自然科学の研究方法では実験という認識手段が支配的であったに反して、社会科学に於ては大量観察という特殊な手段が支配的である。そしてこの手段[#「手段」に傍点]が、社会科学では統計的研究方法[#「方法」に傍点]の最も重大な一定部分となるのである。
一般に研究方法は第一に材料の瑣末に至る迄の習得であった。之が特殊的に具体化されたものが大量観察なのである。材料の習得(Aneignen)は材料の単なる占有ではない、占有された材料が同時に材料として耐え得るかどうかが吟味されていなければならない。材料のこの吟味にこそ、実は社会的量に就いての大量観察の特有な困難と秘密とが横たわっているのである。
例えば失業統計を得るために失業の大量観察をするとする。そのためには無論或る一定程度にまで個々の失業現象の諸場合を集積してかからねばならぬ。だが一体失業とは何であるか。職業を失ったのが失業であるか、初めから職業を持ち得ないのが失業であるか。家族に扶養されているものは失業者であるか。又職業の有無に拘らず生活が一定水準以下にあるものが 失業者であるのか。
