クラシック音楽と食べ物と。。。

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ヨーロッパでの生活を振り返るブログ。

今回は、2016年3月のベルリンからです。

この日は夜のコンサートに間に合うように、夕方ハンブルクから移動しスタバで時間調整。

フィルハーモニーの近くには何件かスタバがあるのですが、1軒は閉まっていて、もう一軒は満席、3件目でなんとか入れました。マーマークーヘン(マーブルケーキ)とカフェオレ頼んで、本読みながら時間つぶします。

 

今日は、シュターツカペレ・ベルリンのコンサートです。ベルリン国立歌劇場を本拠地とするオーケストラですが、たまにフィルハーモニーでも演奏会があります。

 

指揮はダニエル・バレンボイム。そして、ソリストとして、ヨーヨー・マが演奏します。

 

<本日のプログラム>

ドボルザーク: チェロ協奏曲 ロ短調 Antonín Dvořák: Cello Concerto in B minor

エルガー: 交響曲第2番 変ホ長調 Edward Elgar: Symphony No. 2 in E flat major

 

ドボルザーク: チェロ協奏曲 ロ短調 Antonín Dvořák: Cello Concerto in B minor

ドヴォコンと親しまれるドボルザークのチェロ協奏曲。彼がニューヨーク・ナショナル音楽院の院長を務めたアメリカ時代の終わりに書かれた曲で、1894年末から1895年初めにかけて書かれています。1892年アメリカへ渡ったドボルザークは、「新世界より」、「アメリカ」などを完成させますが、強い望郷の念に苛まれ、このチェロ協奏曲を書いた後、院長職を辞し、故郷へ帰ってしまいます。

力強く、美しいメロディーにあふれるこの曲は、一度完成された後、第三楽章が大きく改訂されています。ドボルザーク初恋のヨセフィーナ・カウニッツ伯爵夫人が重病になり、そして亡くなってしまいます。彼女への想いをこの曲に託したとも言われています。実際に、この曲の依頼者でチェリストのハヌシュ・ヴィハーンが、ソロパートが難しすぎるとの理由から修正を依頼していますが、ドボルザークは「1つも音を変えてはならない」との書簡を送り、初演者をレオ・スターンに変えてしまったほどの強い想いがこもった曲のようです。
本日のソリストは、ヨーヨー・マ。音楽界の重鎮の一人ですが、なんだかひょうきんな人で、舞台に出てくるときも、舞台に(なぜか落ちていた)ハンカチ拾って、「これ誰のっ」てやっていました。自分のポケットから自分のハンカチ出してみんなに見せ「僕のはあるよ」と見せたり。演奏が終わった後も、気さくな感じで、いろんな人と握手したり、観客の拍手に応えたり、なんだかおもしろい人って感じでした。
個人的に感じたのは、音のすごさをアピールするでもなく、泣くチェロでもないのですが、何故か引き込まれていく、そういった演奏でした。技術的に本当にすごい人だと思うのですが、そういったところを一切前面に出さず、ひたすら音楽に真摯に向き合って、素直に音を紡いでいく。そんな演奏に思わず引き込まれてしまった、という感じです。
 

エルガー: 交響曲第2番 変ホ長調 Edward Elgar: Symphony No. 2 in E flat major

エルガーと言えば「威風堂々」、「エニグマ変奏曲」、「愛の挨拶」なども有名でしょうか。「威風堂々」は、ロンドンで毎年行われるプロムスで初めて演奏されたとき、何度もアンコールを受け、今でも、プロムス最終日には観客全員で大合唱を繰り広げるほどの曲です。
今日演奏された交響曲2番は、1910年から1911年にかけて作曲された曲です。既に世界的な名声を得ていたエルガーですが、この2番の初演は散々な結果だったようです。エルガーの支援者であったイギリス国王エドワード7世が1910年5月に亡くなり、その追悼のために作曲されています。初演は1911年5月ロンドンのクィーンズ・ホールでエドガー自身の指揮で行われましたが、演奏が終わった瞬間、観客は呆気に取られほとんど拍手も起こらなかったということです。エドワード7世の崩御によって先行きに不安を持つ聴衆が期待した前向きでストレートな曲に対し、この曲は少し難しかったという評価などがされています。個人的には、当時の聴衆には少々情報量が多かったのではないかという説に一番納得しています。
その後、1920年3月にエイリアン・ボールトの演奏が大成功に終わり、この曲が大きく評価されるようになります。しかし、この演奏会は、エルガー最愛の妻アリスが生前最後に聞いた演奏会と言うオチがつきます。
現代でも1番に比べると演奏機会が少ないようですが、エルガーらしい心に染み入ってくるようなフレーズがちりばめられていて、そしてそれが最終楽章に集大成していく素晴らしい曲です。
シュターツカペレ・ベルリンの演奏も素晴らしく、美しく素晴らしい弦楽器のアンサンブル、そして作曲者のハードな要求をものともしない金管が、この曲をしっかりと支えていました。ところで出演者の顔を見ていたら、なんだか見たことのある人がチェロ弾いています。先ほどまでソリストやっていたヨーヨー・マがオーケストラに混ざって、シラっとチェロパート弾いていました。
 
今日も素晴らしい演奏が聴けて感謝。
帰りはベルリン中央駅までタクシーで移動したのですが、タクシードライバーの女性が「自分のピアノの先生が今、日本にいて、今度2週間ほど日本へ行くのよ」と言って、ガイドブック見せてくれたり、音楽の話などで盛り上がりました。モーツァルトとチャイコフスキーが好きらしく、モーツァルトの曲歌ってくれました。世界中に音楽が好きな人たちがいて、知らない人でも音楽の話ができて、なんかこういう時って幸せな感じがします。