―近頃お肌の乾燥が気になってきた私。
鏡で顔を見てみたら、乾燥で毛穴が開いてたるんでいるのを発見してしまいました。
年齢を重ねるごとに、
お肌を支えるコラーゲンって減少してしまうんですよね。
そのせいでお肌からハリが失われてしまうので、
一気に老け込んだ印象になって困ってしまいます。
でも、お肌のケアのための時間って、なかなか取れないんですよね…
そんな時に出会ったのがこの、
お医者さんが作った薬用ゲル「ピロロ~プの恵」
化粧水から美容液まで全てのケアがこれ1本でできちゃうんです。
これなら、面倒くさがりの私でも大丈夫!
使い始めてみたら、お肌がもっちもちで、
メイクののりも全然違うんですよ!
これからも、
お医者さんが作った薬用ゲル「ピロロ~プの恵」で、
簡単時短ケアをしていこうと思います―
「ふう…」
そこまで書き上げて、モト子はお茶をすすった。
ダンナの稼ぎはそこそこあるが、
自分でも働こうと始めたのうちのひとつはコレ、
ステマ・ライティングだった。
もちろん、「ピロロ~プの恵」など、
見たことも使ったこともない。
ピロロ~プが植物なのか国なのかすらモト子は知らない。
そろそろ世間も、
ネット上の口コミは、9割以上がステマ・ライティングであると知るべきである。
ライティング収入は、
内職よりはマシ、
パートよりはナシ、
と、いったところだった。
ただ、好きな音楽でも聞きながら、
指からでまかせに文字を打つだけで金になるのは、
あまりにも楽勝だった。
TVでは昔のサスペンスの再放送が流れていた。
ドラマの中の男が、女に覆いかぶさらんとした時、チャイムが鳴った。
「チョウウケルンデスケドッ!チョウウケルンデスケドッ」
来客は、入ってくるなり一人でまくし立てた。
ジュンコは、同じ団地に住む主婦で、
おそらくモト子よりも5つは年上だ。
かたくなに年齢を教えてはくれないが、大体想像がつく。
しかし、服装は随分と若作りで、
ananのsex特集なんかを恥ずかしげもなく、
いや、むしろこれみよがしにレジへ持っていくような、
ある意味尊敬に値するほどの開き直り感さえあった。
ジョンコは、当たり前のように毎日モト子の家へやってきては、
自分の彼氏の自慢話をするのだった。
もちろん、ダンナとは別である。
「ダンナとアイツがぁ、ニアミスしちゃってぇ、ウケルー」
「まじでまじで」
今のご時世、主婦が彼氏を持つことは珍しくない。
そして、ダンナにバレていないと思っているのは本人たちだけで、
9割は黙認しているだけに過ぎない。
たとえ浮気をとがめたところで、
主婦はアイドルやら歌手やら旅役者やらにダンナの金をつぎ込む。
一緒のことだからだ。
一方的にしゃべり続けるジュンコに相槌を打ち続けるのは、
モト子にとって、とても楽だった。
『一戸建て賃貸とマンション購入、どっちがいいと思う?』
みたいな難題をふっかけられるよりも、はるかに簡単だった。
話を聞いて欲しいだけのジュンコと、
相槌をうつのが得意なモト子。
お互いに理にかなった相手だった。
「それでそれで」
会話を邪魔することなく、
期待感を含んだかのような見事な相槌は、
ジュンコをますます饒舌にさせる。
この世に「aizuchiグランプリ」があれば、間違いなく優勝していることだろう。
まあ、そんな大会にエントリーする時点でクズだが。
タバコを取り出したジュンコに、
灰皿を差し出してやる。
「あれ?アンタ吸わないの?」
「うん、やめたの」
エコ社会に飲まれてんじゃんー
ウケルー
副流煙とかー
ウケルンデスケドー
という声を背で聞きながら、
お茶を入れる。
モト子は、タバコの代わりにお茶に凝っていた。
「太るンでしょー」
「太る太る」
タバコをやめると太る。
ダイエットをしようが太る。
栄養素の吸収率がよくなる為である。
最初は悪あがきして太るまいとしていたモト子だったが、
禁煙とダイエットのWの苦痛に、
だんだん何の為にタバコをやめたのか分からなくなってきて、
ダイエットの方は諦めたのである。
「太ったりしたら、愛想つかされないの?アンタの…」
ダンナ、と言いかけてジュンコは口をつぐんだ。
お互いにお茶を一口すする。
「美味しいジャン何茶?」
「中国茶」
「ウケルー」
パチリ。
モト子ははっきりと目を覚ました。
クルリと首を傾けて時計をみる。
AM2:59
デジタルの文字が、無機質に青く浮かび上がっている。
アラームより先に目覚めることが出来た。
禁煙の効果が出てきているようだ。
満足そうに息を吐き、勢いよく体を起こした。
※ご注意
「モト子のダンナ」は、世界一つまらない小説です。
本人がつまらないと思って書いているのだから、
間違いありません、ご了承ください。
「モト子のダンナ」は、世界一つまらない小説です。
本人がつまらないと思って書いているのだから、
間違いありません、ご了承ください。
