
三月最終金曜日。
恵比寿ガーデンホールで、ラッド・ミュージシャンの秋冬コレクション。
「音楽と服の融合」をテーマに表現し続けるブランドだが、今回のショーは驚くほど長いランウェイに、今更ながら徹底的にストーンズ。
猛烈な情熱と退廃のパラドックス。
いつも心骨削って創作している姿勢は、デザイナーと接することで窺い知れる。
服は繊細できれいなのに、今回のタイトルは恐るべき破廉恥さである。
(ココには書けません。そもそも、雑誌に書けるのだろうか?)
でかでかとタイトル名が描かれ、デザイナー自ら撮影したトンデモナイ・グラフィックがあしらわれたスタッフTシャツは、「要るか?」と問われて「イラナイ」と即答する。
バックステージ。
紙コップのシャンパンが配られる中、ショーが無事引けてハイになったモデルがテーブルの上でドンペリをラッパ飲みする姿などを傍観する。
部屋の奥の、人垣のそのまた奥に、サングラスをかけたままでひっそりと微笑むデザイナーをみとめる。
目の前ではVJ宇川直宏氏が、森美術館で予定されている個展で「人工ハリケーンを作る。んで、舞い散る札ビラが顔に当たる」というぶっとんだ構想を披露されていた。
いつも、「よくそんなこと考えつきますね」とドン引きしがちなセンス。強烈。
長い歴史の中で「本流」とされるものがあって、一方「サブカルチャー」と認識されるものがあるけれど、ある程度のコンセンサスを得られればサブも文化となって成就するわけだ。
だって、森美術館デスヨネ?
その宇川氏の奥様から頂いた愛犬のステッカー、抱いているのは最近ホットな某県知事。
「だって私、あちらの出身で」とおっしゃるが。
どういうネットワークですか。
私の横にデザイナー妻の親友の美人女優。
やや緊張しながらつらつらと話すうちに、「よかったら」と渡されたカード。
表ど真ん中に「美神伝心」というオリジナルなワード。
「す、凄いな」と思いつつ、このお方は自らの人生の中で美の伝授と美貌の表現に真摯に取り組んでおられることを思い出す。
そんじょそこらの「キレイな人」ではない。
「なるべく毎年一冊本を出すことにしているの」と前に聞いたことがある。
「最近DJ始めました」とも聞いたことがある。
私より年上である彼女は、その象牙のような肌も含め、30センチの距離でじっくり眺めても恐い程に美しい。
そして、アグレッシブで賢い。
こういう女性ならば、言葉はキライだが「イイオンナ」という表現もしっくりくる感がある。

その後、女達だけで飲みに行く。
桜満開の店内。
アルゼンチンでのロケ仕事がキャンセルになって、コレクション鑑賞がかなったデザイナー妻は、
「ゴールデンウィーク中にキモノ着てDJやるから来てね」
と、相変わらずのパワフルさである。
義妹に旦那の所在を訊くと、「アムステルダムかミュンヘンかその辺」と答える。
「おたくは?」と訊かれて、「送別会らしい」と答える。
三月の最終金曜日。
サラリーマンは忙しい。
そして世は東京ミッドタウン開業。
どんなカタチでも、表現することをやめてはいけない。
明日から四月です。