古典落語「竹の水仙」は、江戸時代の名匠・左甚五郎が主人公である。
東海道の神奈川の宿。上方から流れてきた貧しい風体の男が、ある宿屋に泊まった。長逗留しながら大酒を飲むこの男が本当に金を持っているかどうか、宿の夫婦は気になってたまらない。
ついに本人に尋ねると「金は一銭もない」。あきれ果てる夫婦に向かい、ならば宿賃の代わりにせよと「竹の水仙」を彫り上げる。
竹の水仙は、まだ固い蕾(つぼみ)のままで開いてはいない。
男に言われた通り水に挿しておくと、ある日、パチリと音を立てて「竹の水仙の花」が咲いた。芳しい香りが漂う。その香りを籠のなかで知ったのは、通りかかった肥後熊本の細川の殿様であった。
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