平成二十七年十二月十七日(木)・晴れ。
難波にある「大阪高島屋・友の会」が主催する木彫教室へ教えに行く。
三十年ほど前は、募集定員六十人の講座が午前、午後とも満杯になったものだ。それが今は午前の一講座のみで、人数もわずか十数名。昔の栄華、今いずこ。原因は新聞社、NHKなど、カルチャーセンターが乱立したことによるのだろう。もちろん私の無能さにも大いに責任はありますです。はい。
「先生、失礼なものを差し上げて、お役に立ってます?」
生徒のNさんが聞いてくれた。
木彫の工芸作品は最後に透明のラッカーで艶出しをする。ものによっては筆を使うより、ボロ布に含ませて拭いた方がきれいに仕上がる。その布だが、化繊系はとけてしまってダメ。絹はつるつるで用をなさない。毛も使えない。綿に限るが、タオル地は滑りが悪くて使いにくく、白い肌着がベストだ。
一年ほど前に夫を亡くしたNさんが、「主人の入院中に買ったのが、いくらかあります。よろしかったら」と半そで、長そでの肌着を十枚ほど送ってくださった。みんな新品のようで、着てみるとサイズもぴったりだ。私は自分の肌着の方をそっくりボロに下ろした。まさにお役に立っているのだが、真相は話さずにおいた。
12時半に授業が終わり、地下街にある天丼の専門店に行く。ここは旨い、安い、速いの三拍子が揃っている。海老が三匹入った「並天丼」が390円。備え置きの紅生姜は食べ放題。七味唐辛子、かけ放題。水、飲み放題。
いつもはこれですますのだが、きょうは生徒さんたちに年末の心づけをいただいたので、「上天丼」にする。海老が二匹とキス一匹、南京、さつま芋、レンコン、しし唐が入って540円。130円出すと、三種類の漬物と赤出しのセットが付く。まだまだ散財するぞ。温泉卵が80円。丼に混ぜると、「うまいんだな、これが」。〆て750円也の長者ぶり。
食事の後、近くのチケット・ショップへ割り安の乗車券を買いにいく。自宅の最寄り駅から難波まで920円かかる。それが880円で買える。店は買ってきた回数券をバラ売りするらしい。
また10時~16時の間に改札を通ると、時差キップとやらで820円になる。さらに南海電鉄の株主優待券だと750円だが、これはいつもあるとは限らない。きょうは運よく六枚が買えた。
帰ろうとすると、優待券を売りにきた中年女性が「五枚ありますが」と声をかけてくれた。今回は彼女が店に売る550円で分けてもらったが、次回からは「中をとって650円で」と話がまとまった。ただし、有効期限の二か月まえの時点で、先方が余っている枚数だけということだ。私と妻で一か月に最低二十枚はいる勘定だから、乗車券をいかに安く買うかは、わが家にとっては死活問題なのだ。
13時45分発の和歌山市駅行きの特急に乗る。終点で支線に乗り換え15時過ぎに帰宅。
「なんや、これ?」
いきなり妻に返送と書かれた封筒を突きつけられた。
毎年暮れに百貨店の買い物券、5千円分を贈ってくださる仕事関係の方がいる。私はいつもすぐさまチケットショップで4千750円で売り、乗車券を買う足しにしている。貰いぱなっしは悪いので、翌年の干支を題材にした木彫りの絵馬を差し上げている。ほかにも贈る人があるので、それぞれに文を添えて送った。例のひとには「いつも、いつも結構なものをいただき……」と書く。
絵馬を発送してから、はたと気がつく。今年はまだその人から買い物券が届いていないのだ。慌てて郵便局へ走る。300円を払うと、配達せずに送り返してもらえるとのことで胸をなで下ろした。あまりの間抜けさに妻には話さずにおいたが、先にポストを覗かれてバレてしまった。
かくして今年も〞繁盛〟した木彫りやの一年が暮れていく。