自給率を上げなくてはならないと主張する本は結構多くでています。
飢餓国家ニッポン―食料自給率40%で生き残れるのか (角川SSC新書)/柴田 明夫
¥798
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この本の著者は、丸紅の研究所所長で食糧問題などを研究する専門家として紹介されています。

農水省の末松氏の本よりも、需給の逼迫についての危機感が多くを占めている印象です。
穀物価格高騰についての分析は、他の本と特に変わった主張はなく、人口増大・「誰が中国を養うのか」・世界の穀物在庫が危機的・バイオエタノール・BRICsの発展など。
そして増産ができない理由として耕地面積が増えない・水不足で生産性が上げられない・窒素やリン酸の価格が高騰しているため肥料が買えない・温暖化、等。

著者の主張は、食料価格にはパラダイムシフトがあり、今後の高騰に備えて米も増産すべしというものです。
もともとの日本の農政には「米需要は増え続ける」という前提があり、これが失敗の原因だとしています。
そして新基本法にも、「「農業」の課題を達成するために農家に生産効率の向上を求めれば、「食料」の課題である安価な食料を安定供給するとの目標と矛盾する。また、「農業」の課題である生産効率を高めるために農家の大規模化を狙えば、「農村」の課題である多面的機能を確保することは難しくなる。この法は3つの目標を書き連ねているが、これを同時に成り立たせられるとは考えにくい」と、官僚の末松氏にはかけない分野にも踏み込んでいます。

そして減反調整で食糧生産を減らしていれば、不意の事態に対処できなくなるとして、米の増産を主張。

「一時的にコストがかかっても、国家の安全保障上必要との認識をもって、備蓄米を積み増したほうがいいと私は考えている。米国は原油や鉱物資源などの備蓄を「国家戦略備蓄」と呼んでいるが、同じ発想で国家的危機に備えることが必要だ」
この発言からもわかるように、彼は食糧安全保障のネオコンと呼んでもよい感じ。自分が自ら少数派だということも書いています。

そして、農協任せにしないこと、海外に対し「ミニマム輸出義務」を求める、といったことも主張しています。

で、なんかトリップしてきたみたいで、世界の飢餓などに関心を向け、グラミン銀行とか、成長と貧困対策はトレードオフではないとか、変な方向(失礼)にいったあと

・価格が元に戻ることはもうないから、企業も値上げを容認しろ
・大企業は利益を従業員に還元すべき
・耕作放棄地を企業や個人に開放しろ
・日本の「環境対応、省エネ、省資源」の文化を世界に広めよ

なるほど、食糧問題だけでなく、経済構造そのものを変化させなければ、日本が大変になるといっているようです。それには農政の大転換が必要だが、著者は農政転換の失敗は書いたがどうすれば農政改革ができるかは示していない。難しい問題のようですね。

これはamazonのレビューでも触れられていますが、著者は価格が高騰した時点でも国内の穀物価格は国際価格の3、4倍している事実に触れていません。コメの価格高騰をあげて国内備蓄を増やすべきだとしていますが、それでも価格差があるという事実をどう考えるべきでしょうか。(あがり続けるならばそれほど差もなくなるでしょうが、輸出ができるほど価格差をなくすには補助金を多くだすしかないですね)補助金と価格転嫁によって今でも米は高いですが、これによって実質の負担額は増大します。
現在借金大国となっている日本に農業の保護がこれ以上できるのかどうかも考えるときでしょうね。

最後の章の最後の一文。
「こうした努力の積み重ねで、経済成長率を現状の年率1%前後から3%に伸ばし、夢のある日本を築くべきである」
そっちのほうが難しいっつの!