毎月第2金曜日午後は、成人障がい者のグループレッスンがあります。

(近隣の障害者施設、あみすた園の方が通っていらっしゃいます)

精神障害、ADHD、ダウン症、自閉症スペクトラム、様々なハンディがある皆さんとのオイリュトミーは、レッスン後、いつも清々しさを感じます。

 

オイリュトミーを通して「音楽と言葉」の持つ神聖さと、溢れんばかりのエネルギーを感じると、

一人一人の心の奥底にある純粋な部分に触れられるからでしょうか。

 

あみすた園の方が、奏身舎でオイリュトミーを始めるようになって4年目、ゆっくりですが、確かな歩みを実感しています!

 

 

◉レッスンの流れ

 

●序としての手遊び

始まりは、椅子に腰掛け、まるい輪になっての手遊びや歌から。

なるべく、皆さんがリラックスし、ありのままの自分自身を出して、仲間と楽しめるように。

 

思うように話せなかったり、また、複雑なコミュニケーションが苦手だったりしても、あたたかな輪=和の中で、歌ったり、呼吸とともにボールを投げたり、手を動かして発声することで、調和したリズムでの「動作の会話」が生まれ、心が通じ合うのが感じられます。

心でハーモニーが感じられると、場が温かくなり、他者へのやさしい思いが心を満たします。

それは社会性を養う第一歩でもあります。

 

「動作の会話」は、単純な手遊びから、徐々に複雑なリズムや法則性のあるものへと変化するように導きます。

言葉によって秩序を生み出し、その秩序からが生まれるように。

秩序は思考にも働きかけます。

 

例えば、隣へ手渡す動きから、一つ飛ばしに投げて渡すと、5人だと美しい五芒星の形を描くことになります。

また、ゆっくりから徐々に早く、またゆっくりへとテンポを変えることで注意力が高まります。

 

このように変化をつけながら、序としての「歌や手遊び」の時間が終わると、

いよいよメインレッスンのオイリュトミーです。

 

ここからは立って、背骨を伸ばした動きが中心となります。

背骨を伸ばすことで、一人一人の内側にある「自我」=「意識」は、より目覚めた状態になるからです。

 

それは、直立歩行できる人間だけが持つ、特別な意識の輝きと言えましょう。

そこに、いろんなものを可能にする力が潜んでいるのです。

 

 

●魂の呼吸としての収縮拡散がもたらすもの

   ー躍動感と調和

 

まずは、懐かしいわらべ歌を歌いながらの収縮と拡散の動き

また、渦巻きのフォルムを内に入っては、外に出る動きの練習をします。

 

これで大きな呼吸を体験するのです。

この呼吸は鼻で吸って口で吐く、単なる肉体的なものではなく、いわば魂の呼吸と言えましょう。

みんなで輪を小さくしたり、大きくしたりを繰り返すうちに、

躍動感と調和が、自分の心で感じられるようになります。

 

まず心が動き、体が動く。 この順番がとても大切なのです。

 

そして、意識を足まで降ろせるように、母音子音で足を動かす練習をします。

 

母音のIAO「イーアーオー」という響きでは、上と下、真ん中を感じ、心身のバランスを調えます。

三つの母音の響きで、心と体を整えるのは、喩えるなら「楽器の調弦」のようなものでしょうか。

ただ、楽器(例えばピアノ)は、外から調律師さんが整えますが、

オイリュトミーでは、内側から自分自身で整えてゆくのです。

 

 

●確かな形が与えられると

  ー精神は目覚める

 

音や言の響きで、動きに確かな形が与えられると、

微睡んでいた一人ひとりの精神が目覚め、心が柔らかく拡がると同時に、グループ全体の一体感がよりイキイキ感じられるようになります。

 

そして、他者とのあたたかな繋がりを感じるとき、人は、孤独ではありません。

互いを認め合う場では、非難されることがないので失敗を恐れず、トライしようという前向きな気持ちが自ずと湧いてきます。

前向きになれるので、未知のことにもトライでき、トライして自信をつけることで、さらに前へ進む気持ちが生まれ、こうしてプラスの連鎖反応が起きます。

 

 

●分ける力を体験する

 ー真ん中を感じる

 

夏から練習している、音楽作品、ギロックの「フラメンコ」という音楽が、いま皆さんの一番のお気に入り。

 

好きな花は「一年中、真っ赤な彼岸花❗️」というT子さんは、

「フラメンコの曲💃に合わせて赤い服を着てきたの」と、最初から意欲満々です。

 

この曲では、カスタネットを叩くイメージで、はっきりと手拍子を左右に打ち、足も、左右の空間を動き分けます。

 

右、左、右、左、

そして

真ん中を意識する。

 

まっすぐな背骨で、左右を意識的に動くことで、(右左の区別が間違っていても構いません)

こちらとあちらという二つの空間の違いが感じられることが、まず目的なのです。

そうすると

自分の真ん中にあるセンターが次第に自ずと感じられるようになってきます。

 

センターを感じることは「自我」を感じること。

一人一人の自我の目覚めは、全体の中での調和した一体感をもたらします。

 

ハンディがある人のために、オイリュトミーで動く内容は、どんなものが良いでしょうか。

 

障害があるから、誰にでもできるやさしいもので良いのでしょうか?

楽しければ良いのでしょうか?

 

いえいえ、

決してそうでは有りません。

 

どの人も、本当は手応えがあるものを求めています!

 

●乗り越える喜びが、高貴な感情を生み出す

 

思考、意志、感情全てを用いて、自分をさらに乗り越えることを、心の底で望んでいます!

 

もちろんそれは楽なことではありませんし、最初は単純でやさしいものからスタートしますが、

徐々に、繰り返しながら、より洗練し、複雑なものへとチャレンジしていくのです。

 

前回は、こうだったが、今回はこんな風に動けましたね。

今度はこれを目標にしましょう! 

難しいかもしれないけれどチャレンジしてみませんか!

でも、疲れていたり、無理だったら、休んでみていても良いですよ

 

そう語りかけると、

ほとんどの人は、休まずにチャレンジされ、その後本当に満足した良い表情をされています。

 

乗り越える喜びは、高貴な感情を生み出すのです。

 

 

●魂の中にある神聖な部分

ーまどろんでいるが、どの人の中にも確かにあるところ

 

それは、シュタイナーも語るように、どの人の魂の中にも、まどろみつつも、神聖なものを志向する力があるからではないでしょうか。

そこにこそ、働きかけることが大切だと思うのです。

 

そういえば、いつも姿勢が悪くて背骨が曲がっている方も、この日は、まっすぐな背筋で、動こうとされていました。

 

また、最近入所され、初めてオイリュトミーに参加されたAさんは、言葉が話せず、思い通りにならないと自分の頭を打ち付けてしまう「強度行動障害」を持つ方でした。

しかし、手遊びを通して、リラックし動きと言葉が一致するのを感じてから、笑顔になり、

ピアノ演奏で音楽に合わせた動きが、どんどんできるようになりました。

「  Aさん、すごーい!」

皆さんも、支援員の人も、思わず拍手しました。

そしてAさんは、弾ける笑顔でハイタッチで応えます!!

 

 Aさんのこの日の笑顔は、私の心の宝物!

 

レッスンは、棒を使って空間把握やパッヘルベルのカノンでのリズム練習で締めくくりました。

 

放射状に置いた棒は、すぐに片付けるのが何だか惜しくて、しばらくそのままにして眺め、皆さんが帰ってから一人で片付けたのでした。

 

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季節は晩秋。

ですが、皆さんの心は熱く燃え、どこまでも高まるエネルギーを感じたのでした。

 

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円の中心に

ぽっかりとまぁるい

小さな空間、

そこにあるのは..?

 

人間の中の聖なるもの

大きな神の中の

小さな「私」

わたしの中の尊い光

 

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 渋谷 智栄子

 

 

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