フィリップ・K・ディック著「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」を読んだ。とても面白かった。この本が1968年出版ということにも驚いた。私が読んだもので91刷りということで、半世紀経ったいまでも読まれる興味深い本であった。

 この本を読み始めたのは、知り合いのおすすめがあってからである。この本の存在は、前からうっすらと知っていたがあまり興味が惹かれなかった。しかし、シュレーディンガー著「生命とは何か」を読んだ流れで、自分の根本的な疑問集の中に、「人間性」というものが入ってきた。これを知り合いと話し合ったところ、ちょうどこの本が話題になった。

 読み始めてまず初めに気に入ったのが、静寂と孤独に対する異様なまでの細かな描写である。静寂を表現するのに十三文もを割いている。読み進めたら分かることだが、「人間性」というものがこの静寂と孤独に深く関わっている描写が多く見られるようになる。これこそ作者の描きたかった人間とアンドロイドのコントラストだと感じたし、臨界部であるとも思った。

 世界観がとにかく暗くディストピアそのものであった。この空気感を楽しみたい方、周囲の疑心暗鬼に振り回されたい方、こういった人にとてもおすすめである。