●三つの言葉体験

 

言葉には、話し言葉書き言葉がある。

子どもは、まず話し言葉を習得し、その後、ひらがなや漢字などの文字を習得するように、ベースとなるのは音声による話し言葉だ。

(実はそれ以前の段階では、赤ちゃんが身振りで語る動きの言葉」がある)

 

プエブロインディアン、アイヌなどに代表される先住民族の多くは、長らく文字を持たない文明だった。

「アタマにではなく、ハートに響くように語る」ことを大切にしていたからだ。

古事記、平家物語、アイヌのユーカラ、グリム童話も、元来、文字ではなく口で語り伝えれた口承文学だった。

 

しかし、知的になった現代人には、どちらかというと、書かれた文字の方が信頼され、語られた言葉や肉声は、さほど重きを置かれていないようだ。

政治家も、口で言った都合の悪いことに対しては、「記憶にない」「忘れた」など無責任な態度を取る人が多い。

 

●話す音声の言葉にこそ、真実が込められている

 

しかし、先日行方不明の2歳児を発見、救出したボランティアの尾畠さんが「口約束も契約だ。」と語っていたのがとても印象に残った。(2018年8月)

「警察官が、法律みたいなのがあって、決まりだから渡してくださいって言ったけど、だめですと言った。
約束は守らないけんと思ったから、それを守らせてもらったんです。」

 

家族に対し「私が抱きしめて直にお渡しします」と約束していたという尾畠さんは、「口約束も契約。警察が“渡してください“と来たけど、“イヤです“と言った。言うたことは守る。なんぼ警察が来ようが、大臣が来ようが関係ない。」

 

この話す音声の言葉にこそ、真実が込められているという感性は、いささか時代遅れに見えるかもしれないが、実はとても大切だと思う。特に言葉を獲得し、心身が成長する子ども時代には

 

話し言葉からは、肉声の息遣いや声色を通して、語り手の感情がダイレクトに伝わってくる

メール文などの活字からは、それが感じられない。

文章を通して読み手が想像することはできるが。

 

子ども時代に、生きた音の響きや肉声で、信頼できる人と真心のこもったあたたかな対話をどれだけ交わしたか・・・

それによって言葉への信頼、人間への信頼、ひいては人間を超えた大いなる存在に対して、畏敬の念を抱けるかどうかが決まるような気がする。

 

赤ちゃんやハンディがあり、話せない人も、動きの言葉で、眼差しで、語っている!

 

また、生きた音の響きに耳を澄ますことによって、音楽的な耳が作られる

 

 

●言葉を正しく聴くことで道は開ける!

 

民話「やまなしもぎ」は、周囲が語る言葉=響きの中にこそ、真実が込められていること、

また、語られた言葉をしっかり聞くことで、道が開けることを教えてくれる。

 

「道」という漢字は、「首=意識すること」「辶=行くこと」から成り立っており、「意識して進むこと」を表わす。

 

言葉を正しく聞き取ることのできた三郎のみが横道にそれず、目的に向かって真ん中の道をまっすぐ進むことができた。

襲いかかる沼の主を退治し、ほかの兄弟を死の淵から救い出し、本来の目的である山梨をもぎ取り、病気の母に与え、病を癒すことができたのだ。

 

「正しく聴く力」は、まっしぐらに生きる力」に変化する。

それは、子どもの中の、本来の人生の目的に向かって歩み続ける能力となる。

 

人生百年時代を逞しく柔軟に生きていくためには、欠かせない重要な力ではないだろうか?

 

●言葉がもたらす魔法の力

 

聴く→話す→自分で考える、判断、決断する(自我が育つ)

 

これは言葉を話す人間だけが持つ、魔法の力と言って良い。

 

しかもこの魔法の力は、他者の言葉や周囲の音を、耳を済まし、能動的に聞こうとすることによって、初めて育つ能力である。

 

幼い子、障害を持つ子は、ほんとうの美しい言葉をたくさん聞くことで、やがて、しっかりした言葉を話し、その言葉で自ら考えることができるようになるのだから。

 

ぜひ、このお話は、目で文字を読むだけではなく、実際に言葉の響きやリズムを味わいながら声に出して語って欲しい。

そう、あたたかな心を込めて語って欲しい!

 

さらに動作言語のオイリュトミーで、全身を鼓膜にして動くと、もっと深いところで、心の耳を通して、聞こえてくるだろう。

 

大自然の語る言葉・・笹の葉、鳥、ふくべ(ひょうたん)、風に揺れる山梨の言葉が・・・。

 ♪ゆけっちゃ、カーサカサ ゆくなっちゃ、ガーサガサ

 ♪ゆけっちゃ、カーラカラ ゆくなっちゃ、ガーラガラ

 

      〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

オイリュトミー体験が全くない方も歓迎します。導入には、言葉と音楽の源、「歌」を使った手遊び、運動遊び、そしてリコーダーなどの素朴な楽器による音遊びをご紹介します。

その後、メルヘンをお遊戯のオイリュトミーで練習します。

活字では感じられない、言葉の律動と生命力をオイリュトミーで味わっていただけたら幸いです。

 

 

みんなのシュタイナー主催

「メルヘン・手遊び・アクティビティ」夏秋編 やまなしもぎ

日時:8月23日 10時半〜16時 

会場:大岡山北千束北自治会館にて・・リアル講座とオンライン講座(録画受講)

会費:7千円

お申し込み:manabukai2@yahoo.co.jp          

【告知】やまなしもぎ8/23「メルヘン・手遊び・アクティヴィティ 

・ Facebookイベント欄

https://www.facebook.com/events/569865627045254/

 

ソフィア教育芸術研究会

”いのちのリズム、言葉のリズム【ソフィア教育芸術研究会】”

 

ソフィア教育芸術研究会オンライン講座6/14

【告知】6/14オンライン講座「障がいのある子、困難を持つ子にふさわしい言語体験とは?」