立川志ん朝選・監修「古典落語100席」を読んだ。面白かった。一冊で100席も落語噺に触れられるのかと閉店間際の八重洲の本屋で見つけて買った本。まさか、春に買った本を遂に冬に読み終えるとは。

 先に書いたように、手際よく楽しめて、日常の小話も収集できるという煩悩から手に取った本。面白い話もあれば、面白くない話もある。面白くない話は、実際に噺を直に聞く方が良いのだろう。だが、不思議なことに面白くないと感じたとしても、この本を少し飽きたからと諦めるようなことは起こらなかった。後々考えれば、100席を一気に読み切ってしまおうという試みが間違いであったのだ。

 最近では、典型的なおじさんの話や、おバカな奴の話、近所話が会話に挙がることが少なくなったように思われる。そう言った日常スケールで共有できる「あるある」というものが、インターネットの登場ですでに出きってしまっているような気もする。ただ、その「あるある」も面白いように切り取るよりも、非難という形で出て来ることが多いのではないか。何でもとはいかないだろうが、面白噺に変える心の余裕を身に付けたいとこの本を読んで思った。