横浜では全国に先駆けて、東京に1日遅れて桜の開花宣言が昨日ありました。
とはいえ、事務所の窓から見える学校の桜は、まだまだつぼみのようです。
確定申告もなんとか法定申告期限を迎え、久々にブログの更新です。
今回の来月に施行される改正民法についてのお話です。
この改正民法(相続編)について取り上げる解説記事のなかで、「遺産分割協議が相続開始から10年を経過すると原則法定相続分で分割される」という内容もあり、細かい内容もきちんと理解しないと結論を誤解しかねない記事もあり、取り上げてみようと思います。
遺産の分割
民法(第907条)では、「被相続人が遺言で一定期間の分割を禁止した場合や、共同相続人(間)で一定期間の分割しない旨の合意をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる」と規定しています。
また、民法(第906条)では、「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」とも規定しています。
後述する相続分という概念がありますが、共同相続人間において協議が調えば、その内容で遺産の分割を行うことが可能です。
相続分とは
何が変わるのか・・?
改正後民法第904条の3では、相続開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割については、特別受益者の相続分(第903条、第904条)および第904条の2(寄与分)の規定は適用しないと規定しています。
共同相続人間で、遺産の分割についての協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、次のステップとして家庭裁判所において、調停・審判により合意形成を図ることになりますが、相続開始から10年を経過している場合、特別受益や寄与分という要素は適用されないということを述べています。
この特別受益や寄与分が取り除かれると、遺言がなければ限りなく法定相続分に民法上の権利としての相続分は収斂するということを意味しています。
共同相続人間で争いがあり遺産分割がなされなかったのではなく、その必要性を感じないまま10年が経過しているようなケースでは、いざ話し合いでその遺産の分割についての具体的相続分の合意が得られれば、その内容に基づく遺産の分割が可能です。
(参考)
新条文(民法第904条の3:期間経過後の遺産の分割における相続分)
前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りではない。
一、相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割を請
求したとき。
二、相続開始の時から始まる十年の期間の満了六箇月以内の間に、遺残の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から六箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割を請求したとき。
真の目的は不明相続人の不動産の持分取得・持分譲渡
改正後民法第904条の3の創設趣旨として、所有者等の権利関係の不明土地の解消を目的としているようです。
現在の規定では、一の土地について、遺産共有となっている持分とそれ以外の通常共有となっている持分が併存する場合においては、遺産共有持分間の解消は遺産分割手続きで、通常共有持分と遺産共有持分との間の解消は共有物分割手続として、別個の事案として処理しなけれならず、また遺産共有持分の解消にあたっては、特別受益や寄与分も含めた具体的相続分を考慮する必要があるため、その解決のために年単位の時間を要することを覚悟する必要がありました。
これが、相続開始から10年を経過した不動産については、原則として相続分は法定相続分となることから、共有物分割訴訟として実施することが可能となったり、所在等不明相続人の不動産の持分を、その価額に相当する額の金銭を供託することで、取得することも可能となるような条文改正が予定されています。
税務相談を受けていると、ご両親のうちいずれかがお亡くなりなる、いわゆる一次相続の段階では、また健在である父母を通じて、兄弟間の関係も続いていることから、不動産の名義変更が放置されているというケースが一定数あるようです。いざ二次相続があった段階で、ご両親名義の不動産等をまとめて片付けることなって、その税法上の取扱いでご相談ということになるようです。
不動産登記法の改正もありますし、相続税の申告がない場合でも、このような相続事務が円滑に行われるようにお手伝いしていきたいと思っています。