清州城は盛大な宴の準備で慌ただしかった。
準備に追われる女中さん達の手伝いをしていると、梅子ちゃんが「あぁ!」と声を上げた。
「どうしたの?梅子」
「松子…私ったら大変な事を忘れていたわ」
「何よ?」
「琴音さんに頼んだ買い物の書付けの中に、かち栗を入れるのを忘れたの」
「それは一大事だわ!」
かち栗は【勝ち栗】とも呼ばれ、縁起の良いものだ。
陽菜ちゃんが作る、もはや城内では名物となった【必勝飯】には欠かせない食材だ。
「梅子さん、私が買ってきます」
「陽菜ちゃん、待って」
襷を外そうとする陽菜ちゃんに、俺は声をかけた。
「俺が行くよ。陽菜ちゃんは準備を進めて」
「そんな…秀吉様にお使いさせるなんて」
「ついでに美味い酒の調達もしてくるから、任せて」
俺は一人、城下町へと出かけて行った。
「かち栗は手に入れたし、酒の手配も済んだし…ん?」
清州城へと戻る途中、蹲っている老人を見つけた。
「おじいさん、大丈夫?」
声をかけると老人は「腹が減った…」と呟いた。
「うーん…おまんじゅうでも持っていれば分けてあげられたんだけど」
そう言いながら懐に手をやると、べっこう飴の入った瓶があることに気がついた。
「飴しかないけど食べる?」
瓶を差し出すと老人はひと粒つまみ出し、口に含んだ。
「おっ…おぉ…これはこれは…」
「美味しいでしょ!なんだか優しい味なんだよね」
老人は口の中で飴を転がしながら、満面の笑みを浮かべる。
「またこの味に出会えるとは…」
そう言いながら老人は俺の顔をじっと見つめた。
「ほほぅ…農民出の武人とな」
「え!?なんでわかったの?」
「ほほっ!わしは占いを生業にしておるからのう」
老人は俺の手を取り、丹念に手のひらを眺めている。
「あんたの将来は…いや…あんたなら言わずとも手に入れるじゃろう」
「望むものが手に入るってこと?」
「そうとも限らん」
不可解な物言いに頭をひねると、老人は笑い声をあげる。
「今は望んではおらぬ。しかしいずれ手にしたいと思うものが出来る」
「それって…人?」
「いいや。年月を経て行くうちに欲しくなるものじゃよ」
「うーん…なんだろう?」
考えてもまったく見当がつかない。
「ただ占いはここまでじゃ。また縁があれば占ってあげよう」
老人は空になったべっこう飴の瓶を俺に押し付け、くるりと背を向ける。
「そうじゃ…」
そして思い出したように振り向き、こう告げた。
「その飴を作ったお嬢さんによろしくな」
「えっ?琴音ちゃんを知ってるの」
しかし老人は何も言わず、片手を振りながら去っていった。
ー ෆ
次こそは恭一郎さんSSを書きたい_(┐「ε:)_✎
いや、書きます
きっと…
たぶん…
。・*・:≡( ε:)