神社で祭りが開かれると聞き、私と数人の女中は城下へと足を運んでいた。


同行してくれている秀吉様と利家様の周りには、たくさんの女中達が群がりあっちへ行こう、こっちが良いと騒いでいる。


私は気後れしてその中には入れず、仲の良い数人の女達と祭りを楽しんでいた。


露店がいくつか並ぶ中、私は金魚すくいを見つけた。


ゆうゆうと泳ぐ金魚を、自分と重ね合わせる。


清洲城と言う池のから出られずにいる私。


池を模した容器から出られない金魚。


不満だと言うわけではない。


狭い世界に生きているから、たまに息が詰まりそうになるだけ。


「どうだいお姉ちゃん、負けとくよ」


器と紙で出来た網を差し出され、私は金魚の側へと歩み寄る。


たとえ此処から救い出せても、金魚はきっと長くは生きられないだろう。


「琴音ちゃんは金魚が好きなの?」


気がつけば私のすぐ横に秀吉様がいた。


「あっ…えっと…可愛いなって…」


緊張のあまりに声が上擦ってしまう。


「じゃあ取ってあげるよ」


「えっ…そんな…申し訳ないですし…金魚は早く大きめの鉢の中に入れてあげないと死んでしまいますし」


突然の申し出にしどろもどろになってしまう。


「琴音ちゃんは優しいね」


秀吉様は店主から編みと器を受け取り、こっちにおいでと手を振る。


「どの子が好き?」


どの金魚が良いかと聞かれても、隣に秀吉様がいるだけで緊張して上手く答えられそうにない。


「あの…お腹の白い…あの子を」


かろうじて目に入った金魚を指差す。


「あぁ、ちょっと変わってて可愛いね」


そう言って秀吉様は器用に金魚をすくい出してしまった。


「一匹だと寂しくて可哀想だよね」


そう言ってもう一匹すくい出したところで網は破れた。


「有難うございます。さっそく帰って大きめの器に移してあげます」


小さな器に入れられた二匹の金魚を手にした私は、深く頭を下げる。


「じゃあ送っていくよ。一人じゃ危ないから」


「でも祭りはまだ…」


「わんこくん一人で大丈夫だよ」


私は大丈夫ではない。


女中達の目的は、秀吉様と祭りを楽しむことなのだから。


このままでは、目標を達成したのは私一人だけとなってしまう。


しどろもどろになりながらそう説明すると、秀吉様は「そうなんだ」とカラリと笑った。


「じゃあ金魚が驚かないように静かに祭りを楽しもう」


そう言って私の手を引き、皆の元へと歩き出す。


隣を歩く私の心の蔵は、激しく高鳴っていくのだった。











𖧷。.⁺︶︶︶


お試しで書いてみました、秀吉さま救済SSです


続けれそうなら、月の夏祭りと絡めるかして続きを考えてみよう“φ(・ω・。)フムフム...


秀吉さま専用ヒロインは琴音ちゃん


まだ性格とかはハッキリと決まってません




あと注釈を_φ(・ω・๑ )カキカキ


金魚自体は室町時代後期から、貴族の間で流行ったんですが


金魚すくいが始まったのは推定江戸時代後期からです


さらにすくった金魚のお持ち帰りは明治時代後期からで


紙のポイが出来たのもこの辺り(網だとたくさん取れてしまうから)


持ち帰り用のビニール袋が普及されたのは昭和30年頃です