俺、原田左之助はショーウィンドウに映る自分の姿を見ていた。
「ははっ…ずいぶんサッパリとしたな」
伸ばしていた髪をバッサリと切った。
雛にしつこくしつこく「暑いからおにぃも髪切ろうよ」と言われたせいもある。
俺が髪を伸ばしていたのは、願掛けをしていたからだ。
『雛に大切な人が見つかるように』
それが叶ったのかはまだわからない。
だが土方さんに会ってからの雛の微妙な変化にかけてみたくなった。
数日前の事だ。
「土方さんよぉ、一つ聞いてもいいか?」
稽古が終わった後、俺は周りに人が居ないことを確認してから土方さんに声をかけた。
「なんだ?」
「あのよぉ…雛のことどう思う?」
「ハムスターみたいで面白い」
戸惑う事なく言い切るその台詞に、俺は酷く脱力感を感じた。
「左之助、お前はあの子と俺が本格的に付き合えば良いと思っているんだろ?」
「まぁ…な…。ほっとくとあいつは直ぐカスみたいな野郎の事好きになるからな」
「重度のシスコンだな」
「よく言われる」
土方さんは呆れ顔で言葉を続ける。
「仮にそうなったとしても、総司が猛反対するだろう」
「だと思う…だがな」
「なんだ?」
土方さんは相変わらず無愛想な顔をしている。
「いや…なんでもねぇ」
土方さんもあいつと一緒にいる時だけは良い顔してるぜ
そんな言葉を飲み込んで、俺はシャワー室へと向かった。
「おにぃ!男前度超絶アップ!やっぱり髪切って正解だよ」
ソファーで寛ぐ俺に戯れる雛は、確かにハムスターそっくりだ。
「だなー。髪洗う時間短縮もありーので悪くねぇ」
笑いを噛み殺しながら答えると、雛は不服そうな顔を俺に向けた。
「…おにぃ、なんかやらしいこと考えてる」
「なんだよ、やらしいことって。お前相手に何考えろってんだ?」
「綺麗なお姉ちゃん達ひっかけ放題とか」
「んなことするか!」
頭をげんこつでグリグリと小突くと、雛は「やめてー」と言いながらはしゃぐ。
年の離れた兄である俺は、雛の親代わりみたいなもんだった。
だからこいつの幸せを見届けたい。
こいつの胸に小さくついたつぼみが花開くようにと、俺はただただ祈るだけだ。