臨床動作法とは,成瀬悟策によって開発された日本生まれの心理療法で,「動作」という身体の動きを整えていくことで心理的な問題や課題,不調を改善していく,とてもユニークな方法です。ちなみに臨床心理士第1号が成瀬悟策先生です。

 

1960年代,脳性マヒで腕が動かない方に催眠をかけたら腕が上がったという現象が発見されました。この現象について成瀬先生は「身体が動かないのは単に器質的な問題だけではなく,心理的な問題も関係しているのではないか?」と考えたそうです。

その後,催眠を使わないでも自分で身体を動かせるようになるための動作訓練(心理リハビリテーション)という方法が開発されました。

「動作」を使った心理的な問題への治療アプローチはさらに発展し,今では,動作法の専門家によって,心身症や適応障害などのメンタル不調の方,EAP(従業員支援プログラム),不登校や学校不適応で悩む子ども達,スポーツ選手,災害や事件事故によるトラウマ治療,高齢者の認知症予防,ひきこもり支援,心の健康促進地域支援など,幅広い領域で活用されています。

 

どういう場合に有効なのでしょうか?

 

誰でも,過去の体験や生い立ち,また家族や人間関係に大なり小なり何らかの葛藤を抱えているものですが,そうした葛藤による問題や課題に対して「言葉」による対話は大変役立つわけです。しかし,職場ストレスや高齢者支援など,中にはむしろそうした葛藤は扱わない方が良い場合もあります。

過去の体験や関係性も大切ではあるけれども,今ここでは,仕事に向かうための問題解決能力を高め,日常生活を送りやすい自分の心構えを整えよう,という場合に動作法が適しています。

 

なぜ適しているのでしょうか?

 

仕事でも日常生活でも身体を動かします。身体を動かすということは,動かそうとする意図があるのですからそれは心理的な活動なのです。だから人の「動作」には,「その人となり」が現れており,自分の「動作」と対話することで心理的な問題へもアプローチできるのです。「動作」を整え動かしやすくすることは,自分らしさを発揮しやすい心づくりでもあるのです。

 

心と身体の健康のために役立つ動作法。一般の方にももっともっと活用されるようになって欲しいものです。

 

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