何かの雑誌でこの小説を紹介していてなんとなく覚えていたのを、
なんとなく読む気になって買って読んでみた。
あらすじ:
貧乏学生(吉岡努)が自分の欲望を満たすために、たまたま知り合った
ミーハーな田舎娘(森田ミツ)を利用してしまう。その後、ボロ雑巾のように棄ててしまった。
学生は就職し、職場の社長令嬢に入れ込む。が、その純潔は守りたい。
そこで学生は、再び己の欲望を満たす目的で田舎娘と再会するのだが、
その田舎娘は意外な事実を語りだした。
感想:
小説自体は短いので読みやすい。
結局、心の底から献身的に、人のためになりたい、助けになりたいという人間を、
その性格を利用して、自分の欲望のために犯してしまったことを
いつまでも悔いるという内容。
さらに、自分が社長令嬢とうまくいくことを願うこと、幸福の追求を、エゴイズムと一瞬思う。
人の良さを利用して自分の欲望を満足させ、別の幸せを追求する主人公ははエゴイスト。
人の良さで他人に利用されるも、その後最後まで他人のために献身的に生きるミツは聖女。
そしてミツは最後まで、吉岡のことを想いつづけた。
時に人を人とも思わない現代的、都会的な人の行為は、現代だけではなく実は戦後にも
あったことが意外だった。
しかし、吉岡のようにいつまでもそのような自分の行為を悔いるような人間が、
現在どれくらいいるだろうか?吉岡が自然と悔いている状態はモラルありきなのだと思う。
モラル、正義感、罪悪感、エゴへの嫌悪。
そういったものを現代人は持ち合わせているのだろうか?
人間誰だって1度や2度くらいは人を傷つけるなどの間違いを犯す。
だがその間違いの程度はどの程度なのだろうか。
どの程度なら忘れていいのだろうか。
どの程度なら、覚えておいて次は同じことをしないよう気をつければいいのだろうか。
どの程度なら、いつまでも覚えておいて、以後自分の幸せをエゴイズムと思い、
悔やみながら生きていかなければならないのか。
なーんて、まじめなことを書いてしまいましたが、
実はミツは幸せだったんじゃないかなーって思います。
つらい環境の中でも、吉岡の記憶が、彼女の希望、支えだったんじゃないかなーって。
吉岡はちょっと後悔してればいいんだって。それくらいが丁度いい。
人が人のことを好きでいつづけるのはその人の勝手。
人を傷つけたなんていつまでも後悔するくらいなら最初からそんなこと
しなきゃいい。とはいえ、結果的にそれがわかってしまうこともある。
そんなこと、誰だってある。気にするな!