周木律著「眼球堂の殺人」を読んだ。まぁ、面白かった。一般に、エウクレイデス呼びの方がユークリッド呼びより知られてるのだろうか。数学界隈ではユークリッド呼びの方が一般的だと思うのだが。まぁ、別段どうでもよいことだとは思うから、そこまで気にしていない。ゲーデルの不完全性定理はこの手の本では必ずと言っていいほど人気なトピックだろうし、実在の物理学者に南部陽一郎をもじった登場人物も出るしで、本書はこのよようなトピックでお祭り騒ぎであった。

 解法を思いつくまで、軽率のことを言えない数学好きあるあるが探偵役にもしっかり当てはめられていて、共感できた。少しデフォルメするにしても過剰ではないかと思う側面もあったが、それを受け入れられるのであれば、楽しんで読むことができるのではないだろうか。

 この本を手に取った理由というのが、タイトルを読んだとき本文を読む前にこんなトリックがあるのではないかと思って、答え合わせがしたくなったという出発点にある。(ちょうど、感覚器官の勉強をしていたのもあるかもしれない。余談だが、イカとか多足類の視覚には、哺乳類の視覚と違って盲点が無いらしい。発生過程がちがうとのこと。)

 ハッキリ言って、この本は好き嫌いが明確に分かれるような内容であった。お世辞にも文章から文才は感じられなかった。しかし、この作品はデビュー作品でもあるので、後の作品でどのような経過をたどっているのか気になるものとして感想とする。