縁側で一人夕涼みをしていた。
少しの冷たさを含んだ秋の風が吹く。
軒下の風鈴がチリンと鳴った。
ふと人の気配を感じて振り向いた。
でも誰もいない。
いるはずがない。
この家には私一人。
あの人は戦に行ってしまってそれっきり。
もうわかってるはずなのに…まだ諦められない自分がいる。
陽がすっかり落ちた後もぼんやりしていた。
「晩ごはん…食べなきゃ」
一人での食事はもはや義務のようだった。
台所へと向かおうと立ち上がろうとしたその時、強い風が吹いた。
風鈴は千切れんばかりに風に吹かれ、騒がしく音を立てている。
(あっ…風鈴の紐が千切れちゃう)
風鈴を抑えようと手を伸ばすが届かない。
ふっと背後に気配を感じた。
誰かが風鈴に触れた。
「誰?」
振り向くと信じられない光景があった。
「…ただいま」
ボロボロの軍服を着た貴方がいた。
「うそ…」
「嘘じゃない」
ポロポロと涙が溢れ、前がよく見えない。
「帰りが遅くなってすまん。まだ待っていてくれていただろうか…自信がなかったが一番に立ち寄った」
「もぅ…遅すぎです」
「すまん…」
「もぅ…」
謝ってばかりの貴方は苦笑いをするばかりで
「おかえりなさい」
泣いてばかりの私は、そんな貴方の胸へ飛び込んだ。