織田軍が清州城を発ち数日経った。
信長様の鉄砲隊の威力は目を見張るものがあり、戦況は圧倒的に織田軍に有利となっていた。
「…」
俺は天幕の中で一人考え事をしていた。
「どうした?秀吉」
「あっ、わんこくん」
「利家って呼べよ!」
お互いに軽口を叩けるくらいの余裕がある。
だが、俺はそれに違和感を感じていた。
「秀吉、なんかおかしくねぇか?」
「わんこくんもそう思うよね」
「あぁ…事があまりにも有利に進み過ぎだ」
利家がそう呟いた次の瞬間、天幕の外が騒がしくなった。
「奇襲だ!」
俺と利家は顔を見合わせ、それぞれの得物に手をやる。
「やっぱり簡単には終わらせてもらえないと思った」
「秀吉!一気にカタつけるぞ!」
俺は刀を抜き放ち、天幕に飛び込んで来た敵兵達を見据える。
「はっ!ついてやがる。豊臣と前田の首を一気に取れるとはな」
敵兵の一人は手に持っていた何かを俺達に投げつけた。
「なっ!」
それは人の首だった。
一瞬にして背中に寒気が走った。
「てめぇ!舐めた真似しやがって!」
激昂した利家が槍を振るう。
「お前も直ぐに冥土へ送ってやるよ!」
「この命、簡単には渡せない」
急所を狙ってくる敵兵を一気に切り捨てる。
だが
「豊臣秀吉覚悟!」
後ろからの怒号に反応して振り返った瞬間
ザンッ!
一筋の閃光が俺の胸を襲った。
「秀吉!」
利家の声がやけに遠くに聞こえた。
気がつけば俺は一人、薄暗いところにいた。
「俺…死んだのかな?」
過去の出来事が走馬灯のように脳裏に浮かんでは消えていく。
(あぁ…琴音ちゃんに謝ることすら出来なかったな。やっぱり俺は最低だ)
夢の中でも良いから謝りたい。
そう思っていると目の前に琴音ちゃんが現れた。
「琴音ちゃん!」
俺は琴音ちゃんの側に駆け寄った。
「琴音ちゃん…俺」
「秀吉様…」
琴音ちゃんは真っ赤な顔をしながら俺に何かを差し出した。
俺はそれを手に取った。
次の瞬間それはやわらかな光を発し、俺はその光に包まれた。
「秀吉!起きろ!」
「…ん?」
目を開けると目の前には利家がいた。
「ったく…肝心な時に気絶なんてするなよな!」
「気絶?」
俺は斬られたはずの胸元に目をやった。
戦装束はパックリと切られている。
だが、ほとんど血はついていない。
そっと胸に手をやる。
硬い何かが手に触れた。
「まさか…」
べっこうあめの入った小瓶にヒビが入っている。
「どうやらその瓶が衝撃をやわらげたようだ。秀吉、命拾いしたな」
「半兵衛…」
それをそっと握ると手の中で崩れ、べっこうあめはパラパラと地に落ちた。
「琴音の、秀吉が無事に帰還出来るようにと願う気持ちが届いたのだろう」
「そうだね…」
ひとしきり強い風が吹いた。
俺はそっと天を仰ぐ。
澄み渡る青空には、桜の花びらが舞っていた。
清州城の庭の桜は満開になっていた。
私は廊下に座り、青空の下で舞う桜の花びらを眺めていた。
「琴音、此処に居たのか」
勝家様がドカリと隣に腰を下ろす。
「皆様ご無事でしょうか?」
「心配をするな。織田軍きっての精鋭が出揃っている」
「そうですね。勝って無事に帰ってきますよね」
次の瞬間、風が桜の花を揺さぶるように強く吹いた。
(秀吉様…どうか無事にお帰りください)
私は花びらが舞う青空へと祈りを捧げた。
*⑅︎୨୧┈︎┈︎┈︎┈︎┈︎┈︎┈︎┈︎*୨୧⑅︎*
恭一郎さんSSに繋げる前にもう一本書きたくなったやつ_φ(・ω・๑ )カキカキ
最近の秀吉さまはヘタレ気味ですが
名誉挽回の時は訪れるのか?
琴音と仲直りは出来るのか?
琴音の恋心は如何なる?
好ご期待!
なの?(´・ω`・ )エッ?