第60回カンヌ国際映画祭(16~27日)コンペ部門の唯一の邦画「殯(もがり)の森」(河瀬直美監督)の主演女優・尾野真千子(未上場)がスポーツ報知のインタビューに応じた。河瀬監督がカンヌでカメラドール(新人監督賞)を受賞した「萌の朱雀」でデビュー。10年の時を経て“黄金タッグ”に「つらかったことも多かったけれど、自信になりました」と河瀬監督の秘蔵っ子は監督との不思議な縁を語った。

 女優の道に誘ってくれた恩人とカンヌへ。「最初に河瀬監督が『これでカンヌに行こうね』と言って、撮影に入ったんです。実現してすごくうれしかったです」

 河瀬監督との出会いは10年前。奈良・西吉野村に4人姉妹の末っ子として生まれた尾野。中3時、学校で靴箱を掃除中、撮影に訪れていた監督にスカウトされた。

 「人前に立てず、足がくがく、泣いてばかりだったんですが、なぜか『やりたい』と思って」。「萌の朱雀」はカンヌで新人賞のカメラドールを受賞。雲を見下ろす山間の村に住み、近所の友人と“やまびこ”で会話をしていた少女は、快挙のすごさをかなり後になって知ったという。

 10年ぶりとなる河瀬監督との仕事。「初めは戸惑いました。『萌―』の時は素人で何も考えなかった。今回は仕事を重ね、その役に成りきったり、役作りをして…」。高卒後、上京し、女優活動をしていた。経験も積んだ。だが、そんなアプローチは河瀬監督に全否定された。

 「私が女優として積み重ねたことは必要なかった。どうしていいか分からなかった」。監督の言葉はシンプルだった。「自分の思うようにすればいいやん」。一切のテクニック抜きに「素のままで自分の中に物語を入れていく」作業。「自分でのその場で感じたものをそのまま出しました」。

 尾野が演じる真知子(役名)は不慮の事故で子供を亡くし、離婚した27歳の女性。老人が暮らすグループホームに勤め、認知症で、死に別れた妻に愛情を持ち続ける初老の男性と出会い、2人で妻の墓を探しに、森の中をさまよう。撮影の半分以上が森で、ヒルもいる劣悪な環境だった。

 「普通の映画だと『あと何日で終わり』と思うけれど、今回は『あと何日で出来上がる』と思えた」10年前に感じた充実感とも“再会”した。

 「女優としてやっていける自信となりました」と尾野。監督については「10年前は“お姉ちゃん”と思っていた。今思えば、そんなに優しくもないし、母親(のような存在)でもない。映画監督として尊敬できることは確かです」。自らを見出してくれた監督への“恩返し”として、2人でカンヌのレッドカーペットを歩くことを楽しみにしている。

 ◆尾野 真千子(おの・まちこ)1981年11月4日、奈良県生まれ。25歳。中3時に映画「萌の朱雀」でデビュー、シンガポール国際映画祭主演女優賞、高崎映画祭最優秀新人女優賞を受賞。高卒後、上京し、「ユリイカ」(青山真治監督)「リアリズムの宿」(山下敦弘監督)に出演。NHK朝ドラ「芋たこなんきん」、日テレ系「東京タワー」に出演。身長163センチ。

(スポーツ報知より)