今年の9月、太陽で強力なフレアと呼ばれる現象が発生していたのをご存知でしょうか?結局この時は地球に大きな被害はなかったものの、時としてフレアは私たちの生活に甚大な被害を与えかねないため、多くの研究者たちが太陽を注意深く観測していました。今日はその「フレア」のお話です。

©NASA/SDO 

 

まず、フレアとは一体何でしょうか?

簡単に言うなら「太陽表面で起こる大規模な爆発現象」です。

もう少し詳しく説明しましょう。太陽の表面には非常に強力な磁場があります。磁束密度はフェライト磁石と同じくらいです、と言うと大したことないようにも思えますが、半径7億kmの球の表面に磁石がびっしりと並んでいる様子を想像すると…なかなか怖いですよね。そして、太陽の表面は「差動回転」と呼ばれる自転の仕方をしています。差動回転とは、緯度によって自転周期が異なるような自転様式のことで、実際太陽の赤道域の自転周期は約25日、極域の自転周期は約30日です。この差動回転によって、太陽表面では磁力線が引き伸ばされ、ところどころ磁力線同士が接触して磁気リコネクションと呼ばれる爆発現象が発生します。このときに様々な物質が放出されるのがフレアと呼ばれる現象なのです。

 

フレアが発生すると、まず太陽からX線が放出されます。下の図は今年の9月10日に太陽から放出されたX線の量を示したものです。16:00UT(UT≒旧グリニッジ天文台の時刻)頃にX線の量が急増しているのが分かりますね。X線が太陽を出てから地球に到達するまでに8分かかるので、フレア自体はこのX線の急増の8分前に起こっていたことになります。

©NICT 

 

フレアの際にはX線以外にも大量のプラズマ粒子が放出されます。プラズマとは、陽子や電子などの荷電粒子がビュンビュン飛んでいるような状態のことです。放出されたプラズマ粒子は約2日かけて地球へ到達し、地球に様々な影響を及ぼします。まず、低緯度帯でもオーロラが見えることがあります。江戸時代には本居宣長が松坂でオーロラを目撃したという話もあります。2003年に起こった巨大フレアの際には北海道など北日本でオーロラが観測されました。オーロラが見えるだけなら良いのですが、プラズマ粒子は私たちの生活に甚大な被害を及ぼすことがあります。プラズマ粒子は電気を帯びているので、電磁石と同じような感じで磁場を作り出し、地球の磁場を大きくかき乱します(磁気嵐)。すると今度は電磁石の逆の電磁誘導により、地上の電線に大電流が生じることがあります。カナダのケベック州では変電所の変圧器が過電流で破壊されたこともあるそうです。また、磁気嵐によってインターネット回線やGPSに必要な人工衛星が機能しなくなってしまうこともあります。

 

以上、かなり不安を煽るようなことを書きましたが、実際はフレアが起こってもX線やプラズマが地球とは異なる方向に飛んでいく確率の方が高いですし、地球に到達したとしても大きな被害が出ることは稀です。

とはいえ、このようなことが起こる可能性がある以上、何らかの対策はしなければなりません。天気に天気予報があるように、宇宙に対しては「宇宙天気予報」というものがあります。NASAのSOHOやSDOなど、宇宙天気予報を担う人工衛星がいくつかあります。

©NASA/SOHO, ©NASA/SDO 

 

例えば、X線はフレア発生後、地球に到達するまで8分程度ですが、一方でより大きな被害を及ぼすプラズマ粒子は到達に2日程度かかります。従って、太陽から放出されるX線の量を観測すればフレアによるプラズマ粒子の到来を予測することが可能なのです。ちょうど緊急地震速報がP波とS波の時間差を利用しているのと同じことです。個人で対策することは難しいですが、さらに早い段階でフレアの発生を予測できるようにしようという研究が現在進んでいます。

 

ではでは、今日はこの辺で!

 

 

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