自給率の問題は日本特有といってもよいでしょう。(韓国では話題になっていないようですので)
ジェームス・R・シンプソンという人はこれについて外国人で唯一?といってもよいかもしれない、日本の自給率を問題視している日本に住んでいた農学者の人です。
日本の自給率問題に関する本は2002年に
2004年に
ただ最初に断っておきたいのは、出版をしているのは「社団法人家の光協会」というJA(農協)のグループ会社だということです。
つまり、この本はJAの意向が入って著されているということを考慮しなければいけません。
私はJAを決して敵視しているわけではありませんが、これはこの問題について関与している業界の主張なのだ、と理解することは客観視する上で大事なことです。
自給率について著者は、食料の安全性、食料の確保のコントロールを日本自身でできないこと、等を考慮して自給率が低いことはリスクの高くなることだと考え、下がることがよくないと考えているようです。
その安全性について、一番危惧していたのはアメリカのBSE問題で日本が禁輸措置をとった問題に代表されているようです。
この問題は2002年に前掲一冊目を著した時には発生しておらず、その後二冊目で「ほら言ったじゃないか」という感じで詳細を教えてくれます。
自給率向上の理由については他の本と変わりませんが、著者が他と違うのはその手段です。
「日本農業の構造改革にどんなに努力しようと、日本の農業の高コスト体質を根本から変えることは不可能だ。単純に経済学的に考えれば、コスト高の日本で農業を維持する理由はない」「日本政府は~10年後に45%にすることを内外に宣言した。~結論から言えば、それは不可能である。とくに低迷している経済や財政の現状を考えると、日本は農業構造を改善し国際競争力を挽回するほどの多額の投資をすることはできない」
自給率向上は、日本の農業構造の改善によって果たされることは無いと断言しているのです。
つまり、自給率というのは関税率によって左右されることであるとして、そのほかのことは(この本では)考慮していないのです。
日本の色々な立場の人達が農政について提言している中で、このことは中々新鮮ですね。(JAとしては変えてほしくないのかもしれませんが)
そして、WTO(世界貿易機関)農業交渉でいかにして日本が他の国に理解してもらい、関税を下げないようにするかを一所懸命考えています。
そう、今ではあまり妥結の望みがないといわれているドーハ・ラウンドのことですね。日本政府は今後はFTA/EPA推進らしいですが。
他国の理解が大事だというのは、「自給率100%を目指す」などと言ったら、輸出国側から総スカンを食う(そんな表現はしてませんが)ということを言っているのです。「食料自給率100%を目指すべきだ」と言う日本人とは視点が違いますね。
「目標を政府として正式に打ち出すことはできても、そのために特別な関税を導入したり、輸入規制を新たに設けて、実際の食料輸入にストップをかけようとすると、それはWTOのルールに違反することになるからだ。私は、日本が置かれた特殊な環境に注目し、日本については、一定の種類の農業生産分野については保護する権利があり、同時に目標とする最低限の食料自給率の維持をめざす権利を認めるようにWTOのルールを修正するべきだと提案したい。」
二冊目では同じ論調なのですが、BSE問題がいかにして起きたかを詳しく知ることができます。
そして、問題の根本には政府が「問題が起こることによって業界が被る損失」を恐れたために、消費者が結局は被害を受けるということになった、ということがあります。
縦割り行政ももちろんですが、農水省は「業界保護」が本来業務であり、食の安全性に関わることには矛盾がある、という意味のことも言っています。
関税の件に戻ります。
「食料自給率をこれ以上下げないために必要な最低条件は、日本が次の三つのうち、一つかそれ以上を採用することだ。
(a)今回の国際貿易交渉において、農産物関税の大幅全体切り下げを回避する
(b)米や乳製品などの生産費用の高い農産物に対する例外規則を導入させる
あるいは(c)食料自給率の低い国々に対する例外措置を認めるよう規則を変更させる。
問題は、日本がどこまで非貿易的関心事項の支持を固めることができるかであり、非貿易的関心事項への支持が、どこまで効果的に反映されるかである」
「非貿易的関心事項」とは、食料安全保障や、食品安全・品質管理、農村地域の開発、田畑で生きる動物への配慮、など「多面的機能」を考慮するということです。
「食料自給率のなぜ」では多面的機能を自給率を上げるための理由としてあげていましたが、シンプソン氏はそれを外国との交渉に使うべきだと主張しているようです。
私は上がったからといって必ずしも「多面的機能」が保全されるとは考えていませんが、それを交渉に利用できるのならば頑張ってください、官僚さん。
関税については他の本ではほとんど取り上げられていませんでした(見た限りは、理由の一つである、というくらい)。
視点の違いというのは人によってこんなにも違うものなのですね。
つくづく一つの問題を多角的に見るのは難しい。
ジェームス・R・シンプソンという人はこれについて外国人で唯一?といってもよいかもしれない、日本の自給率を問題視している日本に住んでいた農学者の人です。
日本の自給率問題に関する本は2002年に
- これでいいのか日本の食料―アメリカ人研究者の警告/ジェームス・R. シンプソン

- ¥1,575
- Amazon.co.jp
2004年に
- これでいいのか食料貧国ニッポン―私たちの安全な食を守るには/ジェームス・R. シンプソン

- ¥1,575
- Amazon.co.jp
ただ最初に断っておきたいのは、出版をしているのは「社団法人家の光協会」というJA(農協)のグループ会社だということです。
つまり、この本はJAの意向が入って著されているということを考慮しなければいけません。
私はJAを決して敵視しているわけではありませんが、これはこの問題について関与している業界の主張なのだ、と理解することは客観視する上で大事なことです。
自給率について著者は、食料の安全性、食料の確保のコントロールを日本自身でできないこと、等を考慮して自給率が低いことはリスクの高くなることだと考え、下がることがよくないと考えているようです。
その安全性について、一番危惧していたのはアメリカのBSE問題で日本が禁輸措置をとった問題に代表されているようです。
この問題は2002年に前掲一冊目を著した時には発生しておらず、その後二冊目で「ほら言ったじゃないか」という感じで詳細を教えてくれます。
自給率向上の理由については他の本と変わりませんが、著者が他と違うのはその手段です。
「日本農業の構造改革にどんなに努力しようと、日本の農業の高コスト体質を根本から変えることは不可能だ。単純に経済学的に考えれば、コスト高の日本で農業を維持する理由はない」「日本政府は~10年後に45%にすることを内外に宣言した。~結論から言えば、それは不可能である。とくに低迷している経済や財政の現状を考えると、日本は農業構造を改善し国際競争力を挽回するほどの多額の投資をすることはできない」
自給率向上は、日本の農業構造の改善によって果たされることは無いと断言しているのです。
つまり、自給率というのは関税率によって左右されることであるとして、そのほかのことは(この本では)考慮していないのです。
日本の色々な立場の人達が農政について提言している中で、このことは中々新鮮ですね。(JAとしては変えてほしくないのかもしれませんが)
そして、WTO(世界貿易機関)農業交渉でいかにして日本が他の国に理解してもらい、関税を下げないようにするかを一所懸命考えています。
そう、今ではあまり妥結の望みがないといわれているドーハ・ラウンドのことですね。日本政府は今後はFTA/EPA推進らしいですが。
他国の理解が大事だというのは、「自給率100%を目指す」などと言ったら、輸出国側から総スカンを食う(そんな表現はしてませんが)ということを言っているのです。「食料自給率100%を目指すべきだ」と言う日本人とは視点が違いますね。
「目標を政府として正式に打ち出すことはできても、そのために特別な関税を導入したり、輸入規制を新たに設けて、実際の食料輸入にストップをかけようとすると、それはWTOのルールに違反することになるからだ。私は、日本が置かれた特殊な環境に注目し、日本については、一定の種類の農業生産分野については保護する権利があり、同時に目標とする最低限の食料自給率の維持をめざす権利を認めるようにWTOのルールを修正するべきだと提案したい。」
二冊目では同じ論調なのですが、BSE問題がいかにして起きたかを詳しく知ることができます。
そして、問題の根本には政府が「問題が起こることによって業界が被る損失」を恐れたために、消費者が結局は被害を受けるということになった、ということがあります。
縦割り行政ももちろんですが、農水省は「業界保護」が本来業務であり、食の安全性に関わることには矛盾がある、という意味のことも言っています。
関税の件に戻ります。
「食料自給率をこれ以上下げないために必要な最低条件は、日本が次の三つのうち、一つかそれ以上を採用することだ。
(a)今回の国際貿易交渉において、農産物関税の大幅全体切り下げを回避する
(b)米や乳製品などの生産費用の高い農産物に対する例外規則を導入させる
あるいは(c)食料自給率の低い国々に対する例外措置を認めるよう規則を変更させる。
問題は、日本がどこまで非貿易的関心事項の支持を固めることができるかであり、非貿易的関心事項への支持が、どこまで効果的に反映されるかである」
「非貿易的関心事項」とは、食料安全保障や、食品安全・品質管理、農村地域の開発、田畑で生きる動物への配慮、など「多面的機能」を考慮するということです。
「食料自給率のなぜ」では多面的機能を自給率を上げるための理由としてあげていましたが、シンプソン氏はそれを外国との交渉に使うべきだと主張しているようです。
私は上がったからといって必ずしも「多面的機能」が保全されるとは考えていませんが、それを交渉に利用できるのならば頑張ってください、官僚さん。
関税については他の本ではほとんど取り上げられていませんでした(見た限りは、理由の一つである、というくらい)。
視点の違いというのは人によってこんなにも違うものなのですね。
つくづく一つの問題を多角的に見るのは難しい。