「税方式への移行」を批判するためだけに作った資料であることがわかる。

ま、それは現在撤回されているので気にしないとして。


あれから幾年月。現在同じワードで検索をすると、これらの主張は彼方に追いやられていた。
その原動力となったのは、政府が年金支給の開始年齢を68歳からに引き上げることを検討したからだ。
多くの反対意見が出て現在は立ち消えとなったが、「支給開始年齢の引き上げということは、百年安心といっていた試算が間違っていたということだ」という反応なのだろう。

たしかに「現在の幼稚園児は将来受け取る年金額は厚生年金が2.3倍」というのは、根拠が弱いだけでなく、これからの改正分を含んでいないために、もっと負担額が増えることも考慮されていない。
たとえば日経新聞の記事。

年金、50代半ば以下は負担超 27歳は712万円赤字(要会員登録)

これは企業負担分も含めたもので、また厚生年金と国民年金が一緒に計算されているらしい。
なのでそのまま鵜呑みにもできないのだが、「企業負担を除いて見た場合、自己負担がおおむね半分として計算すると、90年生まれの人の自己負担額は約960万円。年金受取額は1200万円強なので、まだ制度に加入する恩恵はある」ということなので、厚生年金は個人が払う金としてはマイナスになることはなさそうだ。
あくまでも保険料改定が考慮されない今の段階としてはだが。
また普通の国民年金としては収益がマイナスになるのは確かなようで、さらに夫婦二人ではない独身の場合はマイナスになるのは確実だろう。



上記の本が解決してくれなかった疑問は山ほどあった。
・未納者が受け取らないから年金財政が大丈夫って、じゃあその未納者はどうやって暮らしていくの?
・未納者が生活保護を受けるなら、国の財政が逼迫するんじゃないの?
・そもそも半分の国庫負担分はこのまま払い続けられるの?
・年金が破綻しなくても、国が破綻したらダメなんじゃないの?
等々・・・。


いわゆる「参考資料・反対意見」として私が手に取った本はこれだった。


社会保障の「不都合な真実」/鈴木 亘
 

もうずいぶん前に読んだ本なので中身を忘れてしまったが・・・彼のやっているブログでも同じ内容が頻繁に書かれている。

学習院大学教授・鈴木亘のブログ(社会保障改革の経済学)

鈴木氏のいうことを全て鵜呑みにするつもりもないが、年金財政に関してはある程度参考にするべきだと思う。

長くなりそうだ。続く。