横浜では全国に先駆けて、東京に1日遅れて桜の開花宣言が昨日ありました。

とはいえ、事務所の窓から見える学校の桜は、まだまだつぼみのようです。

 確定申告もなんとか法定申告期限を迎え、久々にブログの更新です。

 

 今回の来月に施行される改正民法についてのお話です。

この改正民法(相続編)について取り上げる解説記事のなかで、「遺産分割協議が相続開始から10年を経過すると原則法定相続分で分割される」という内容もあり、細かい内容もきちんと理解しないと結論を誤解しかねない記事もあり、取り上げてみようと思います。

 

遺産の分割

 民法(第907条)では、「被相続人が遺言で一定期間の分割を禁止した場合や、共同相続人(間)で一定期間の分割しない旨の合意をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる」と規定しています。

 また、民法(第906条)では、「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」とも規定しています。

 後述する相続分という概念がありますが、共同相続人間において協議が調えば、その内容で遺産の分割を行うことが可能です。

 

相続分とは

 民法では、第900条から第905条までを相続分という見出しでまとめています。
 ・第900条(法定相続分)
 ・第901条(代襲相続人の相続分)
 ・第902条(遺言による相続分の指定)
 ・第902条の2(相続分の指定がある場合の債権者の権利の行使)
 ・第903条、第904条(特別受益者の相続分)
 ・第904条の2(寄与分)
 ・第904条の3(期間経過後の遺産の分割における相続分)
 ・第905条(相続分の取戻権)
 改正後民法では、この9つの条文となり、新たに第904条の3という条文がプラスされます。
 相続分とは、相続におけて共同相続人が遺産を分割する際の権利としての分割基準を定めたものですが、この割合により遺産を分割しなければならないというものではありません
 

何が変わるのか・・?

 改正後民法第904条の3では、相続開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割については、特別受益者の相続分(第903条、第904条)および第904条の2(寄与分)の規定は適用しないと規定しています。

 共同相続人間で、遺産の分割についての協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、次のステップとして家庭裁判所において、調停・審判により合意形成を図ることになりますが、相続開始から10年を経過している場合、特別受益や寄与分という要素は適用されないということを述べています。

 この特別受益や寄与分が取り除かれると、遺言がなければ限りなく法定相続分に民法上の権利としての相続分は収斂するということを意味しています。

 共同相続人間で争いがあり遺産分割がなされなかったのではなく、その必要性を感じないまま10年が経過しているようなケースでは、いざ話し合いでその遺産の分割についての具体的相続分の合意が得られれば、その内容に基づく遺産の分割が可能です。 

 

(参考)

新条文(民法第904条の3:期間経過後の遺産の分割における相続分)

 前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りではない。

 一、相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割を請

  求したとき。

 二、相続開始の時から始まる十年の期間の満了六箇月以内の間に、遺残の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から六箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割を請求したとき。

 

真の目的は不明相続人の不動産の持分取得・持分譲渡

改正後民法第904条の3の創設趣旨として、所有者等の権利関係の不明土地の解消を目的としているようです。

現在の規定では、一の土地について、遺産共有となっている持分とそれ以外の通常共有となっている持分が併存する場合においては、遺産共有持分間の解消は遺産分割手続きで、通常共有持分と遺産共有持分との間の解消は共有物分割手続として、別個の事案として処理しなけれならず、また遺産共有持分の解消にあたっては、特別受益や寄与分も含めた具体的相続分を考慮する必要があるため、その解決のために年単位の時間を要することを覚悟する必要がありました。

 これが、相続開始から10年を経過した不動産については、原則として相続分は法定相続分となることから、共有物分割訴訟として実施することが可能となったり、所在等不明相続人の不動産の持分を、その価額に相当する額の金銭を供託することで、取得することも可能となるような条文改正が予定されています。

 

税務相談を受けていると、ご両親のうちいずれかがお亡くなりなる、いわゆる一次相続の段階では、また健在である父母を通じて、兄弟間の関係も続いていることから、不動産の名義変更が放置されているというケースが一定数あるようです。いざ二次相続があった段階で、ご両親名義の不動産等をまとめて片付けることなって、その税法上の取扱いでご相談ということになるようです。

不動産登記法の改正もありますし、相続税の申告がない場合でも、このような相続事務が円滑に行われるようにお手伝いしていきたいと思っています。

 今週月曜日(1月30日)、「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議」の第1回会議が開催されました。

 与党税制改正大綱(令和4年12月6日決定)の中の基本的考え方等「マンションの相続税評価について」で述べれていたマンションの通達評価額と市場売買価格との乖離の実態が見過ごせない状況となってきているとの現状認識のもと、の是正に向けた動きがはじまったということでしょうか。

 

旧措置法69条の4とは?

東京オリンピック前後の不動産、特にタワーマンションの活況を令和バブル(厳密にはまだ、泡にはなっていない)と言うとすれば、その30年前にも平成バブルと呼ばれる時期がありました。

その時期に不動産を活用した過度な租税回避的な動きを封じ込める目的で、昭和61年12月に租税特別措置法の改正があり、相続開始直前の相続対策に一定のメスが入りました。

 

(制度の概要)

個人が相続により取得した財産のうちに、その相続開始前3年以内に被相続人が取得又は新築した土地等又は建物等(一定のものを除く)がある場合には、相続税の課税価格に算入すべき価額は、相続税法第22条の規定にかかわらず、その土地等又は建物等の取得価額として政令で定めるものの金額とする。

 

バブル崩壊に伴う地価の大幅な下落による評価額と時価の逆転現象もあり、平成8年の税制改正で廃止されました。

筆者がこの業界で仕事をはじめたのは平成6年で、当時はこのルール(通称、不動産の取得価額課税)は相続対策の鬼門として注意喚起がされていました。

この当時、地価税なるものが平成3年から平成10年までの間、実際に申告実務が行われた時期もありました。事務所の新たな収益源として注目され、税理士試験の科目に加わるのでは・・という憶測も飛び交いましたが、静かに幕を閉じることとなりました。

 

財産評価基本通達6項の位置づけ

「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」

昨年は、この評価通達(通称、「6項評価」)が専門誌で注目されました。

特に4月19日にタワーマンションの評価・課税方法についての最高裁判決もあり、その考え方に注目が集まりました。

 さて、30余年前の平成バブル期には、通達評価額>市場実勢価格と推定されることから、納税者側がこの6項評価での申告の是非が問われました。

この場合、納税者有利の視点での検討です。

 他方で、今回は課税庁側がこの6項評価で一般的な財産評価通達による評価の例外として持ち出しました。課税庁側の視点で見ると、全く異なる内容に思えてしまいます。やはり課税の公平という視点では、一般的な財産評価通達の規定で運用されるのが望ましいのでしょう。

 

今後の見通し

第1回の会合資料を見ても、まだどのような規定となるのかは読み取れません。

マンションのものを評価方法を変更するというよりは、この旧措置法69条の4のような過度な租税回避行為を抑止する制度の方が解決が図れるのではないかとも思ってしまいます。

もっともこの旧措置法69条の4については、その問題点も当時からあったものの、創設まもなく起こったバブル崩壊で、その使命を終えて、その問題点を深堀りせずに終わってしまいました。

どのような試案が公表されるのか、いまから楽しみです。

 

この当時を題材とした映画・ドラマ

やはり筆者世代ですと、2007年2月公開の「バブルへGO!!タイムマシンはドラム式」でしょうか。船上パーティやディスコのシーンが印象的でした。

また、バブル崩壊後の不良債権処理にフォーカスした、「トッカイ バブルの怪人を追いつめた男たち」も骨太の秀作です。

どちらも1990年の大蔵省通達(不動産融資総量規制)をターニングポイントとして語られますが、この旧措置法69条の4の取扱いや地価税が生まれた世相にも思いを馳せながら、観ると感慨深いかもしれません。

令和3年4月21日に可決成立した「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」に基づく制度で、4月27日からはじまります。

”相続した土地を国が引き取る制度がスタートします!”こんなキャッチコピーとともに紹介されていますが、どんな制度がスタートするのでしょうか?

廃品回収のように、不要なものを持って行ってもらえる制度・・・と都合よくイメージしてしまいそうですが、なかなか難解な制度です。

 

どんな制度?

相続した土地について、「遠くに住んでいて利用する予定がない」「周りの土地に迷惑がかかるから管理が必要だけど、負担が大きい」といった理由により、土地を手放したいという潜在ニーズに応える制度です。

このような土地が管理できないまま放置されることで、将来「所有者不明土地」が発生することを予防するため、相続又は遺贈によって土地の所有権を取得した相続人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国庫に帰属させることを可能となります。

 

引き取りお断りの土地

この一定の要件がなかなかのくせ者です。

(却下案件)

・建物がある土地

・担保権や使用収益権が設定されている土地

・他人の利用が予定されている土地(墓地、境内地、現に通路等として利用されてい

 る土地)

・土壌汚染されている土地

・境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地

(不承認案件)

・30度以上の勾配、5メートル以上の高さの崖があって、管理に過分な費用・労力

 がかかる土地

・土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地

・土地の管理・処分のために、除去しなければならない有体物が地下にある土地

・隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地

・上記のほか、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地

何かしら該当してしまいそうです。

 

負担金・審査手数料

引き取ってくれるということは、「幾ばくかでもお金がもられるのか・・」と期待してしまいますが、残念ながらお金がかかります。

・負担金・・最低20万円(面積に応じて追加金あり)

・審査手数料・・現在検討中とのこと

負担金は、今後10年分の土地管理費相当額を想定した金額設定とのことです。

 

このまま放置していたら・・

来年(令和6年)4月には相続登記の申請を義務化する登記制度の見直しが予定されています。これら追加負担が予想され、売却可能なものは売却する後押しとなるかもしれません。

審査手数料と負担金で、数十万円以上の金額が必要となるとすれば、その土地を所有していることで、この金額以上の”負担”が現状でのしかかっている土地でなければ、もう一歩の検討の後押しとはならないような気がします。

 

物納との関係

相続税法では、物納という制度があります。この相続土地国庫帰属制度を利用しなくても、物納制度を利用すればよいのではないか・・とも考えてしまいませんか。

現在、相続税の申告をされる方はお亡くなりになる方の約8%と言われています。大多数の方は相続税を納める必要がないので関係がないという事実があります。

また、物納にあたっては「金銭で納付することが困難」というのが要件となっているため、積極的に物納を選択できる制度ではありません。

平成14年には、年間6千件近くあった申請数も、令和3年は63件の申請に留まり、許可されたのは39件(申請数の約6割)とレアケースに限られてきているようです。

 

土地所有権の放棄はできないのか?

民法第239条第2項では、「所有者のない不動産は、国庫に帰属する。」と規定されています。現在の所有者が積極的に土地所有権の放棄を行うことで、国庫に帰属させるというフローとはならないのか・・という疑問も生じえます。

この点について、この法律案について検討した法制審議会(民法・不動産登記法部会)の資料によると、「土地所有権の放棄の可否については、現行民法に規定がなく、確立した最高裁判所判例も存在しない。現行法の解釈として、土地所有権の放棄も可能性あり、放棄された土地は所有者のないものとして国庫に帰属すると解する学説のほか、その放棄は認められないとするもの、理論的には可能であるが必要なルールが定められていないことから現状では認められないとする学説もある。」との全方位的解釈が示されています。

この民法第239条第2項を踏まえた制度設計を模索していたような過程も見受けられるものの、「不動産については、その所有権を放棄することができないとの規律を民法に設けたらどうか」という方向修正の過程を経て、所有者のみの一方的な意思表明に寄らず、国の審査を経てからの承継取得制度をもってスタートすることになったようです。

 

実務への影響

適用される土地に厳格な条件がある点や、負担金等の金銭的負担もあることから、検討の遡上に上らないケースが多いような印象を受けます。これ以外にも審査の過程での現地調査の対応なども必要となるようです。

なお、この4月の施行から5年経過後を目途に必要な改正を行うとされています。

年間の物納件数を超える申請があるのかどうか・・と個人的な興味はあります。

この所有者不明土地等の解消に向けた改正の動向については、今後も注目していきたいと思います。

 
 
 

 

12月14日の時事通信社の配信記事によると、雇用保険料の料率が令和5年4月から、原則の1.55%(従業員負担料率は0.8%)とする方向で最終調整が行われている模様です。その背景として雇用調整助成金の特例措置による給付額の増加があるようです。

 

雇用調整助成金とは・・

雇用調整助成金は、経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図るために、一時的な雇用調整(休業、職業訓練又は出向)を実施することにより、従業員のこようを維持した場合に助成される制度といいます。

新型コロナウィルスによる影響以前から存在する制度ですが、新型コロナウィルスによる影響を鑑み、特例措置として金額を大幅にアップした制度が最近まで続いていました。

令和2年は、約210万件の申請があり、その支給額は2兆5,000億円を超える給付があったようです。現在は・・というと件数でピーク時の6分の1程度まで減少しているようです。

 

雇用保険に加入しているメリット

雇用保険というと、転職での職探しの間に受けられる失業給付がイメージしやすいものの、そのほかにも資格取得等の講座受講の際の教育訓練給付金、介護や育児で仕事とのバランスを図るための育児休業給付金や介護休業給付金も、この雇用保険の保険料を原資に労働保険特別会計として運営されています。

 

今回の雇用調整助成金の特例措置で恩恵を受けた事業所は、特定の業種に集中した傾向がありましたが、保険という性質からすると、やむをえないところかもしれません。

 

事務所通信の代わりに続けてきたブログですが、クライアント以外のみなさまも、このサイトまで辿り着いて頂いた方がいらっしゃり嬉しい限りです。

来年以降も月に2~3回は発信していきたいと思っています。

みなさま、よいお年を!

 

 

 

 東京都議会は、本日(12/15)環境確保条例の改正案を可決し、令和7(2025)年4月から、中小規模の新築建物に太陽光発電設備の設置が義務付けられることになります。

 

もう少し詳しく・・

延床面積2,000平米未満の中小規模新築建物を注文住宅で建築する事業者や建売住宅を販売する、いわゆるハウスメーカー等の事業者は、その建築又は販売の際に太陽光パネルの設置義務を負うことになります。また、対象となるハウスメーカーは都内で年間供給20,000平米の大手事業者(50社程度)に限定してスタートするようです。年間供給5,000平米以上の中小事業者の任意参加も可としており、これにより都内で新築される住宅の半数以上で設置されることを見込んでいるようです。
設置にあたっては現在も補助金制度があります。
導入費用の問題は回避策を講じられているようですが、近隣トラブルも増えそうな・・。賛否が分かれる制度にはなりそうです。
 

直近の売電状況

太陽光で発電した電力で自家使用しなかった余剰電力部分について、設置から10年間固定価格で電力会社に売電できます。

平成21年に住宅用について48円/Kwhと大幅改定された新制度も令和5年は17円/Kwhまで減額改定されてきています。

昨年度の国土交通省の資料によると、年間6,132Kwhの発電でその7割が余剰電力として売電される計算で約9万円(21円/Kwhでの買取想定)の売電収入となると想定しています。
 

税務上の取扱い(原則)

既に国税庁の質疑応答事例で、その考え方が公表されています。
自宅に設置したサラリーマン(給与所得者)の場合には、雑所得に該当します。
自宅兼店舗のような共用使用の場合、一見すると按分申告となりそうですが、原則は全てがその事業所得として申告する必要があります。そもそも確定申告される方であれば按分する意味がないので、按分しなくてもいいよ・・というメッセージかもしれません。

20万円申告不要制度の落とし穴

巷で、「給与所得以外の所得が20万円以下の場合には確定申告する必要がない」とざっくりとした情報で伝わることがあります。
なぜかと考察すると、副業収入等その他について、原則申告する必要があると記載しつつ、注書きや(※)で限られたスペースでこの点をコメントするので、要約して正しく伝わっていないと思われます。
所得税については、確定申告が必要な方として紹介されていますので、これに該当しない方という逆読みする必要があります。
落とし穴というのは、”確定申告しなくてもよい”という事務煩雑性を回避するための制度なので、医療費控除を受けるための還付申告や、年の中途で会社等を退職してその源泉所得税の還付申告を受けるため、自ら(積極的に)確定申告をされる場合は、この所得を申告する必要があります。
20万円以下の所得であれば非課税となる制度ではありません。
また、この確定申告は所得税についての取扱いで、住民税についてはこの取扱いはないため、所得税について申告不要ルールが適用される場合であっても、住民税の確定申告は必要となります。

 

 最近、クライアントをご訪問した際に相続の話となり、「遺産分割協議の期限は3年なの・・?」という話が出ました。

 この12月上旬は来年度の税制改正に関連してフライング情報が飛び交いますが、この遺産分割協議についても、いくつかのフライング情報との関係で誤解を生んでいる可能性もあり、フォーカスしてみたいと思います。

 

遺産分割協議とは?

相続があると、不動産や預貯金の名義変更を行う際に「遺産分割協議書」が必要書類として目にすることでしょう。

この作成の過程で、故人(被相続人)の財産について、相続人全員でどのように分割(相続)するかを話し合うことをいいます。

民法や相続税法という法律では、この遺産分割協議についての期限については何も言及がありません。

 

未分割の場合

「争続」というわけでもなく、現状で不都合がないということで不動産については、具体的な分割協議がされずに放置されている・・という状況もあるようです。

 このような場合、この不動産については、故人の相続財産の状態が続いていて、相続人の共有財産となります(民法第898条)。

 その不動産が賃貸用不動産で賃貸収入があるような場合には、その相続分に応じて帰属するものとして所得税の申告を行うことになります。

 

遺産分割協議3年説

不動産登記法が改正され、令和6年4月1日以降は相続があった日から3年以内に名義変更登記が義務付けられます。このことから登記のために3年以内に遺産分割協議を終わらせなければならないという説になっているようです。
この不動産登記法の改正は、令和6年3月31日以前の相続であっても、現所有者と登記名義人が異なっている不動産については適用されます。
 

それでも分割協議をしなかった場合

相続開始から3年以内に遺産分割が決まらなかった場合の代替措置もあります。

所有権移転登記の代わりに相続人申告登記として、所有権の登記名義人について相続が開始した旨または自らが登記名義人の相続人である旨を登記簿に載せる手続を行うことができます。

いずれにせよ、登記という手続を行う必要があり、どこまで効果があるのか気になるところです。

・・という流れで放置していると、法務局から登記の履行催告書が届きます。登記されていない不動産でどこまで確実に相続人に届くのか気になるところですが、この催告にも応じない場合には、最大10万円の過料が科されることになります。

 

所有者不明土地の解決に向けて

国土交通省が平成28年に調査したところ、相続登記が懈怠され所有者不明となっている土地は、実に4万平米ものぼることが推計されました。4万平米といってもピンとこない広さですが、関東地方(1都6県)と静岡県を合わせた面積とほぼ同じです。

この解決に一役買ってもらいたいところですが、これ以上拡大させないという意味合いの方が大きいかもしれません。

この相続登記の義務化で、3年以内に分割協議が整わなかった場合には、法定相続分で職権登記されてしまうというのような流布もあるようです。制度の理解が不十分なことで、原野商法が広がるのではないかという懸念もあるようです。

 

このような改正法律案は成立し、施行までまだ時間があるような経過措置については十分にご注意ください。

 

 

 「企業型確定拠出年金(企業型DC)で、約112万円の年金資産が放置された状態になっていることが、国民年金基金連合会のまとめでわかった・・」読売新聞オンライン(2022.11.2)は報じています。

 

企業型確定拠出年金(企業型DC)とは?

 平成13(2001)年に導入された年金制度の一つで、企業が従業員のために掛け金を支払い、従業員がそれぞれ積立資産の運用方法を選択できるという特徴があります。

将来の受取年金額はその選択した運用方法による運用実績により異なる。また、60歳まで原則として受取ができない。

 令和4年3月現在で約40,000の事業所が加入し、加入者は約780万人。ここ10年で約2倍、5年で1.5倍と規模を拡大している。

 

選択型DC(給与切出型DC)とは?

 企業型DCの背景を理解するうえで、いわゆる選択型DCと呼ばれる手法があります。

 企業型DCの掛け金は、事業主である企業が支払うべきものですが、従業員の基本給や手当の一部を減額し、これと同額を事業主掛け金とする制度設計したものを、このように呼んでいます。

 この場合、掛金の原資には給与等の減額分を充てるので、企業側としては新たな費用負担なしに企業年金制度を導入できるメリットがあります。また、この減額した給与等に係る社会保険料の計算の基礎となる賃金等の額が減額されることから、企業側・従業員ともに社会保険料の掛金を減らせることができることから、社会保険料節減スキームとして紹介している記事も見受けられます。

 他方で、社会保険料掛金が減額されることによる将来受け取る公的年金や残業代の計算基礎額への影響など、不利益変更とならない制度設計ができているかという点で二の足を踏むケースも多いようです。

 この点が、上述の加入事業所、加入者数となっている遠因と思われます。

 

いざ導入してみたら・・

選択型DCの是非はともかくとして、いざ導入後の問題の一端を垣間見た感じがします。導入までは取次代理店等の営業マンが熱心に勧誘されるものの、導入後は証券会社等の運営管理機関との関係となり、企業側も従業員側も十分な理解がないまま、取り残されてしまう・・・というケースがこの数字のバックグラウンドにはあると筆者は考えます。

 

転職や独立で退職した場合

 ただでさえ、転職や独立で生活環境が変わると、手続が必要となる事務作業に忙殺されてしまうでしょう。この企業型DCがそのリストから漏れていたら・・・。

 企業側が掛金を支払うというのが原則ですので、会社を辞めると加入資格を喪失します。退職後6か月以内に個人型確定拠出年金(iDeCo)などに移管する手続を行えばよいのですが、それを失念していた場合、国民年金基金連合会に口座移管がなされることになります。

 また、この口座移管となった場合には、従前の選択した運用方法は停止され、全く運用されていない状態となります。

 この放置年金資産となった加入者が112万人(加入者全体の14%)にものぼるという結果、みなさんはどう思われますか。

 

 

 

 区分所有マンションを所有していると、管理費と修繕積立金をマンション管理組合に支払っていることでしょう。

 マンション管理費は、建物や敷地内の共用部の管理、マンション住人共用のゴミ捨て場の清掃、管理人さんの人件費相当などの維持管理費用に充てられるものです。

 修繕積立金は長期修繕計画に基づいて、大規模修繕等の一定金額以上の維持修繕に充てるための費用に充てられるものです。この修繕積立金は、この言葉の通り所有者が支払う金額について、大規模修繕までの期間は積立金としてプールされています。

 この実際に修繕に充てられていない金額があることで、賃貸用マンションを所有の方は、必要経費とする時期・金額について疑問に思われたことはありませんか?

 

取扱いの原則

税法上は債務確定主義という考え方に基づき、実際に修繕が行われた日に必要経費として認識します。

毎年の議案書の修繕特別会計の資産状況に基づいて積立残高と必要経費相当額を振り分ける処理を行う・・・などの確認が必要です。

実際にマンション管理組合の支払状況を確認し、それまでの間は必要経費とできないとすると、賃貸オーナーからすると負担が大きい取扱いといえます。

 

取扱いの例外

管理費や修繕積立金は、管理規約等で持分に応じた金額が定められ、支払った金銭については、解散以外では払戻請求はできないとされているケースが一般的かと思います。

このような区分所有マンションの実情に合わせ、一定の要件を満たす場合には、その支払の都度、その支払期日の属する年分の必要経費とする処理でもよいとされています。
 

例外処理するための要件

 

(1) 区分所有者が、管理組合に対して修繕積立金の支払義務を負っていること

(2) 管理組合は、その修繕積立金について、区分所有者への返還義務を有しないこと

(3) 修繕積立金は、将来の修繕等のために使用するとの使途指定があり、管理費への 

 流用されないこと

(4) 修繕積立金の額は、長期修繕計画に基づき角区分所有者の持分に応じて、合理的 

 な方法に算出されていること

 

通常は、国土交通省が公表しているマンション標準管理規約をベースにした管理規約が管理会社から提示され作成されているケースが多いと思われ、その場合にはこの4要件は充足されています。

 

消費税の取扱い

マンション管理費であれば、管理会社への業務委託費などマンション管理組合の支出の内容で、消費税の課税取引支出に充てられるものが相当程度あるでしょう。このことから、区分所有者においてもその管理費や修繕積立金について、課税処理できるのではないかという疑問(期待)も出てきてしまいます。

これは、残念ながら消費税は対象外取引となります。

なぜか?

 「マンション管理組合は、その区分所有者を構成員とする組合であり、その組合員との間で行う取引は”営業”に該当しないから。」です。

マンション管理組合が、各区分所有者の集合体で、その支払・受取の段階では、消費税の認識要件を満たしていないということです。

(参考:マンション管理組合の課税関係

 
今年も残すところ、あと1か月とちょっと。
確定申告で当てはまる方はご注意ください。
 
 

 

 

 令和4年度税制改正により、記帳水準の向上に資する観点から、記帳義務の適正な履行を担保し、記帳の不保存や記載不備を未然に抑止するため、過少申告加算税・無申告加算税の加重措置が講じられました(Q&A前文より)。

 

 なかなか税額に直接関係ない税制改正について、その影響の見定めが難しいのですが、このように是正税額の加算税に一定の調整を行う手法というのは目新しい制度です。

 

制度の概要(問1より)

(1) 帳簿等の提示をしなかった場合

  →過少申告加算税等の割合が10%加重

(2) 帳簿等への売上金額の記載等が、本来記載すべき金額の2分1未満の場合

  (即ち、売上の計上もれの金額が既申告額を超える金額である場合)

  →過少申告加算税等の割合が10%加重

(3) 帳簿等への売上金額の記載等が、本来記載すべき金額の3分の2未満だった場合

  (即ち、売上の計上もれの金額が既申告額の2分の1未満である場合)

  →過少申告加算税等の割合が5%加重

 

対象となる事業者

◇事業所得、不動産所得、山林所得を生ずべき業務を行う個人事業者
◇法人
◇消費税の課税事業者
 
とされています。
法人については、青色申告の割合が90%超ですので、一定水準以上で帳簿の作成・保存が行われているものと思われます。
個人事業主については、青色申告の割合が50%前後で推移しているようです。平成26年以降は白色申告事業者についても帳簿の作成・保存義務が課せられていますが、法人に比べて記帳水準が低いケースもありそうです。
また、事業所得とせず雑所得で申告している場合でも消費税の課税事業者である個人事業主(おそらくは還付申告をしているようなケース)もターゲットとなっています。
 

不動産賃貸業(不動産所得)の場合

事業的規模によらないケースでは、個人事業主の方の自主申告の割合も高く、また税理士等に申告代理を依頼しているケースでも、年1回のスポット対応という案件が多いのではないかと思われます。このような規模の不動産所得の事業主については、帳簿作成・保存についての知識・指導というのが希薄になっていることが予想されます。

不動産所得の場合、テナントの毎月の賃料については契約等で明らかですので、礼金や退去時の日割賃料や敷金相殺修繕費などが、帳簿作成・保存に網羅性がないと、売上もれとなってしまう可能性がありそうです。

 

会計ソフトが万能ではない

このQ&Aにおいても、「会計ソフト等を利用することで、よりスムーズに、間違いが少ない形で帳簿を作成することが可能です。」とコメントされています。

他方で、この帳簿作成において求められているものは、「取引の年月日・相手方・金額等といった取引内容が整然とかつ明瞭に記録された帳簿」の存在です。

損益の集計に重きを置いて、日付は毎月の月末でまとめて入力されていたり、摘要欄が空欄であるような入力状況では、この会計ソフトのデータのみでは完全な帳簿書類とは言えない状況もありえます。

また、このQ&A(問11)では、不動産賃貸業に係る送受金のみに用いる事業専用口座を使用しているケースで、摘要欄の記載等から賃貸期間。賃貸人がわかる場合には、この通帳自体が売上帳に相当する(答11)・・・と述べられています。

売上という総勘定元帳で作成しなくても、ちょっとした工夫で要件を具備した帳簿の作成・保存に近づけることはできそうです。

 

いつからはじまるの?

令和6年1月以降に法定申告期限等が到来する申告所得税・法人税・消費税が対象となります。所得税の場合には令和5年分の確定申告から対象となります。
法定申告期限だけみると、「まだ先の話じゃないか!!」となりそうですが、帳簿の作成は、それ以前の日々の積み重ねです。来年1月から取り組む必要があります。
 
最近はこのようなQ&A形式の公表書類が増えました。
法令や通達といったものよりも迅速に、またこれら法令・通達では読み込めない部分を理解できる点はよいのですが、かえって謎が深まる問答があったりもします。
10月25日に公開されたものは問20までの内容ですが、今後も適宜改訂のうえ、問答数も増えていくことでしょう。
不動産所得がある方、(業務的規模の)雑所得がある方はご注意ください。
 
 

 

公益財団法人東京しごと財団では、都内の中小企業等の事業所を対象に、職場環境の改善や人材育成、賃金の引き上げなどの制度構築や取組を支援する目的で、魅力ある職場づくり推進奨励金の事前エントリーが10月31日からスタートします。

 

事前エントリーのスケジュール

第1回 10/31~11/4 (11/25) 100社

第2回 11/28~12/2 (12/23) 100社

第3回  1/10~1/13 ( 2/3 )   100社

第4回  2/ 6~ 2/10 ( 3/3 )   100社

第5回 2/27~ 3/ 3  (3/24)   100社

 

従業員のエンゲージメント向上に向けた取組

(1) フレックスタイム制

(2) 選択的週休3日制

(3) ワーケーション制度

(4) 社外副業・兼業制度

(5) 人材育成方針の策定と目標管理・キャリア面談制度

(6) 社内メンター制度

(7) リスキング・資格取得支援制度

(8) 外部キャリアコンサルタント活用支援制度

(9) 従業員表彰制度・報奨金制度

 

神奈川県版の制度は・・・

今回は国の制度ではありませんので、神奈川県では同じような奨励金(給付金)がもらえる取組はみつけられませんでした。さすが東京都です。

過去にもテレワーク助成金の場合でも、東京都の制度比べると神奈川県や川崎市の制度は見劣りがする点は否めませんでした。

今回は合計500社が抽選で選ばれるようです。この数が多いのか少ないのかですが、どのくらいの倍率となるのか興味深いところです。

来週からはじまる第1回のエントリーから5回チャレンジできます。

今月から改正育児・介護休業法が施行され、就業規則の見直しを検討・実施されている企業も多いかと思います。

売手市場で新規採用が難しい時期ですので、福利厚生制度の充実という視点でも面白い制度ではないでしょうか。

あくまでも東京都内の事業所が対象です。

詳細はこちらのリーフレットをご確認ください。