ガレージで車の洗浄をする傍ら、那岐子はホースを振り回し、乾いたアスファルトに水を撒いていた。


「ねぇ朗!見て見て!虹発生!」


はしゃぐ那岐子の側に小さな虹が見えた。


「那岐子…水が勿体ねえ。早くホース貸せ」


「ちゃんと見てくれた?虹よ!」


「はいはい見た見た」


「嘘ばっかり。見てないし」


不服そうな顔をしながら那岐子がホースを持って近寄ってきた。


「あっ…」


曲がりくねった長いホースが那岐子の足を捉えた。


「危ない!」


慌てて倒れそうになる那岐子を抱き止める。


ふと感じる汗の匂いにくらくらした。


「朗…ごめん」


「ったく…気をつけろ」


俺は露わになっている焼けたうなじに顔を埋めた。


「あっ…朗、私汗かいてて臭いのよ」


「構わねぇ…全部お前だ。受け止める」


那岐子は少し身動ぎをした後、諦めたのか俺の背中に腕をまわした。


「ん…」


少し早い秋の風が吹いていたあの日の夕方。


もう戻ることは無い…幸せだった瞬間。












松任谷由美さんの『夕涼み』でSS書いたことなかったかなーと探したけど見つからず。

『残暑』の方だったかなぁ。