自由に選ぶ権利を与えられた時、人は初めて「自分の得となるか、損となるか」を真剣に考えるのではないでしょうか。



先日、オランダの赤線地区の一般公開日が大盛況だったという記事を目にしました。

800年の歴史を誇るこの地区は、美術館や博物館、マリファナの喫煙や売買を売りとするカフェと並び、アムステルダム特有の人気観光スポットです。



10年近く前にアムステルダムを訪れた時、地元の人は空港でもマリファナを吸っているのだと思い込んでいた私は、現地に住む友達に笑われました。

「やっていいって言われたら、人は案外慎重になるものでしょう」

その考え方、住民をきちんと大人扱いしていると感じ、非常にしっくりと納得。

こういうことを「ソフィスティケイトされている」というのではないかと。

ちなみに彼女の大学の友達の中にもマリファナ常用者は皆無とのことでした。





ところで、アムステルダムの数々のカフェで扱っている「スペースケーキ」についてはご存知でしょうか?

マリファナを混ぜ込んだケーキで、喫煙と同様の酩酊効果が得られ、美味しく頂いて宇宙にイッちゃうのだそうです。

相当興味があったものの、健全な友のナビゲートのもと、滞在中最後までお目にかかれることはありませんでした。



さてさて、昼間はこんなに可愛い街も、


 民家の窓辺、リリヤンの編み棒ディスプレイ


夜の街の例の一角はこんな顔。




狭い街に濃い文化が混在していて、深く知ろうとすればするほど、きっとどこまでもいってしまうのでしょう。



濃いといえば、あの時、素晴しく濃いアートな食空間にお邪魔したのでした。

伝説のドラーグパーティが繰り広げられた『サパークラブ』。





この裏路地の重いドアの奥(ブザーを押して入ります)、客は同時刻に訪れるように指示され、長く暗い廊下の果てに突如現れる小規模な体育館大の細長いスペース、そのまた奥に厨房を発見。





全体を囲むように2段ベッド状にマットレスが敷き詰められ、靴を脱いで各々座り込みます。





広間の中央に、天井から吊るされたサンドバック状の白い袋が、たまに上下したりして皆の恐怖を煽ります。

厨房には太ったおばさんが、時おり火を噴いたり皿を割ったりしながら料理ショーを展開します。





彼女が作る「意外にも」美味しい料理を、私達は寝転びながら食べるのです。

しかし、配給のようにホイホイ配られるので、少々エサ状態。




それはそれで、非日常感を増長します。




ドリンクメニューもアートな趣き。


客は徐々にハイになり、フロアに出て踊る人、キスをする人、その横で何故か靴磨き職人が控えており、靴磨きをして貰う人。




一階に座していた私達の目の前の眺めも、徐々にこの様に……。





満腹になり、酔っ払い、客の気分が最高潮に達するころ、天井からぶら下がり続けていた謎の白い袋が、目に見えて高さを低くしてきました。

「破裂するのではっ!」

皆が固唾を飲んで見守る中、大きな刀を持って現れた白ヘルメットの男が、いきなり袋に刀を突き立てる。


すると。





ボタボタボタッと、袋の下に設置されたバケツの中へと白いヨーグルト状の物体が滴り落ち、

な、な、なんと、それが私達のデザートなのでした。



 気持ち良く踊っていた裸オヤジも呆然。


「す、すごい演出……っ」

それ以上は絶句しておりましたが、あれほど強烈な食体験の記憶は、あれから長い年月を経た今に至るまでにも、他にあまり類を見ません。



今も健在なのであろうか、サパークラブ。

流石アムステルダムな演出。

あの体験は、私にとってはまさしく「パーティ」でした。

集う皆が同じ感情を共有し、そのエッセンスを完全にお持ち帰りできた稀に見る成功例。


また訪れてみたいとも思いますが、同じ感動は二度とは得られないことでしょう。