その日、信号待ちをしていた私の目の前を、犬を散歩中の若い女性が横切りました。
横断歩道を歩きながら、彼女にじゃれつく犬。
中型犬のそれは、私がかつて飼っていた蓬莱犬の熊を彷彿とさせました。
台湾から連れてきた、愛犬。
四肢の先端が白く、それで縁起が良くないということで捨てられていた子犬。
胸にも白いラインが、ちょうどフクロウの形でついていました。
なので、名前が熊。
しっぽの先も白くて、毛筆のよう。
とってもオシャレな外見で、よく犬種を聞かれました。
(熊との思い出は、以前「東方異人のブログ」に書きました)
その犬は、熊より一回り小さいくらい。
私もかつて、そんな熊と散歩を楽しむ時間が、日常の中にありました。
それらを思い出した私の心には、深い深い羨望の念が湧きました。
でも当の彼女は、まさか今の自分がそんな羨望の目で見られていること、ここに書くほど私の心に深く突き刺さったことなど、思ってもみないことでしょう。
でも私もかつては、確かにそこにいました。
「私はそれを、本当に心から慈しんでいただろうか?」
それほどの幸せに包まれながら、それに気づかなかった日々。
今の自分も、未来の私から見ればたぶんそう。
今日の幸せを、大切に生きよう。
ほんの短い時間に、私はそんなことを考えました。
*熊と行った「夢違い観音」。彼はバイクに乗るのが大好きでした。
かつての愛車、ヤマハマジェスティで。