京都は祇園祭りに参ったのですが、熱い感動をしたためるにはドタバタし過ぎ、そうこうするうちに日々は流れ、今日のところは本日ライブで体験したホカホカの思いをしたためることにしました。


アカデミー・デュ・ヴァン名誉校長、スティーブン・スパリュア氏による創立20周年記念特別セミナー「世界を変えたテイスティング ~パリ対決をめぐって」を、本日受講して参りました。





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1976年、世界中のワイン関係者を震撼させた事件が起きました。

アカデミー・デュ・ヴァンの創立者スティーヴン・スパリュアが主催したブラインド・テイスティングにおいて、当時まったく無名だったカリフォルニアワイン2銘柄——スタッグス・リープ・ワイン・セラーズとシャトー・モンテレーナが、バタール・モンラッシェ、ムートン、オー・ブリオンといった最高のフランスワインを打ち破ったのです。

米国タイム誌の特派員ジョージ・テイバーは、有名なギリシャ神話の挿話になぞらえて、『パリスの審判  Judgment of Paris』という記事をすぐさま発表します。

テイバーの記事は、大きな興奮が込められた次の文章で始まっていました。

「考えられないことが起きた。カリフォルニアがフランス勢をことごとく打ち倒したのだ……」


デュ・ヴァンのサイトより抜粋)

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てなワケですが、この結果はもう凄まじい程のフランスワイン文化に対する冒涜であり、フランスワインがあんな熱いメキシコの北隣の新興国のワインなんかに負ける訳が無いと、多くの生産者、評論家、コンサルタントを巻き込む大騒ぎになったそうです。

映画「笑の大学」に出て来るような、「チャールズのにぎった寿司が食えますか?」や、あの無敵だった小錦が、どんなに頑張っても横綱にはなれなかった、そんな話と似たようなところではないでしょうか。


ちなみに仕掛人のスパリュア氏は、フランスワインが勝つようにとワインをセレクトしたつもりだったとのことですが、何故か目論みが外れたと。

審判員はほぼ全員フランス人。
彼らは恐らく「こちらがフランスワイン」と思い込んで高得点を付け、その驚くべき結果に慌てふためいたのだとのこと。


ところでこのストーリー、ハリウッドで映画化されるそうです。

主役のスパリュア氏を演じるのはヒュー・グラントとか、ジュード・ロウとか、「いやいや、もっと無名若手になる筈」(スパリュア氏の謙遜)とか。



さて、あれから31年経った『表参道の審判  Judgment of Omotesando』(司会進行の葉山考太郎氏命名)は如何に?

ブラインドテイスティング、試飲ワインは以下の通り

① Château Léoville Barton 2002(ボルドー)
② Stag’s Leap Wine Cellars SLV 2003 (カリフォルニア)
③ Errazuriz Viñedo Chadwick 2002(チリ)
④ Manns Wines Solaris Higashiyama Cabernet Sauvignon 2002(日本)





(以下、私なりのテイスティングコメント)


1、超ピーマン&ほぼ「タール」の香りと味、余韻も然り。
  青く、苦い程の凝縮主体で深淵さはまだ感じない。
  飲み続けるには困難だが、長持ちしそう。
  ハーラン等にある濃いーっ感じを得て、カリフォルニアと判断。

2、ちと動物的、しかし複雑且つ凝縮しておりバランスが良い。
  程良いブレタノマイシスを有することができるのは、
  旧世界でもフレンチはメドックに限ると一瞬で判断。

3、ジャミーでやや単調な香り。香りには固さが全く無い。
  ココナツやコーヒーの香りがアメリカンオーク由来を連想させる。
  味わいは香りから連想する印象より、凝縮してバランスも良い。
  概してエレガント。
  でも、1がカリフォルニアならばナニモノか?と不明。

4、カベルネだとすると腑に落ちない香り。
  クランベリーのような酸味の強いベリーの香りが主体で、
  私にとっては全くファミリアーでは無い。
  受験時に飲んだマスカットベリーAにも通じる独特の茎っぽさ?
  ならば飲み慣れない日本のカベルネかしら??と判断。


そして解答

1、日本、Manns Wines Solaris Higashiyama Cabernet Sauvignon 2002
  (ええーっ?!)
  私はマンズをハーラン的だと思ったのか?!
  でも、カリフォルニアでピーマンは違うか~と反省。
  しかしマンズワイン、全く侮れません。
  あの凝縮が熟成するとどんなことになるやら、楽しみであります。

2、ボルドー、Château Léoville Barton 2002

3、カリフォルニア、Stag’s Leap Wine Cellars SLV 2003
  改めてみてみれば、やはりカリフォルニアらしい。
  Stag’s Leapは一般的なカリフォルニアワインより
  ずっとエレガントなのだと初めて知りました。

4、チリ、Errazuriz Viñedo Chadwick 2002
  これで1本13000円もするのかいな。

  
さて、『表参道の審判  Judgment of Omotesando』的な判決は、

高得点順に、

1位、カリフォルニア、Stag’s Leap Wine Cellars SLV 2003
2位、フランス、Château Léoville Barton 2002
3位、チリ、Errazuriz Viñedo Chadwick 2002
4位、日本、Manns Wines Solaris Higashiyama Cabernet Sauvignon 2002

(ちなみに私は、2位、1位、4位、3位の順で好きでした)



テイスティングが終わった後の質問コーナーで、

「ワインに対する味覚を鍛えるにはどうしたらよいでしょうか?」

という質問が出ました。

葉山氏がニヤリと笑い、小声でスパリュア氏に "Just drink!" と囁いておられたのをキャッチ(笑)

スパリュア氏はちょっと笑った後、真面目に

「これはマイケル・ブロードベント(超有名ワイン鑑定家)のやり方ですが、飲んだワイン全てに付いて記録をし、脳にその記憶を残すことです。それをマメにすること」

と言っておられました。



先ずは好みの偏りを排除して Just Drink、そして記憶に残すよう、味覚の鍛錬を意識することでより深くワイン道を楽しめる。

ちょっとばかりの記憶と先入観で下した決断に改めて反省をしつつ、ワインに対する思いを新たにした土曜午後でありました。