ドーン

ドーン

仕事帰り、花火の上がる音が聞こえている。

胸がきゅっと傷んだ。

あの日貴方と見た花火を、私は今も忘れてはいない。

人混み中で『はぐれるから』と手を強く握られたこと。

見上げた貴方は、耳まで真っ赤にしていたこと。

『上がるよ』と空を指差す貴方の横顔を、私はそっと見つめていたこと。

火薬のニオイが立ち込める中で余韻に浸る私に、初めてキスをしてくれたこと。

お別れの時に『今日は帰りたくないね』と言い合って、お互い笑ったこと。

今年は誰と見てるのだろう。

きっと私が知らない誰かが隣にいるね。

「なーんてね。感傷に浸るなんてらしくないことしちゃってる。」

私は自転車を漕ぐスピードを上げた。

今年は誰と見に行こう。

浴衣を着て行こうかな。

そこにロマンスがないとしても、新しい一歩を踏み出してみよう。










※2017年にアップしたSSの再録です。
先日アクセス解析を眺めていたらこのタイトルがあったので懐かしくなりました。
登場貼り付けたYouTubeが見れなくなっていましたが、たぶんこの曲だったんじゃないかと思うのです。