お休みが不定期な私の週末にルーティンなんてない。
コロナ禍で落ち込み気味だった週末の街は、以前の賑わいを取り戻そうといる。
はしゃぐ人達を横目に、私は帰るべきアパートへと足を向ける。
私にとって週末は平日と同じ扱いだ。
「ふぅ…疲れた」
ため息をついていると、鞄の中のスマホが震え出した。
着信を見て慌てて通話釦を押す。
「…まだ仕事中だったか?」
低い声が耳を擽る。
「いえ!もう絶賛帰宅中です!」
緊張のあまりに声が裏返る。
「今どの辺にいる?もうアパートに着きそうか?」
「あっ…まだ…今ズルをしてバスで帰ろうかと…バス停まえです」
「その辺で待ってろ。迎えに行く」
えっ?と聞き返したが電話は切れてしまい、確かめようがない。
私はバス停でじっと待つことにした。
5分ほどすると見慣れた車がバス停前を通過した。
車は少し離れたところで止まった。
小走りに近づくと窓が開く。
中にはずっと会いたかった貴方がいた。
「乗れ。飯食わせてやる」
何度も座った事のあるシートに体をあずけるが、リラックスよりも緊張が先行して落ち着かない。
「何処に行くんですか?」
「ん?俺のとこだ。パスタ食わせてやる」
「えっ!悪いです、せっかくの週末にお邪魔するなんて」
「…」
沈黙が怖い。
「せっかくの週末だからお前と飯が食いたいと思った…は迷惑だったか?」
「迷惑だなんてそんなこと全然ありませんですよ」
「なら素直に奢られておけ」
貴方の長い腕が伸びて、私の頭を軽く小突く。
こんな時他の人達は可愛らしく甘えて見せるのだろう。
でも自分には無理だ。
私は小さく「はい…」と答えるので精一杯だった。
貴方は言葉を選ぶように考えながら、言葉を続ける。
「甘えろ」
「へっ?」
「なんだ…お前はもっと甘えろ。迷惑じゃねぇし…むしろその方が…俺は…嬉しい。…なんだ…お前は彼女なんだから」
耳まで真っ赤になった貴方を見ている私も、負けないくらい真っ赤になったのでした。
週末のルーティン。
何もなかったけど、今日からは何か始まるのかもしれない。