以前自給率の定義についてつっこみを入れた際に、「実際の自給率を反映していない」というところは紹介しました。
「本当の自給率40%」を体現できていたなら、以前あったバターの在庫切れなどは無かったといっています。
今回はそれ以外の提言などを見てみたいと思います。
「さまざまな事件が起きても日本への食料輸出停止はなかった」とすることに対して、アメリカのハリケーン・カトリーナでは、「奇跡的」に事なきを得たのですが、当初は長期にわたる輸入ストップも懸念されていたことを例として出し、そういう事態は絶対に起こらないことではないと警告しています。
歴史的には、日本の自給率低下をアメリカの「相互安全保障協定」に代表される、小麦輸出政策によるものだとしています。
そして、日本の農業基本法にはそもそも理念が乖離していて、現実に即していないとしています。
また、畜産の飼料はJAが輸入元となって、また非効率な零細農家を優遇しているために現在の自給率に繋がっているということも指摘。
そして去年までの食料価格の高騰を以下にあげています。
・気候変動で穀物の生産量が低下
・原油価格の高騰
・原油価格を理由にバイオ燃料が増産
・中国、インド、ロシアなどで食生活が変化して飼料用穀物需要が増大
・投機マネーの穀物市場への流入
・穀物輸出国の輸出規制
そして価格高騰を抑えるのはきわめて難しいといっています。
また、農業を市場原理に委ねるのは農業経営の大規模化がかなわず、生産力を低下させている国の農家にとっては不利になるシステムで、農業の振興には消極的なのに減産した農家には積極的な保護策を講じているのは本末転倒だといっています。
ここで面白いのは、著者は輸出を推奨していないということです。
「食料自給率の低い国が輸出換金作物を増やすことは、限られた農地を疲弊させ、かつ食料自給率を低下させる要因となります」とのことです。
最初の前提であるカロリーベースの食料自給率は国が輸出を増やせば上がり、輸入を増やせば下がります。
その数字にこだわるならば輸出振興は正しいはずですが、これが著者の考える「正しい食料自給率」には貢献しないと考えているのでしょうね。
それでは、50%を確保するため(え、タイトルからずれとるやん)の提言を見てみましょう。
①種子の輸入をやめ、種子自給率を100%にする。
②食用大豆を100万トン生産する。
③小麦を500万トン生産する。
これで12%は上昇するとしています。
小麦と大豆は二毛作、数年ごとの田畑輪換を使って減反している休耕地の100万ヘクタールなどを使って達成できるとしています。
そして農業の生き残りには「高付加価値農業」を提案しています。
これには「水気耕栽培」によって生産性を三倍から十倍にあげ、ソーラーやバイオマスなどのハイテクを使って安定的に供給することで農地を拡大せずに自給率がアップできるとしています(これには疑問が残りますね。初期投資にどのくらいかかるのか、生産性がそんなに上がると保証できるのか)。
そして、「地方の再生」こそが重要であるとして、「地産地消」「四里四方」という言葉に代表されるように、地域自給率を上げていくべきだと主張しています。
また、その鍵は「中央卸売市場」ではなく、「農産物直売」にあるらしいです。(ここらへんは個々の包装や、流通過程についての提言が多いです)
最後に、箇条書きにしてある提案を見てみましょう。
・「地域で食べる食料は地域でつくる」本当の地産地消という意味で、らしいです。
・行政からの独立性を保って地域内自給を目的とした「地域農業活性化会議」を組織する
・会議の構成員は地域住民(生産者、消費者、流通、販売、メーカー、思郷民など)で構成
・「消費者本位の対策」(地域による農産物直売所の設営、運営)
・東京や大阪のような地域が高付加価値農業で「自立」すること
著者は法政大学の社会学部の人です。
他の本と違うのは、「生産者」からの視点で見ている、ということ。
必ずしも国単位のマクロ、または消費者目線ではありません(是非は別です)。
地域の振興には今までの農政は役に立たなかったことを批判し、農業依存を外国にしないことを求めています。
これは経済を考え、合理性を考えるとでてこないですね。
農政を考える学者さんらしく、お金のことをほとんど書いていません。
提案していることのほとんどは、お金をかけずともできることはあるのですが、基本的にそれがどのようにして可能になるかは書いていないんです。
著者には農水省の官僚や地域の農家の人から相談が良くあるみたいです。
今後は著者に提言していることの実現に向けて働きかけをしてほしいと思います。
「本当の自給率40%」を体現できていたなら、以前あったバターの在庫切れなどは無かったといっています。
今回はそれ以外の提言などを見てみたいと思います。
- 食料自給率100%を目ざさない国に未来はない (集英社新書)/島崎 治道

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「さまざまな事件が起きても日本への食料輸出停止はなかった」とすることに対して、アメリカのハリケーン・カトリーナでは、「奇跡的」に事なきを得たのですが、当初は長期にわたる輸入ストップも懸念されていたことを例として出し、そういう事態は絶対に起こらないことではないと警告しています。
歴史的には、日本の自給率低下をアメリカの「相互安全保障協定」に代表される、小麦輸出政策によるものだとしています。
そして、日本の農業基本法にはそもそも理念が乖離していて、現実に即していないとしています。
また、畜産の飼料はJAが輸入元となって、また非効率な零細農家を優遇しているために現在の自給率に繋がっているということも指摘。
そして去年までの食料価格の高騰を以下にあげています。
・気候変動で穀物の生産量が低下
・原油価格の高騰
・原油価格を理由にバイオ燃料が増産
・中国、インド、ロシアなどで食生活が変化して飼料用穀物需要が増大
・投機マネーの穀物市場への流入
・穀物輸出国の輸出規制
そして価格高騰を抑えるのはきわめて難しいといっています。
また、農業を市場原理に委ねるのは農業経営の大規模化がかなわず、生産力を低下させている国の農家にとっては不利になるシステムで、農業の振興には消極的なのに減産した農家には積極的な保護策を講じているのは本末転倒だといっています。
ここで面白いのは、著者は輸出を推奨していないということです。
「食料自給率の低い国が輸出換金作物を増やすことは、限られた農地を疲弊させ、かつ食料自給率を低下させる要因となります」とのことです。
最初の前提であるカロリーベースの食料自給率は国が輸出を増やせば上がり、輸入を増やせば下がります。
その数字にこだわるならば輸出振興は正しいはずですが、これが著者の考える「正しい食料自給率」には貢献しないと考えているのでしょうね。
それでは、50%を確保するため(え、タイトルからずれとるやん)の提言を見てみましょう。
①種子の輸入をやめ、種子自給率を100%にする。
②食用大豆を100万トン生産する。
③小麦を500万トン生産する。
これで12%は上昇するとしています。
小麦と大豆は二毛作、数年ごとの田畑輪換を使って減反している休耕地の100万ヘクタールなどを使って達成できるとしています。
そして農業の生き残りには「高付加価値農業」を提案しています。
これには「水気耕栽培」によって生産性を三倍から十倍にあげ、ソーラーやバイオマスなどのハイテクを使って安定的に供給することで農地を拡大せずに自給率がアップできるとしています(これには疑問が残りますね。初期投資にどのくらいかかるのか、生産性がそんなに上がると保証できるのか)。
そして、「地方の再生」こそが重要であるとして、「地産地消」「四里四方」という言葉に代表されるように、地域自給率を上げていくべきだと主張しています。
また、その鍵は「中央卸売市場」ではなく、「農産物直売」にあるらしいです。(ここらへんは個々の包装や、流通過程についての提言が多いです)
最後に、箇条書きにしてある提案を見てみましょう。
・「地域で食べる食料は地域でつくる」本当の地産地消という意味で、らしいです。
・行政からの独立性を保って地域内自給を目的とした「地域農業活性化会議」を組織する
・会議の構成員は地域住民(生産者、消費者、流通、販売、メーカー、思郷民など)で構成
・「消費者本位の対策」(地域による農産物直売所の設営、運営)
・東京や大阪のような地域が高付加価値農業で「自立」すること
著者は法政大学の社会学部の人です。
他の本と違うのは、「生産者」からの視点で見ている、ということ。
必ずしも国単位のマクロ、または消費者目線ではありません(是非は別です)。
地域の振興には今までの農政は役に立たなかったことを批判し、農業依存を外国にしないことを求めています。
これは経済を考え、合理性を考えるとでてこないですね。
農政を考える学者さんらしく、お金のことをほとんど書いていません。
提案していることのほとんどは、お金をかけずともできることはあるのですが、基本的にそれがどのようにして可能になるかは書いていないんです。
著者には農水省の官僚や地域の農家の人から相談が良くあるみたいです。
今後は著者に提言していることの実現に向けて働きかけをしてほしいと思います。