賛成派と反対派の農業系学者の本を見た訳ですが、面白いことに(というかばかばかしいというか)「大規模化、専業農家重視で改革」派はそのまま賛成派に、「自給率が落ちたら大変、農家を保護」派がそのまま反対派になってるんですね。結局はTPPでも以前までの議論と変わりなく自由貿易か保護かの対立になっています。
農業学者が農業以外のことを持ち出して全て農業と同じ主張をするというところになんだか違和感を感じますが、「この問題ではこっち、この問題ではそっちが良い」っていう人ってタブーなんでしょうか。

とりあえず各論で賛成反対の行き違い主張をくらべてみましょう。

・脱退が可能かどうか
実際の手続きの際には①交渉参加②政府署名③議会批准④修正交渉要求⑤最終的に脱退するか、の五つの段階で脱退が可能、と報告書のPDFには書かれていました。反対派の主張ではアメリカのお偉いさんが「脱退を前提とするのはあり得ない」みたいなことを言ったこと、首相が考えていないと言ったこと(これも反対派は交渉ネタを最初にさらすなんてという非難がありましたが)を根拠に脱退できないとしていますが、私の感覚では民主党の中でも反対者がいること、ねじれ国会であることを考えると、議会での批准に拒否させることは可能なのではないかと考えます。

野田首相は「来年の消費税増税法案成立後に解散総選挙」と発言しており、まぁころころ意見が変わるのでこれも信用ならないですが、来年に解散するのならばもしかしたら来年は民主党政権ではなくなるかもしれません。
TPPはまだ参加前の交渉に入ると発表しただけの段階であり、来年中に交渉がまとまるとも思えません。
つまり、議会批准の段階では民主党政権である可能性が低いと私は考えます。
そうなるならば一番可能性が高いのは自民党ですが、こちらもどっちもどっち。玉虫色の発言をしながら批准へと突き進むのは容易に想像がつきます。
つまり、反対派には「解散総選挙での論点をTPPだけに絞る」戦略が一番効果があることになります。
世論調査では賛成派が多いとはいえ、「わからない」という人が一番多いのも事実。また来年も議論する余地が残されているように思います。

・参加でデフレ
これは間違いでしょうね。マクロ経済学的には食料品の価格が下がることはデフレとは言わない、でよいのだと思います。ただ失業者云々の話は数年して批准するかどうかの段階からしか判断できないと思われます。

・医療、混合診療の解禁
これについては賛成派は「交渉のテーブルに載っていない」としていますが、これから出てくることは十分考えられるでしょう。日本の交渉力をどうとらえるかですが、私はダメダメなんじゃないかと思っていますので。このPDFでは薬価問題は米豪FTAでの協議を例に出していますが、これは知的財産権の問題であり、厳しい方に基準が行くということを考えれば例外といえるかもしれません。ジェネリック薬はもうダメか?あと、混合診療はこれTPP無くてもどうせそのうちアメリカの圧力で導入が決まると思いますので、どっちでも関係ないように思います。

・ISD条項で日本政府がアメリカ企業に訴えられ、なすがまま
これは一番懸念されていると言ってもよいことですが、私の感覚では報告書の主張が正しいように思います。
そこまでひどい訴訟沙汰にはならないんじゃないかな。
  「例えば医療政策全般が外資企業への不当な措置と判断されることは考えられない。厳しい環境規制や食品の安全性規制でも外資に訴えられるおそれがあるという主張があるが、これらの規制が正当な政策・措置である限り、投資協定上問題とされることはない。~ISDS による補償は金銭賠償に限定する旨の規定を入れ、国際仲裁の裁定によって国内法自体の改正を迫られないようにしている」
とあるので、法律改正するほどのデメリットはないのではないかと。

・外国人労働者が大量入国
これは賛成派の報告書ではアメリカでの反対について言及してあり得ないとしていますが、すでにアメリカはNAFTAでメキシコ等からの単純労働者が大量に流入し、またそれによって出生率が維持されています。今後交渉のテーブルに載せられることは可能性としてあるのではないでしょうか。
そうなると、日本は魅力的な流入先です。単純労働者が日本人から置き換わることは考えておいてもよいでしょう。というか、TPPなんてなくても既に単純労働の外国人移行は進みつつあるので、これは反対しても遅かれ速かれというかんじでしょうか。


一番の問題は政府が何をどうしたいかが見えないっていうことですが、アメリカへのサービスとしてなら賛成する理由はないですよね。とりあえず、といった感じで私としては明確な理由を持ち得ないまま「なんとなく反対」のままという感じです。

次は農業分野を考えます。