港での買い付けから帰って来た俺、鳴神恭一郎は足取り軽く店へと向かっていた。
今回の取引はこの上なく上手く行き、将来性もあるものになった。
(夏祭りの騒動のおかげで、結果清洲の人達の新たなる信頼も得たしね)
ただ引っかかっているのは、秀吉様が探りを入れてきた事だ。
(少し目立ち過ぎたか。目立った行動は控えないと…だな)
店へと近づくにつれ、焦げ臭い匂いが漂い始めた。
(まさか…火事か?)
俺は慌てて店へと走り出した。
焦げ臭い匂いは明らかに俺の店から漂っていた。
陽菜が料理を焦がしただけとは思えない異臭に、俺は慌てて店の中へ飛び込み、台所へと向かった。
「陽菜!?」
「あっ…恭一郎さん、おかえりなさい」
陽菜の呑気な声を聞いて安堵したが、隣に誰かがいる事に気づき身構えた。
だが次に発せられた声を聞いて、また気が抜ける。
「恭、お前が今日帰ると聞いたから、土産に秋刀魚を持ってきたぞ」
「助さんかよ…」
隣にいたのは俺が懇意にしている忍の、猿飛佐助だった。
「でっかい取引をしに行ったんだってな。当然成功だろ?祝い酒も用意してきたぞ」
俺はどっと疲れて、その場に座り込んだ。
「まるで炭。君は火加減ってものを知らないの?」
「そこまで酷くないと思います。結構食べれますよ」
「食える!食える!初物だぞ。有り難く食えよ」
焦げた秋刀魚を口に運ぶ。
脂の乗った秋刀魚の風味が口の中に広がり、季節は秋なんだと実感させられる。
「さつまいもの煮物もあります」
俺は差し出された鉢から、芋を一つつまみ上げた。
「芋が切れてないんだけど…」
「ごめんなさい…」
「そのくらい箸で切れよ。ははっ…恭は甘えん坊だな」
「なっ…野菜が切れてない時点で、料理として成立してないんだよ!」
「口に入れれば一緒だろ」
渋々焦げた醤油の味がするさつまいもを口にする。
(外で食べる食事は、やっぱり美味しかったな…)
黙って食べていると、陽菜の視線を感じた。
「何?美味しいって言って欲しいわけ?」
「あっ…そうではなく」
慌てた陽菜の隣にいる助さんが口を挟む。
「芋は陽菜が恭の為にって、わざわざ買ってきて作ってたぞ。美味いって言ってやれよ」
俺は連なる芋を箸で持ち上げ、ため息混じりに呟いた。
「味は悪くはないんじゃない」
俺の言葉を聞いた陽菜の顔がパァッと明るくなる。
「調子に乗らないでよ。まだまだなんだから」
「私、もっと頑張ります!」
俺達のやり取りを眺めていた助さんは、一人ニヤリと笑っている。
「何?助さん」
「ん…恭に安らげる場所が出来たなと思ってな」
「全然安らげてないけど…」
「そうか!そうか!」
「人の話全然聞いてないし」
(ただ家で食べる食事は…作り手の顔が見えるから安心するんだよな)
深まりつつある秋の夜。
秋の虫の音を聞きながら、俺は束の間の安らぎを感じていた。
⌒⌒⌒⁺.。𖧷
恭一郎さんのSS書きかけてます
次は怪しいおじさんの出番の予定です
おじさん出る前にちょっと和やかなお話をと思い〜_φ(・ω・๑ )カキカキ