今日は夏祭りだ。
私は誂えた浴衣に袖を通した。
練習した通りに着付けていく。
帯を締め、全身鏡の前でくるりと一周してみる。
(おかしく…ないよね)
不安と喜びが入れ混じった、複雑な気持ちで胸がいっぱいになる。
濃紺の巾着袋を手に取り、もう一度鏡を見た。
(覚えてるかな…)
この巾着袋は初めて彼からもらったものだ。
紺地に薄紅色の花びらが散りばめてある。
『お前が喜ぶもんなんてわからねぇけど…アンティークショップでそれ見つけてよ…似合うと思ったんだ、桜の花が』
ぶっきらぼうに呟く貴方の姿を思い出し、笑みが溢れる。
「覚えてないよね。この巾着袋を貰ったのはニ回目だなんて。だって初めて貰ったのは…」
気が遠くなるくらいの過去。
貴方の背中を必死に追いかけていたあの頃。
「土産だ…いつも良くやってくれているからな。それなら持ってても目立たねぇだろ」
「良いのですか?」
「良いから買ってきた」
今と変わらずぶっきらぼうだった貴方から貰った、本当に大切なものだった。
ドアのチャイムが鳴った。
慌ててドアを開けると、浴衣姿の貴方がいた。
「支度出来たか?」
「うん、行こう」
私は貴方の少し後ろを歩く。
「…ほら」
「?」
「手…繋いでないとはぐれるだろ」
「うん」
私は貴方の手を取り、隣に並んだ。
「えへへ」
「なんだよ?」
「ん…幸せだなって思って」
「…まぁな」
貴方がいるから幸せ。
貴方といるから…今も幸せ。